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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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テーブルに冷茶が出ているので、こちらで作らなければならない飲み物の注文はすぐには来ないが、軽食の注文は入る。しかし今日も(ちまき)がサービスで出ているので、軽食の注文もすぐには入らなかった。


「さあ、フルーツ宝箱を仕込みましよう」

「何度か食べているんですが、最初から最後まで作ったことはないです」

「あー、そうかもしれないわね」


シィスルとマリーゴールドは帰り、厨房ではソウとマーレイが、アイスクリームを作るためにスタンバイしていた。

ユリが、フルーツ氷を色の薄いものから作り始める。まずは、黄色からだ。


「アングレーズソースは作らなくて良いのですか?」


何度目かの分の材料を量りながら、リラが質問してきた。


「ソウが持ってきた機械ね、殺菌・加熱も含めて全部自動なのよ」

「そ、それは凄いですね。私も動かしてみても良いですか?」

「材料を揃えたら、動かしてみて良いわよ」


ユリが書き直した材料表を参考に、リラが急いで計量していった。


ユリが、各スイッチ等を丁寧に教えると、ウキウキとしながらリラが起動させる。


「うわ、これだけで良いんですか!? これだけで出来上がるんですか?」

「出来上がったらタイマーが鳴るわ」


リラは機械をチラチラみながら、ユリの手伝いに来た。

製氷皿にカットしてある果物を入れ、糖度の薄いシロップを加え、冷凍する。今回もキボウが手伝ってくれるらしく、真冬箱の前で待っていた。


今日のアイスクリーム分は、既に昨日作ったフルーツ氷で足りるので、今作っているフルーツ氷は2日目の分になる。


ソウとマーレイは、冷蔵のココットにフルーツ氷を入れ、冷凍庫にそのココットを移していた。


軽快な音楽が鳴る。


「アイスクリーム出来たわよ。大きいボールを持っていらっしゃい」

「はい!」


リラが、用意してあった大きめのボールを持って、アイスクリーマーの前に来た。


「このレバーを倒すと中身が出てくるから、まずはボールに入れて、それをココットに皆で分けましょう」

「はい!」


リラがレバーを倒した。


「うわ! 思ってたより一度に大量に出てくるんですね!」


ボールに入れたアイスクリームを皆で、フルーツ氷が入ったココットに入れていく。溶けてしまわぬように時間との勝負なので、大慌てだ。ユリは次の材料をアイスクリーマーに投入してからココットの詰め込みに参加した。


「たべるー?」


キボウがリラに話しかけていた。

ユリからキボウの手元が見えないので、何を奨めているのかわからなかったが、キボウを見たリラが少し驚いてから、御礼を言っていた。


「キボウ君ありがとうございます!」


どうやらキボウは、時送り・世界樹様のクッキーをリラに渡したらしい。ユメと同じように、おやつで食べたり、何かあった時に配ることができるようにと持たせている分だ。


急いでクッキーを食べたリラは、3倍速くらいでアイスクリームをココットに詰め込んでいた。

ユリは、ソウとマーレイにも食べるか聞いてみたが、違う作業をしたら集中が続かないから要らないと断られた。時送り・世界樹様のクッキーは、集中が続く限り効果があるのだ。今日は18回仕込む予定なので、 リラはどうなるのだろうと見ていると、集中が切れることなく、早送り状態で動いていた。途中、注文品を仕上げても、リラは集中力が途切れることなく、動き続けている。


