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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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大猫

城のソウの部屋からベルを鳴らすと、すぐに来たのは、サンダーソニアだった。


「ユリ様!どうかされましたか?」


異国の衣装を着たユリを不思議に思ったらしい。


「あ、急遽、世界樹様に謁見したから、手持ちの正装なのよ」

「何かございましたのでしょうか?」


大分不安そうに聞いてきた。


「キボウ君の話をしに行っただけだから心配ないわよ」

「そうでしたか」


やっと緊張状態から解放されたらしく、サンダーソニアは笑顔になった。


「ついでに、メイプルさんの話も確認してきたのよ」

「ありがとうございます」


どうやらサンダーソニアは、ユリの返事待ちで、ユメを待っていたらしかった。


「サンダーソニアさんにも聞きたいのだけど、どのくらいのものを作れば良いの?」

「どのくらい、でございますか?」

「うん。1人前なのか、10人前なのか、100人前なのか、作るものも違うしね」

「最終的に、御兄様の個人資産から出す予定の物なので、家族向けになります。今なら、4人前有れば良いと思います。多く見積もっても、姉たちを加え、6人前です」

「分かったわ。何時頃届ければ良い?」

「公式ではないので、ユリ様のご都合の良い時間で構いません。母に披露するのは、夕食後になります」

「だったら、昼までに納品するわね」

「ありがとうございます」


当日は営業日なので、午後の納品は難しいのだ。

サンダーソニアとの話が終わり、振り返ると、ユメとキボウは既に居なかった。カンパニュラのところに行ったらしい。


「先、帰るか」

「そうね。サンダーソニアさんにも話を聞けたし、」


ユリが言いかけたとき、外から訪問を告げる声掛けがあった。


「王妃、ハイドランジア様がお越しになりました」

「どうぞ」


ソウがすぐに入室許可を出していた。


ハイドランジアは、ユリの衣装を見に来たらしい。ユリが見たことの無い服を着て来ていると、聞き付けたようだ。挨拶のあと、すぐに質問してきた。


「ユリ様、こちらは、年初めの御衣裳の色違いでございますか?」

「はい。これは既婚女性の第一礼装です。黒留袖と言います」

「婚姻の有無で、ずいぶんとお色が変わるのですね」

「そうですね。それに、長い袖も短くなるのです」

「履き物は同じでしょうか?」

「はい。振り袖の時と同じです」


一通り、気が済むまで見たハイドランジアは「黒地に鮮やかな模様というのも素敵でございますね」と言いながら、今後の自分のドレスの参考にするらしく、ユリに断ったあと、連れてきた者にスケッチさせていた。


ハイドランジアが納得したらしいので、今度こそ帰ろうとすると、ハイドランジアは御付きの者を下がらせ、ユリとソウに言った。


「昨日は、美味しいお料理とお菓子をありがとうございました」

「昨日のお菓子って、ポップコーンですか?」


昨日、ユメとキボウは、キャラメルポップコーンを持っていったはず。


「いえ、ローズマリーが主催した、(わたくし)の誕生を祝う会に、お料理をご提供くださったと、伺いました」

「え、昨日の納品って、お誕生会だったんですか!?」

「非公式に30人ほど、幼馴染みなどの親しい者だけで集まった会でございました」

「あ、それで、30か200だったんですね」


少し不思議な注文の謎が、明らかになるのだった。


今度こそ本当に帰ることになり、簡単な挨拶をし、家に戻ってきた。


急いで黒留袖を脱ぎ、着物用のハンガーにかけた。襦袢(じゅばん)と下着と足袋を洗濯し、帯や小物を片付けた。

ユリがリビングに行くと、ソウがお昼ごはんを用意していた。


「ソウ、ありがとう」

「休みの日くらい作ろうかなってね」

「ユメちゃんとキボウ君は呼んだの?」

「すぐ、来るってさ」


話していると、ユメとキボウは、リビングに転移してきた。ソウの結界を越えて転移してこられるのは、キボウの魔力なのだろう。


4人揃って昼食をとり。話題が、世界樹の森での話になった。


「あの時、ユリが世界樹様と話しているのを、ぼんやりと聞いていたよ。話の内容は入ってくるのに、夢の中に居るような、こう、現実感がない感じだった」

「私は、金縛りみたいに、動けなかったにゃ。ユリに呼ばれて、目が覚めたみたいに動けるようになったのにゃ」


確かにソウもユメも、ユリが呼び掛けるまで、少し変だった。


「私は、威圧感が少し重いなあと感じていたくらいだったわ」


「それでユリ、使い方は判ったの?」

「バッチリよ!これは、使えない魔法を使えるようにするための、『魔法の実』らしいわ」

「へえ。早速使ってみる?」

「どうやって使うのにゃ?」

「この木の実をなめながら、使いたいのに使えない魔法のことを考えると、使えるようになるらしいわ」

「あー、キボウの説明通りなんだな」


早速ユリは、キボウから貰った木の実をなめながら、変身魔法と、変身したい動物のことを考えた。しばらく全く変化がなかった木の実が、有る時一瞬で溶け、なくなった。


「変身できると思うわ!」


ユリは鏡がある前で、猫に変身して見せた。

鏡に映るのは、ユリが想像した通りの、茶トラの猫だった。首にスカーフを巻いている。


上手くいったわ!と思いソウとユメを見ると、ユメはかなり驚いて唖然としており、ソウは大笑いしていた。


少しムッとして、以心伝心でソウに呼び掛けた。


『ちゃんと猫になれたわよ?』

「ユリ、大きさ!」

『え?』


ユリは鏡に映る、横に居るキボウを見て、やっと理解した。


ニャー(えぇー)!」


キボウと変わらぬサイズ感。


「ユリ、メインクーン?」

「ユリ、小さくは成れないのにゃ?」


ユリは話すために、もとに戻った。


「えー、どうしてー」

「ユリ、猫以外には成れないの?」

「じゃあ」


そしてユリが変身したのは、スカーフをしたペンギンだった。

今度はユメと変わらぬサイズ感。


「皇帝ペンギンか?」

「大きいペンギンにゃ!」


ペンギンが好きらしいユメは、大喜びだ。

しばらくペンギンのままユメと遊んだあと、ユリはもとに戻った。


背の小さいユリは、これ以上小さくなりたくないと無意識で思っており、それを改めない限り、割りと大きめな動物にしか成れないのだが、本人が気がつかないと改善はされないのだった。

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