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アルストロメリアのお菓子屋さん  ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
1章

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襲撃

馬車で家につくと、豪華な(派手な?)馬車とイエロー公爵婦人のライラックが待ち構えていた。


「ライラックさんだ、めんどくさそう」


うっかり呟いてしまった。


ライラックはユリが馬車を降りるなり話しかけてきた。


「ごきげんよう。どちらにいってらしたの?」

「はあ。何のご用ですか?」


ユメがクーファンから飛び降り、行ってしまった。


「あ、ユメちゃん!」

「猫なんてどうでもよろしいではありませんのこと?いままでどちらにいらしたの?」

「えーと、なんで答えないといけないのでしょうか?」

「まあ!わたくしと特別なお友達とおっしゃったではありませんか!」


ユリは少しうんざりした。


「あー、やっぱり。名前でしたら、女性ならどなたでもユリと呼んでます。男性はフルネーム、もしくはハナノと名字にしてもらってます。そういう話ですけど?」

「なんですって!」


ライラックは考えを巡らせる。


「せ、先週、ローズマリー様は、ユリ様と呼んでいないと聞きましてよ?」

「ローズマリーさんは、遠慮してたみたいです。今は私の事を『ユリ先生』と呼びますよ?」

「なんですって!」


そこに男性をつれたソウが転移で現れた。

転移するのを目の前で初めて見た。

つれられた男性は萎縮しているようで少し震えている。


ソウは男性から手を離すと少し怒ったように言った。


「ちゃんとしてくれる?」

「は、はい、申し訳ございません」

「公爵様?」


ライラックが男性を公爵様と呼ぶ。

公爵様と言うことは、この男性がイエロー公爵なのかしら?


「ライラック!お前何て事してくれたんだ!!」

「え?え?なんですの?」

「くれぐれもハナノ様に失礼の無いようにと言ったではないか!!」

「ですから仲良くしているではありませんか」


えー。

と、ライラック以外の全員が思ったのは仕方がないと思う。


つまり、およそ自分より上の身分の者が居ない公爵婦人としては、全て思い通りに仕切るのが同然であって、治外法権であるソウの身内の扱いなどわからなかったのである。


「仲良くすると言うのは、一方的に申し渡すことではありません。お互いの意見を尊重することです」

「わたくしの派閥の皆はそんなことどなたも言いませんわよ?」

「あなたの派閥(・・)の時点で、誰もあなたに逆らえないからではないですか?」

「そんなことは・・・」

「一番下だと思う人の意見を聞き、意見を尊重したことはありますか?」

「・・・」

「私には貴族の決まり事はわかりません。でも、従う言われもありません」


「・・・今日はこれにて失礼します」


イエロー公爵が挨拶し、おとなしくなったライラックとともにライラックの馬車で帰って行った。


◇◇◇◇◇


ソウは用事があって王宮に来ていた。

王族と一部貴族を集めた会議のようなものだった。

話し合いが終わる頃、ユメからの『以心伝心』が来た。


「ライラックの襲撃にゃー!!」


それまで笑顔だったソウの雰囲気が明らかに変わった。


「ライラックって誰だかわかる?」


溢れ漏れる魔力(怒りのオーラ)がゆらゆらと見えるソウに、腰が抜けて動けない隣の王に代わって、レッド公爵が答えた。


「ライラック様は、イエロー公爵婦人です」

「レッド公爵ありがとう。イエロー公爵は居る?」

「は、はい、私です」

「ちょっと来てくれるかな?」

「は、はい、どちらへ伺」


ソウに手をとられたイエロー公爵が話し終わらないうちにソウの転移でその場から消えた。


ソウが消えた後の王宮は騒然とした。

あれほどの怒りを受けてイエロー公爵は無事でいられるのだろうか。

政敵もがイエロー公爵を気の毒の思うほどだった。


イエロー公爵はソウより少し重たいようで1回の転移では家まで行けなかった。

3回もの転移で、慣れないイエロー公爵は目眩がしていた。


家の前につき、ソウはイエロー公爵から手を離すと怒り心頭で言った。


「ちゃんとしてくれる?」



◇◇◇◇◇



「どうしてソウはイエロー公爵婦人がここにいるとわかったの?」

「ユメからの連絡で、『ライラックの襲撃にゃー』って教えて貰ったからな」

「えー、ユメちゃんって、ソウに連絡してたの?」

「なんか、魔力的に凄く大変な連絡らしいから、甘い物作ってやってくれる?」

「うん。ソウもありがとう」


ソウはもう一度戻るらしく、家に入らず、そのまま転移していった。


あれ?前にもこんな事があった気がする。

面倒な人を相手にしていた時にソウが現れて、いつだったかな?


