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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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杜若

アルストロメリア会の無い土曜日(だいちのひ)


今日は、リラをつれて花を見に行く予定だ。出発は10時頃と伝えてあるので、ユメとキボウは先に城に行ってくると言って、キボウが作ったらしいズコットを持って、朝ご飯の後に出掛けていった。



昨日、キボウが1つ用の箱が欲しいと言うのでケーキを見せて貰うと、苺の形を模したらしい三角錐だったので、クッキーを星形に焼いて、抹茶味のチョコレートでコーティングし、ケーキの下に置いて渡すと、苺の葉っぱになったと喜んでいた。


「ユリ、結局、誰が来るの?」

「リラちゃんと、イリスさんね。メリッサさんは子供がいるから無理で、イポミアさんは先約があるらしいわ」

「そうか。なら、プランを変更するかな」


時期の花を見に行くので、急に行き先を変更して大丈夫なのだろうかとユリは心配したが、行かなかった場所は、来週にでも行けば良いとソウは言っていた。ここまでが昨晩の話だ。



お弁当を作り終えたユリが、ソウに確認する。


「結局、何処へ行くの? 私は先に場所を覚えた方が良いわよね?」

「ユリは、リラとイリスを連れていける?」

「その予定よ」


ユメとキボウが戻ってくる前にと、ソウの部屋から本日予定の植物園らしき前に転移した。


「ここに来る予定」

「取り敢えず、花は見えないのね。うん、覚えたわ」


二人で家に戻ってくると、ユメとキボウも戻ってきていた。


「ユリ、場所の確認に行っていたのにゃ?」

「ユメちゃん、おかえりなさい。場所の確認に行ってきたわ」

「ただいまにゃ。今日は、何を見に行くのにゃ?」

「それがね、今行ってきたけど、特に花は見えなかったのよね」


2人でソウを見ると、視線を感じたらしいソウが慌てていた。


「花自体は見てのお楽しみ。だけど予定としては、午前中に植物園、そこでお昼ごはん。午後からは、香水加工用の花畑、花と香水工房の見学の予定だよ」

「当初の予定だったところは?」

「行き先が変わるけど、同じだよ。花の種類が変わるだけ」


ソウが花の名前を全く言う気がないようなので、ユリとユメは諦めた。もう少しすれば現地に行くので、実際に見れば良いのだ。


キボウが一人だけ、ニコニコとしていた。


「キボウ君、ケーキ喜んで貰えた?」

「かみさまー、よろこぶー。キボー、すごいー。カンパニュラー、よろこぶー。つくるーいったー」


キボウは、自信たっぷりに語っていた。


「んー、世界樹様が喜んで、キボウ君を誉めてくれて、カンパニュラちゃんは喜んだけど、作ってみたいと言ったのかしら?」

「あたりー!」


「お、ユリ凄いな」

「今回のは、わかりやすかったわ」

「来週、パープルのところで作ると思うと伝えておいたにゃ」

「ユメちゃん、ありがとう」


ローズマリーからの依頼を把握していたユメが、伝えてくれたらしい。相談に来ていた執事から聞いていたそうだ。

そして、なぜローズマリーが知り得たのかを、ユメが教えてくれた。


「執事によるとにゃ、ここに来た料理人が、屋敷に戻って自慢したらしいにゃ。それがローズマリーの耳まで届いてにゃ、直接尋ねたらしいにゃ」

「そうだったのね。ユメちゃんありがとう」


不思議だったことが判明し、ユリは納得した。


「そろそろ出掛けるか。リラも来てるんじゃないか?」

「あ、そうね。外に出ていましょうか」


ユリたちが外に出ると、リラとイリスは既に待っていた。


「いつから来てたの?」

「少し前です。お母さんと、久しぶりに話し込んでいました」

「ユリ様、お声がけくださり、ありがとうございます」

「気軽な感じで参加してくださいね」


