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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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無水

「小さい袋、有りました!」


リラが小さめのジッパーバッグの入った箱を見つけ、戻ってきた。どうやら段ボール箱が前後に有り、奥側の箱に小さいサイズの在庫は入っていたらしい。ユリも高い場所は自分で取らないので知らなかったのだ。


リラが手伝い、マリーゴールドは、ユリが指定した数のきな粉を袋詰めしてくれた。今日の予定は300セットだ。(ちまき)の数としては店売り分として1050個になる。


「ただいまにゃー」

「ただいま、ただいまー」

「ユメちゃん、キボウ君、お帰りなさい」


ユメとキボウは2階から戻ってきた。


「今日も人いっぱいにゃ?」

「そうね。お店に17人居るわ」

「そのうち入りきらなくなるにゃ」

「そう思うわよね」

「外の人はどうするのにゃ?」

「え?」


どうやらユメは、転移前サーチで店の回りを見た時、あまりの人の多さに自力転移を諦め、キボウに頼み、リビングに転移してきたらしい。


慌ててユリは外を見に行った。ユメの報告通り、ごっちゃりと人が押し寄せていた。


「ハナノ様!」「ユリ・ハナノ様!」

「今日のお手伝い募集は、応募者多数で締めきったのですが」

「存じております! 今居る人は、開店を待っている人だけです」

「えー! まだ11時にもなっていないわよ!?」

「早く来た人は、ベルフルールに行って食事をしたり、その辺を散策したり、お茶を頂いたりして待っております」

「なら、お茶だけでも先に出すわ」


今日のベルフルールは、定休日だ。

ユリは厨房に戻ると、外おやつ用のお茶を用意し、マーレイと持っていった。すぐ後からリラが、湯呑みやカップを持って追ってきた。


「飲み物は早い時間から用意しないとダメね」

「イベントがなければ、この時間はまだそんなに来ないと思います」

「なら、イベントの日は、早くからお茶を出しましょう」


おやつ用のパウンドケーキも早めに出し、お茶はいつもよりも多めに用意した。




あっという間に午前中が終わり、(ちまき)も予定数以上が出来上がった。


「ハナノ様、とても有意義に過ごさせていただきました。少しでもお役に立てましたこと、大変光栄に思います」

「とても助かりました。最初は、私一人で店内サービス分だけ作るつもりでしたが、皆さんのお陰で、お土産分を販売することが出来るようになり、とても喜ばれています」

「又、何かございましたら、どうかお声がけくださいますよう、お願い申し上げます」

「大変助かります。皆様ありがとうございました。どうぞ、お昼ごはんを召し上がっていってくださいね」


1時間程手伝ったシィスルとマリーゴールドは、ユメにズコットを習い、そのまま厨房に残っていた。ユリは人数が多いので、あまり手間もかからず調整が利きやすいメニューにしようと考え、無水カレーを作ったのだ。


「お店では出したことがない、無水カレーです。トマトの水分だけで煮詰めます」


これは、ルーではなくカレー粉を使うので、作り方も説明した。トマト、玉ねぎ、肉、カレー粉があれば、とりあえず作ることが出来る。後は好きな野菜を加えれば良い。


「水を入れない煮込み!?」

「煮込みの概念が覆される!」


味はとても好評で、ユリはほっと胸をなでおろした。


店に17人居るので、とても一緒には食べられない。厨房でも椅子を用意し、そのまま厨房で食べることになった。椅子11個は、ソウが用意してくれた。いつも厨房にある椅子は、店に持っていってしまったためだ。


「ユリ様、これ、作り方教えてください」

「無水カレーは、湯剥きしたたっぷりのトマト、スライスもしくはみじん切りの玉ねぎ、お肉をしっかり蓋をした鍋に入れて、弱火で煮込むのよ。他の野菜を足しても大丈夫よ。よく火が通ったら、カレー粉を加えて出来上がりよ。とろみをつけたいなら、小麦粉を溶いたものを加えれば良いわ。私はトマトは缶詰を使ったけど、良く熟れたトマトで作ったらとても美味しいわよ」

「今度作ってみます!」


満足して食べ終わり、皆休憩に入った。


昼休みあけ、少しだけ早く開店させた。外に待つ大勢の客のためだ。

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