4回目のアイスクリームを作り終わった時、ユリがリラを止めた。


「リラちゃん、あなたは少し休みなさい」

「え?」

「休憩室で、目を閉じて15分で良いから休んで来てちょうだい」

「私、何か失敗してしまいましたか?」

「失敗せず、完璧に動き続けているから言っているのよ。疲れが蓄積されて、明日に響いてしまうわ。若さと体力を過信したらダメよ」


先程まで少し心配そうな顔をしていたマーレイが、穏やかな表情でこちらを見ていた。


「わかりました。少し休憩してきます」


リラが抜けると作業効率が落ちたが、皆の緊張もほぐれた。やはり、まわりも早い動きにつられるのだ。


「リラはいないのにゃ?」

「あら、ユメちゃん。リラちゃんにご用?」

「用はないけどにゃ。何かさっき不思議だったにゃ」

「キボウ君からクッキーを貰ってね」

「やっぱりなのにゃ」

「少し休ませたわ」

「わかったにゃ」


先ほどの様子を見かけたユメは、心配していたらしい。ユリからの説明を受けると、安堵した表情をして戻っていった。

そしてすぐに戻ってきた。


「忘れてたにゃ。ピザトーストユメスペシャル3つ頼むにゃ」


ユメは、ピザトースト用の皿などを出してから店に戻っていった。その間、マーレイが組んであるピザトーストを釜に入れておいてくれた。ユリは黒猫型の海苔を出し、焼き上がってからユメを呼んだ。


「ピザトーストユメスペシャル、あがりましたー」


すぐにユメが取りに来て、黒猫型の海苔をのせ、店に持っていった。


「休憩ありがとうございまーす」


ぴったり15分で、リラは戻ってきた。


「ちゃんと休んだ?」

「はい。目を閉じて、長椅子に寝転んで、気がつくと寝ていたみたいで、時計を見たら丁度良い時間だったので、戻ってきました」

「ちゃんと休めたなら良かったわ。明日暇なら花を見に行くわよ。良かったら一緒に来る?」

「はい! お願いします!」


マーレイも誘ったが、グランに何か教える約束をしているらしく、辞退された。イリスは暇のようなので、声をかけて欲しいとお願いされた。



そろそろ閉店の時間に、マーレイから報告を受けた。


(ちまき)の予約券は、全て回収できたようでございます。外販売の方は、まだ30組ほど残っているようで、何か指示があったらと、尋ねられました」

「残りそうなら構わないわ。足りないなら慌てるけど、私の鞄に入れるから、残ったら持ってきてください」

「かしこまりました」


アイスクリームも予定通り、18回仕込み、昨日の仕込と合わせて30回、約1800個出来上がった。フルーツ氷は、今日作った分を少しだけ使った。


夕食も作り終わり、店内用の粽は予定通りの売れ行きだったらしく、残りは1つだけだった。最後の客が帰ったあと、店内に夕食を並べ、最終報告を聞いた。


「持ち帰りセットは、残り10組でございます」

「え? 5分くらいで20組売れたの?」

「はい。乗り合い馬車の最終便に間に合わず、走って来たと言う人が何人か居たのと、使用人連れの馬車で乗り付けた、貴族の使いと言う人に、10組販売いたしました」

「それは、ご苦労様でした。もめる人はいませんでしたか?」

「特に問題はございませんでした」


ユリは全員に粽セットを配り、フルーツ氷を入れていない黒糖アイスクリームも配った。これは、黒蜜を線がけにしてある。


「フルーツ宝箱は休み明けに販売しますが、こちらは黒糖アイスクリームです」

「フルーツ宝箱とは、何処が違うんですか?」


メリッサからの質問だった。


「これは、黒糖アイスクリームに黒蜜をかけただけですが、フルーツ宝箱は、フルーツの入った小さな氷が入っていて、上にはきな粉がかかったアイスクリームです。フルーツの種類が6種類あるので、食べるまで何が入っているかわからないと言うアイスクリームです」

「ありがとうございます。とても楽しみです」


アイスクリームを食べたココナツ食器店の店員が、懐かしそうに呟いた。


「カーナ・デ・アスーカル」


「え? 何ですか?」

「ユリ、サトウキビって意味にゃ」


何とユリの疑問に、ユメが答えた。


「ユメちゃん凄いわね!」

「リラに教わったにゃ」

「そうなの? リラちゃん凄いわね」


リラは、各地をまわっていた頃に、サトウキビを育てている現地で聞いたそうだ。


アイスクリームも食べ終わり、お疲れさまと解散した。

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