リラは、大きな袋を持っていた。スケッチブックと簡単な画材が入っているらしい。イリスも包みを持っていた。中身はリラから渡されたお弁当だそうだ。


二人とも少しおしゃれなワンピース姿で、イリスのおしゃれな服を見るのはこれが2度目だ。1度目は、お正月の挨拶に来た時だ。


「ユリ、先に行く?」

「そうするわ。リラちゃん、イリスさん、私につかまって」

「はい」「はい」


二人は両側からユリの手につかまり、ユリは転移した。リラは平気そうだが、イリスは少しクラっとしたらしい。


「イリスさん、大丈夫?」

「はい。もう大丈夫でございます。失礼致しました」

「転移酔いは、慣れないと起こるらしいから、無理しないでね」

「はい。ありがとうございます」


すぐに、ソウも転移してきた。


「本当に、花が見えないにゃ」

「みずー」

「キボウ、水の匂いでもするのか?」

「あたりー」


「池でも有るの?」

「有るのは湿地だな」

「あ!わかったわ。お花、楽しみね」


ユリは、この先にある花がわかった。チラッとイリスを振り返り、ニコニコとした。


「さあ、中に入りましょう」


植物園の門を潜り、川に沿って、湿地帯を目指した。

先に大きな池が目に入り、続いて、鮮やかな青や、青紫の花が目に飛び込んできた。


「うわー凄い!」

「凄いにゃ。ショウブにゃ?」

「これは、杜若(かきつばた)かしら。花菖蒲(はなしょうぶ)は、んー、たぶんあれね」


ユリは、少し遠くを指差した。


「そばで見なくてもわかるのにゃ?」

「簡単な見分けは、完全な湿地が杜若で、半湿地が花菖蒲で、乾燥地が文目(あやめ)よ」

「にゃ? そうなのにゃ?」


ユメと話していると、リラが声をかけてきた。


「ユリ様、少し伺ってもよろしいですか?」

「ん?どうしたの?」

「ユメちゃんとのお話が、全て同じ花の名前のように思うのですが、」

「あー! 翻訳されちゃうのね。私の居た国の言葉で、完全な湿地が『カ、キ、ツ、バ、タ』で、半湿地が『ハ、ナ、ショ、ウ、ブ』で、乾燥地が『ア、ヤ、メ』よ。だけど恐らく、全て『アイリス』と翻訳されるのかしらね」

「ありがとうございます。区別がつきました。これって、お母さんですか?」

「そうよ。イリスさんの名前の花ね」

「え!そうなのですか!?」


イリスが驚いて聞き返してきた。


「今日のメンバーにイリスさんが居るからって、ソウが行き先を変更したのよ」

「ホシミ様、ありがとうございます!!」


イリスは、感激で泣きそうだった。


「良かったな。アヤメはもう少し後だから、今日は見られないかもしれないけど、また行けば良いしな」

「では、あそこに有る東屋風の建物に12時集合で、基本自由時間にします」


すると、ユメもキボウも、リラとイリスについていった。

ユリとソウは顔を見合わせ、気を遣って二人きりにしてくれたのかなと、2人で見てまわることにした。


木製の橋桁のような遊歩道を渡り、橋の下の水の中から咲き誇るカキツバタを見てまわった。青や青紫にも色々と色合いがあって、凛とした花が美しい。白っぽい花や、真っ白い花もあった。


次に、半湿地の花菖蒲を見ようと、移動した。

花菖蒲は、黄色い花もあり、水面こそ見えないが、沼地のような水分の多い場所に生えている。

未だ蕾な株や、全く花のついていない株もあった。時期的に少し早いようだ。


最後に、完全に畑に見える場所に来た。ここには、文目が植わっているらしい。見事に葉っぱしかない。


「花、無いわね」

「ちょっと早かったかもな」


2人で残念に思いながら見て回っていると、1株だけ咲いている文目があった。とても大きく美しい花だった。

菖蒲と書き、アヤメと読む場合もありますが、わかりにくいので、菖蒲=しょうぶ 文目=あやめ 杜若=かきつばた と限定して書いております。

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