粽笹
「リラちゃん、待っていたわ」
「なにかありまし、あ!大きい竹の葉! えーと、笹でしたっけ、何作っているんですか?」
「粽よ。明日作ってもらうわ」
リラは、ユメの手元を覗き込み、頷いていた。
ユリは、冷凍庫からズコットを出してきた。
「これ、フルーツズコット。4~5時間、冷蔵で解凍してから切り分けてね」
「うわ!凄いですね!」
「あとこっちは、内緒の、本格的ズコット。食べ方は同じよ」
「今日のデザートですか?」
「これ、特注品なのよ。味見したいかと思って。それで、今から納品に行くから、マリーゴールドちゃんに、30分くらい頼もうと思ってね」
「あ、なら、私も少し残ります。今日は、割りと暇なので」
「え、無理してない?」
「無理してません。ついでに、粽の作り方教えてください」
「笹をコロネ状に三角に丸め、餅米を入れます。下の方は入りにくいので、箸で少し詰め込むようにザクザク刺してほどよく詰め込みます。一番低いところ、笹の合わせ目の上まで餅米を詰めたら、もう一枚笹を使って、蓋をします。被せて後ろに折り曲げるようにたたみ、藺草で紐かけをして出来上がりよ」
「ちょっと作ってみます」
シィスルも覗きに来て、リラに教わり作ってみていた。
ユリは、持っていく分のズコットを杖で収納し、ワンピースに着替えて戻ってみると、リラは見事に粽を作っていた。
「あなた、本当に器用ねぇ」
「ユメちゃんに、コツを教わりました!」
「紐かけは教えてないにゃ」
「ホシミ様のを見て覚えました」
そこにマリーゴールドが来て、リラが作っているのを見て驚いていた。
メリッサとイポミアも出勤して来たようで、皆集まってきた。
ユリは簡単に説明したあと、ソウとキボウと3人で転移した。
「キボウ君、先にお城でごめんね」
「だいじょぶ、だいじょぶ」
ソウが鳴らしてくれたベルで、サンダーソニアが直接迎えに来た。
急いでいると断りを入れ、簡単な挨拶をしたのち、2種類を一つずつ渡し、解凍方法や、切り方を説明した。
「なんと言う名前なのでしようか?」
「これはズコット。味のおすすめ的には、少し地味だけど、こっちなのよ。フルーツのは派手だから、見映えはするけどね」
「このお花は、食べられるのですか?」
「生クリームで出来たバラよ。もちろん食べられるわ」
サンダーソニアは、素敵!と呟き、喜んでいた。
「どうもありがとうございます」
「それで、カンパニュラちゃんのおやつを、いつもユメちゃんとキボウ君が持ってくるでしょう? ユメちゃんにはお店番をしてもらっているから、申し訳ないけど、カンパニュラちゃんに渡しておいてくれるかしら?」
「かしこまりました」
ユリは、フルーツズコットを更に6つ取り出し、サンダーソニアに渡した。
「バタバタで悪いけど、帰るわね」
「どうもありがとうございました」
サンダーソニアは深々と頭を下げた。
ユリは、ソウとキボウを連れ、世界樹の森の前に転移した。
「キボウ君、少し大きいけど、真冬箱を持っていける?」
ユリは、ズコット2種が入っている真冬箱を取り出した。
キボウが持ち上げようとしてみたが、引きずってしまう。
「キボウ君、中身を1つずつ、持っていく?」
「わかったー」
キボウは、ユリの手紙と、ズコットを1つ持って行った。
すぐに戻ってきて、もう1つのズコットも持って行った。
戻ってきたキボウは、手紙を持っていた。
「キボウ君、どうもありがとう」
「ユリー、これー」
手紙を渡された。すぐに読んでみると、丁寧なお礼が書かれていた。ソウにも手紙を渡し、読んでもらった。
「無事納品が終わって、良かったわ」
「ユメが大変だから、さっさと帰るか」
「かえる、かえるー」
キボウが、ユリとソウを連れ、家のリビングまで転移した。
「キボウ、凄いな。俺の結界って、通り抜けるの簡単なのか?」
「? キボー、まけたー。ばしゃ、ガタゴトー、てんいー、まけたー」
「あー、そんなこともあったな」
仲良く話しているソウとキボウを残し、ユリは急いで着替え、厨房に戻った。
「ただいまー。リラちゃん、どうもありがとう」
「あ、ユリ様、おかえりなさい。餅米がなくなりました」
「えぇー!何個作ったの?」
「マリーも、シィスも、メリ姉も、ミア姉も作れるようになったので、えーと、何個? ここにあった笹の残りが、あと4枚です」
笹は300枚出してあったのだ。つまり、合計148個出来たことになる。
「あ、ユリ、おかえりにゃ。笹はわかったけどにゃ、餅米がどこかわからなかったにゃ」
「ユメちゃん、どうもありがとう。餅米は内倉庫よ。持ってくるわ」
ユリは、クラフト紙製の米袋に入った餅米を持ってきた。
「リラちゃん、どうもありがとう。ズコット2種、持っていってね」
「ありがとうございます! 食べるの楽しみです!」
シィスルと1つずつ持ちながら、ベルフルールに戻っていった。
「粽、作るのが大変だから、店内サービスのみにしようと思っていたんだけど、みんなが作れるなら、持ち帰り分をつくって販売しようかしら? まだ作る気力ある?」
ユリが意見を聞くと、イポミアが手を上げた。
「はい!作りたいです なんか面白かったです」
「私も作りたいです」
メリッサも作りたいらしい。
ユリがマリーゴールドを見ると、答えた。
「私も作りたいです。リラさんより早く作れるようになりたく思います」
いつのまにか来たらしいソウとキボウも、引き続き、手伝ってくれるらしい。
「なんとか紐も出来るようになったにゃ。リラが居ない内に、リラを越すのにゃ!」
ユメもやる気があるらしい。
「では皆さん、お願いします!」
ユリは、笹と藺草を茹で、餅米を研いだ。
餅米の吸水のため、キボウに時送りしてもらった。




