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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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母日

5月の第2日曜日、今日は、母の日。


ユリの実母は亡くなっていて居ないので、ユリが母のように思っている相手を敬うことにしている。これまでは、星見夫妻に母の日、父の日に何か持っていったり送ったりしていたが、今年は、月見夫妻と、国王夫妻、パープル侯爵夫妻と、マーレイ&イリス夫妻と、寿夫妻にも、ケーキを持っていこうと予定していた。


早朝から掃除を終わらせ、5号サイズのカーネーション型のケーキを7つ作り、出掛けることにした。


近いところから回りましょう。


◇ーーーーー◇

冷蔵庫の中にあるケーキとほぼ同じものを持って、 

母の日に回ってきます。

お昼ご飯に戻ってきます。

                  ユリ

◇ーーーーー◇


同じケーキを一人分づつにカットし、テーブルにメモも残したので、王国内を回ることにした。


ちなみに、ソウは出掛けていて、ユメとキボウはいつも通り、世界樹の森と、城に行っている。


マーレイの家を訪ね、イリスにケーキを渡した。


「今日は、私が元いた国では、母の日と言って、母に感謝する日なのです。母の如くお世話になっている方に差し上げています」

「私がいただいてよろしいのですか?」

「いつもお世話になっているからね。いつもありがとうございます」


特に質問などはされなかったので、次はパープル邸に転移した。


「ようこそいらっしゃいませ、ユリ様。奥さまを呼んで参ります」

「あ、お願いしまーす」


すぐに来たローズマリーは、ケーキを見ると色々質問してきた。


「上の飾りのようなものは、どうなっているのですか?」

「これは、イチゴ味のチョコレートで、薄く伸ばしたものを、パレットナイフで、フリルになるように削り、たくさん作り、重ねて飾ってあります。これは、カーネーションケーキと言います」

「素晴らしいですわね。ユリ様、どうもありがとうございます」

「喜んで貰えて良かったです」


次に王宮に転移した。


チリンチリン。

ハンドベルを振ると、すぐにメイドがやって来た。


「今日は、ハイドランジアさんに用があるんだけど、連れていって貰える?」

「ユリ様が、出向かれるのでございますか?」

「そちらの都合で構わないわ。忙しいなら、出直すわよ?」

「いえ、少しだけお待ちくださいませ」


ドアの側のメイドがゆっくり退室し、恐らく廊下を走っていったようで足音が聞こえた。それから1分くらいすると、案内をしてくれるらしく、ユリの前に来た。


「ご案内いたします」


部屋に案内して貰うと、部屋の前でハイドランジアは待ち構えていた。


「ハイドランジアさん。ケーキを持ってきたので、貰ってください」

「ありがとうございます。ご用の向きは、ケーキだけでございますか?」

「あ、そうか。私が元いた国の5月の第2日曜日、この国では、Sの日(おひさまのひ)は、母の日と言うイベントの日でして、私の実母は亡くなっていますので、母のようにお世話になっている方に、お菓子を差し上げています」

