宝氷
フルーツ宝箱販売初日。
フルーツ氷の追加分として、ユリは製氷トレー1枚に付き1色を、6色分作っていた。トレーは96粒出来るので、昨日使い込んだ分を計算すると、50粒くらい不足すると考えたのだ。そして、今日の予定は、アイスクリーマー30回稼働だ。
分解洗浄してある部品を消毒しながら組み立て、アイスクリーマーもすぐに使えるようにセットした。
「これで良いわね」
パウンドケーキも仕込んだので、少し早めに2階に戻った。
「ユリ、おはようにゃ」
「おはよう、ユメちゃん。ずいぶん早いわね」
「アイスクリーム楽しみなのにゃ」
「みんなが揃ったら、まず食べてみましょうね」
ユメは、嬉しそうにニコニコしていた。
「ユリ、アイスの機械って、手で回す大きいの無かったにゃ?」
「有るわよ。手動のアイス箱ね。試作品タイプで、1回に、21~22個出来るわ」
「もう、使わないのにゃ?」
「作るものによっては、今後も使うわよ」
ユリが朝食を作りながらユメと話していると、キボウがどこからか帰ってきた。
「キボー、きたー」
「おはよう、キボウ君。どこに行っていたの?」
「はたけー」
「あ、いつも面倒みてくれて、ありがとうね」
「よかったねー」
珍しくソウが遅く起きてきた。
「もう朝ご飯の時間か。おはよう」
「ソウ、おはよう。昨日遅くまで起きていたの?」
「いや、考え事をしていたら、寝そびれた」
「ボトルコーヒーしかないけど、アイスコーヒー飲む?」
「ありがとう」
ユリはソウに、無糖のアイスコーヒーをだした。
「なーにー?」
「アイスコーヒーよ。そのまま飲むと少し苦いけど、飲んでみたいなら、シロップとミルクを入れると良いわ」
アイスカフェオレの牛乳割りを更に牛乳で割ったような、ほぼ白い状態に、たっぷりのシロップを入れてキボウに渡した。
「それ、ほとんど牛乳にゃ」
「1/8くらいかしらね。ユメちゃんも飲む?」
「半分くらいのをお願いするにゃ」
ユメにはアイスカフェオレとシロップを渡した。
「おいしー!おいしー!」
「ユリ、お店でコーヒーは出さないのにゃ?」
「私が飲めないから、コーヒーの美味しいがわからないのよね。だから、インスタントか、ボトルコーヒーなのよ」
「私も、コーヒーは、ほとんど飲まないにゃ。でも、コーヒーゼリーが食べたいにゃ」
「コーヒーゼリー良いわね! 今度作っておくわ!」
間違って買ってきた、加糖タイプのボトルコーヒーをゼリーにしようと、ユリは考えていた。甘すぎてソウが飲まないのだ。しかし、ユメとキボウのために封を切ってしまうと、大量に残ってしまう。
「ユリ、片付けはやっておくにゃ」
「ありがとう。仕事に戻るわね」
洗い物をユメに任せ、ユリは一人先に厨房に戻ってきた。セットしたタイマーがもうすぐ鳴ると言うとき、訪問者が来た。
「おはようございまーす! 魔動力機器コニファーでーす!」
ユリが対応しようとすると、ソウが駆けつけてきた。
「あ、ユリ、俺が見てくるよ」
「ありがとう」
そろそろオーブンを見る時間だったので、助かるわぁと、ソウに任せた。オーブンのタイマーが鳴り、パウンドケーキを取り出すと、声をかけられた。
「ユリ、真冬箱の貸し出し、何個要るの?」
「持ち運べる大きさの、割りと大きめを最低でも4つ、借りるか買いたいんだけど」
「大きめの貸し出し用は、6つ確保してあるって、どうする?」
「6つお願いします」.
「手伝いは何時から来れば良いかって聞いてる」
「朝から手伝ってお昼ごはんから食べるなら、9時以降11時迄に来て、販売だけ手伝って夕飯を食べるなら、12時半までに来てください」
話を付けてきたソウは、戻ってくると報告してくれた。
人は9時から来る予定で、魔動力機器コニファーと、トロピカル魔動力機器から2人ずつ出してくれるらしい。ありがたいことだ。
ユリはクッキー類を仕込み、ユメとキボウが手伝い、クロネコクッキーと、時送り・世界樹様のクッキーも仕上げた。ソウはパウンドケーキの納品に行き、さっさと帰ってくる予定らしい。
リラとマリーゴールドが、マヨネーズを作りにやってきた。
8時45分頃、魔動力機器コニファーと、トロピカル魔動力機器の4人がやってきた。荷馬車に真冬箱を積んで来てくれたようだ。
ユリが対応し、持参してくれた真冬箱の全てを、ささっと充填した。
せいぜい明日までしか使わないのに、ユリは6台ともフル充填してしまい、過剰魔力分のお支払を致します!と、魔動力機器コニファーの2人が慌てていた。貸し出し用は、遠出用の真冬箱らしく、そのまま2週間ほど使えるそうだ。一応ユリは、以前キボウに貰った木の実を食べて魔力不足を補ったが、そもそも最大値が30万p有るため、特に不足もしていなかった。
とりあえず、お店の椅子に座って貰い、メリッサやイポミアが来るのを待つことにした。
メリッサが、倉庫側から出勤してきた。学習したらしい。次に来たのはイリスだった。やはり倉庫側から来た。そのつぎに来たのはシィスルだ。やはり倉庫側の入口から入ってきた。更にそのあとに来たのはイポミアだった。店の入口から来て、今日も驚いていた。休みを挟んだら、すっかり忘れたらしい。
「大方揃ったので、説明を始めます」
ソウとマーレイがいないが、販売対応をしないため、あとで説明すれば良いと考えたのだ。ユメとキボウも話を聞きに来ている。
「午前中にするのは、フルーツ宝箱の仕込みと仕上げと袋詰めです。仕上げは、原色セットに深煎りきな粉、間色セットに浅煎りきな粉を振りかけます」
「はい!ユリ様!」
イポミアが手を上げた。
「イポミアさん、どうぞ」
「原色セットと間色セットとはなんですか?」
「原色セットは、赤、黄、青の3色で、間色セットは、紫、緑、橙の3色です。具体的なフルーツは、原色セットが、赤イチゴ、黄マンゴー、青白桃(青染)で、間色セットは、紫ブルーベリー、緑キウイフルーツ、橙ミカンです」
全員がメモをしていた。
「仕上げが終わったものは、3種類をセットにして袋詰めし、お借りした真冬箱に入れ、外販売担当者に運びます。真冬箱に入らない分は、厨房で預かります」
真冬箱1箱に、60組(180個分)入るので、外販売予定数1200個は、ほとんど入り、厨房で預かるのは40組分だ。
「ユリ、試食はしないのにゃ?」
「そうね。食べてみましょう」