とりあえずユメちゃんにお礼のお菓子を作らなきゃ。


「ユメちゃーん」


呼び掛けても居ないので家に入ることにした。

階段の3段目くらいに丸まった黒猫姿のユメがいた。


「ユメちゃん、こんな所に居たのね。何か作るけど、リクエストはある?」

「にゃー」


淡く発光し、猫耳幼女姿になる。


「ユリのお菓子が食べたいにゃ」

「今日作った若鮎と冷凍庫のアイスとお店にあるパウンドケーキならすぐ出せるわよ?」

「全部は食べきれないにゃ」

「じゃあ、全部を少しずつ出しましょうか?」

「良いのにゃ?」

「じゃあ用意するわね。ユメちゃんそのまま抱っこしましょう」


動きの鈍いユメを見て、魔力を使いすぎて動けないのかもしれないとユリは思った。

ユリは幼女のままのユメを抱き抱え(だきかかえ)階段を上がっていった。

小柄な幼稚園児くらいあるユメを抱っこするのは流石に重たい。


若鮎1つと、パウンドケーキを半分と、アイスクリームを用意した。


「ユメちゃんどうもありがとう。ソウに聞いたわ」

「ソウおしゃべりにゃ」

「あら、内緒だったの?」

「ソウを呼んだだけて何にもしてないにゃ」

「呼ぶのが大変ってソウが言ってたわよ?」

「ソウ、おしゃべりにゃ」

「ソウはすぐ戻らないといけなかったみたいでね、ユメちゃんに甘い物作ってくれって言ったのよ」

「なら仕方ないにゃ」

「ふふふ、二人は仲良しねー」

「そんなことないにゃー」


ユメは黒猫に戻って行ってしまった。

照れたのかもしれない。


しばらくするとソウが戻ってきた。


「おかえりなさい。何か食べる?」

「今日はもう出ないから、一緒にごはん食べたいな」

「はい。夕ごはん用意するわね」



「今日はつるつるつるお蕎麦の予定よ」

「つるが多くない?」

「ふふふ、暑くなってきて食欲がないときに最適なのよ。ソウが買ってきた3こパックのめかぶを使うわね」


◇ーーーーー◇

蕎麦(乾麺)

とろろ

刻みめかぶ

茹でオクラ

(あれば小粒納豆)

卵黄

めんつゆ


茹でオクラを刻み、とろろと、めかぶと、納豆をお椀にきれいに盛り付け、真ん中に卵黄をのせます。

蕎麦を茹でて、冷やします。

お椀にめんつゆを足しながら蕎麦をつけて食べます。


一度にめんつゆを全部いれないことが美味しく食べるコツです。

◇ーーーーー◇


「ユメちゃんも、食べるかしら?」

「これは食べるんじゃないか?」

「ユメちゃーん、冷たいお蕎麦あるわよー」

「にゃー」


ユリがお椀を低くして中身を見せるとユメは変身した。


「初めて見るにゃ。少しだけ食べて見るにゃ」

「はいどうぞ。おつゆは足りなくなってから少しずつ足してね」

「少しずつにゃ?」

「汁を一度にいれると具が浮いちゃって食べにくくなるのよ」

「成る程にゃー」


ユメは先の丸い子供用フォークで器用に食べていた。


「あーうまかった!」

「うふふ、美味しいわよね」

「ユリ、まだあるにゃ?」

「あるわよ、おかわりする?」

「おかわりするにゃ!」

「はい、どうぞ」

「ソウはアイスクリームでもいかが?」

「食べる食べる!」


「あ!思い出した!ミートミンサーだ!」

「なに?どうした?」

「以前、ミートミンサーのことで転移組の人たちが来たときも、ソウが助けに来てくれたのが今日と似てるなぁって」

「そうだな。一緒だしな」

「あの時もユメちゃんがソウに連絡したの?」

「連絡しただけにゃ」

「うふふ、ユメちゃん、ありがとう!」


「あの人たち、その後どうなったの?」

「あーあの森林トリオなら、ミートミンサー届けたよ」

「森林トリオ?」

「モリ、ハヤシ、コバヤシだから森林トリオ」

「へぇ。名前知らなかったわ。誰も名乗らなかったし」


クロネコのユメ

第6部分 夢の連絡

掲載日:2021年 07月21日 13時00分

よろしくお願いします。

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