柏餅
「サエキさん、どうもありがとう」
「どういたしまして。ハナノさんの分以外は、とりあえず1つで良いですか?」
「とりあえずは1つで大丈夫です」
何故かソウは、店からではなく、2階から戻ってきた。
「ユリ、向こうへ行ったから、お土産に柏餅買ってきたけど、これってどうしたら良い?」
どうやら、お土産を自分の部屋に取りに行ってきたらしい。
「いくつ有るの? 皆さんの分まであるなら、おやつか夕食の時に食べるし、無いなら、」
「あ、数は、普通のが5個、ヨモギが5個、味噌餡が5個有るよ」
ユリは必要数を数えてみた。現在厨房に6人、店に4人、外に2人で、3つ余る。
「選ばなきゃならないから、夕飯の時に食べましょうか」
「了解。カナデ、帰りに2つ待っていきなよ」
「ありがとう」
そうすると余り2つだ。ユリは、マリーゴールドが帰る時に、持たせたら良いかなと考えていた。
「早速使えるように、分解洗浄をしましょう」
サエキとソウが、アイスクリーマーの分解を手伝ってくれた。マーレイがどんどん洗い、金属部品は煮沸消毒し、それ以外は、食品用アルコールスプレーで消毒した。
「まずは、一度作ってみましょう」
アイスクリーマーを組み立て、加熱処理すら自動だというその機械に、材料を入れた。皆、他の仕事をしながらも、チラチラと気にしながら見ている。スイッチを押してから約15分後、軽快な音楽が鳴り、出来上がりを知らせた。
「うわー。何もせず出来上がるの、凄いわ」
ユリがレバーを傾け、ボールにアイスクリームを取り出した。黒糖アイスクリームの出来上がりだ。
フルーツ氷の入ったココット型を、6種類10個ずつ用意し、勝手を把握しているソウとマーレイが率先して仕上げた。
「これが、フルーツ宝箱なのでございますね!」
しまうのを手伝っていたマリーコールドが、感激した様子で呟いていた。
「この後、上にきな粉をかけてから販売よ。それで今回は、原色3個と、間色3個に分けて販売する予定です。なので、色味の違うきな粉で見分けられるようにしようと思っています」
「それで、浅煎りと深煎りのきな粉を注文したのか」
手配したソウが呟いていた。
「ホシミ様、こちらの機械は、私も操作出来るでしょうか?」
「マーレイも動かせるよ。まあ、誰かが魔力充填はする必要があるけど。そういえば、そろそろマーレイも充填できるんじゃないか?」
マーレイに、セロシアの名をつけてから、20日ほど経つ。安全に増やしていても、充分な時間だ。
「大丈夫そうだから、そろそろ帰るよ」
サエキがソウに声をかけていた。
「カナデ、ありがとな。柏餅何にする?」
「白と緑で」
「サエキさん、どうもありがとうございます。よろしければ、粽も持っていってください」
「ありがたく貰っていきます」
そうしてサエキは一人で帰っていった。それと入れ替わるように、ユメが来ていた。
「ユリ、それは何にゃ?」
「あら、ユメちゃん。これは、アイスクリーマー。電動のアイスクリーム製造機よ」
「アイス箱は使わないのにゃ?」
「物によってかしらね。仕上げに何か混ぜるタイプとかは、アイス箱の方が、作りやすいと思うわ」
「また、手伝うにゃ」
「ユメちゃん、ありがとう」
ユメは店に戻っていった。
「ユリ、俺、アイス作って良い?」
「ありがとう、お願いします」