「そのような素晴らしい日に、(わたくし)がお菓子をいただいてよろしいのですか!?」

「はい。たくさんお世話になっていますので、心ばかりですが、受け取って貰えると嬉しいです」

「ありがとうございます。味わっていただきたく思います」

「受け取って貰えて良かったです。それでは」


ユリは、スタスタと進み、帰る方向が違うと、メイドに止められた。

ソウの部屋に連れていって貰い、案内を頼んだメイドたちには、お礼のお菓子を渡し、自宅に戻ってきた。


「ただいまー」

「ユリ、道に迷わなかったにゃ?」

「ユリ、一人で大丈夫だったのか?」

「おかえりー、おかえりー」


「ちょっと、ユメちゃんも、ソウも、転移で移動しているんだから、迷うわけ無いじゃない。まあ、王宮内で帰るとき、反対方向に行きそうにはなったけど」


やっぱりだと、ユメとソウには笑われた。


さっと昼食を済ませ、午後はソウを連れて元の国へ行くと説明すると、ユメはどこかに出掛けると言っていた。


ユリは移動をソウに任せ、星見家を訪問した。


お義母(おかあ)様、今日は母の日なので、カーネーションケーキをお持ちしました」

「百合ちゃん、どうもありがとう!」

「お袋、これ」


ソウはカーネーションの花束を差し出して、なぜか夫妻から笑われていた。


「ゆっくりしていって欲しいけど、月見家にも行くのでしょう?」

「はい。この後伺う予定です」

「なら、明るいうちに行った方が良いわね」

「ん、まあ、そういうことだから、長居しないで行くよ」

「また来てねー」「また来るんだぞー」


星見夫妻に見送られ、ソウが転移した。

月見家だ。なぜか、玄関ではなく、中庭に転移してきた。


「お兄様、お待ちしておりました」

「あ、うん」

「お父様と母上様はこちらです」

「おぉ」


カエンが案内してくれたけど、なんだかソウが、少し変な気がする。ユリは不思議に思ったが、初めて一緒の母の日なので、照れ臭いのかな?と考えていた。


部屋に通されると、月見夫妻はニコニコしながら待っていた。


お義母(おかあ)様、今日は母の日なので、カーネーションケーキをお持ちしました」

「まあ、百合さん、どうもありがとう! 中を見ても良いかしら?」

「はい」

「うわー! 素敵だわ! お花のケーキなのね」


「えーと、か、」

「か?」

「か、かあさん、これ」


ソウは、ぶっきらぼうにカーネーションの花束を渡していた。

なぜか、月見夫妻もソウを笑っていて、ユリは少し不思議に思った。


ユリは予定を話していなかったのに、ソウは、この後は予定があると言い、月見家を早々に後にした。


「ソウ、何か予定があるの? 私、寿さんのところにも行きたいんだけど」

「いや、予定はないよ。寿さんのところに行こうか」


ソウが転移してくれ、寿夫妻がいる施設に来た。


菊花(きっか)さん、母の日なので、カーネーションケーキを作りました。良かったら貰ってください」

「まあ、百合ちゃん、私が貰って良いの? ありがとう」

「カーネーションケーキか。お、うまく作ったな!」


夫妻はとても喜んでくれた。


「お墓参りはもうしたの?」

「これから行ってきます」

「そう、なら気を付けていってきてね」

「はい。いつもありがとうございます。あ、そうだ。製菓衛生師の試験、受けることにしました。教材や、便宜を図ってくださり、ありがとうございます!」

「おお、そうか。頑張るんだぞ」

「はい。では、また来ますね」

「待ってるからね」

「はい」


談話室を後にし、人のいない場所から、ソウの家に転移した。


「ユリ、お墓参りはすぐに行く?」

「お花屋さんに、白いカーネーションを買いに行きたいわ」

「白いカーネーション、買ってあるよ」


墓の側にソウが転移してくれた。

花野家の墓は樹木葬にしたので墓石はないが、そこにはたくさんの花があった。

両親が寂しくないことが、ユリは嬉しかった。

少し枯れた花を片付け、白いカーネーションを供えると、後ろから声をかけられた。


「もしかして、ユリちゃんかい?」


見覚えのある、元常連のお客さんだった。


「お久しぶりです!」

「そちらの方は、外務省勤務って言う、旦那さんかい? 旦那さんについて外国に行ったって聞いたときは驚いたけど、幸せそうで良かった」


ソウビがそう話したのだろう。辻褄があっているので、特に訂正はしなかった。


「ご心配をお掛けしました。とっても幸せです。両親のお墓まで心配してくださって、ありがとうございます」


少しの立ち話をして、元常連のお客さんは、帰っていった。


「ユリが幸せで良かった」

「とっても幸せです」


二人で仲良く家に帰った。



後日、


「イベントは、実行する前に教えてくださいませ!」

「イベントは、実行する前に教えてください!」


ラベンダーとリラに怒られた。

ソウの態度の謎は、クロネコのユメの方に書いてあります。

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