執念
豪華な部屋での昼食は、最初の頃はとても緊張していたらしい給仕係りも、やっとなれてくれたのか私に怯えなくなっていた。
食事の内容は素材の味が生きている前菜と、素材の味が主張するスープと素材の味が強すぎるサラダと薄味のローストビーフぽい肉料理と、かなり良くできたグラタンと、フルーツの盛り合わせだった。
もしかしてこの2週間、毎日グラタンだったのだろうか?
「ユリ先生、グラタンはいかがでしたか?」
「美味しくできていると思います」
「ほほほ」
「グラタン以外も教えた方が良いですか?」
「教えてくださるのですか!?」
「こちらの厨房でとなりますので、邪魔になるかもしれませんが」
「とんでもございません!教えてくださるなら、全員が1食抜くことになってもかまいません!」
「パープル侯爵に確認しなくて大丈夫なんですか?」
「サリー、侯爵様に」
「かしこまりました」
「今、確認に行かせました」
あれはきっと事後承諾だぁ。
「パールホワイト伯爵家とスカイブルー伯爵家とサーモンピンク子爵家はどうするんですか?」
「サンフラワー様、カメリア様、カーネーション様、料理長を派遣できますか?」
「できます!ダメでもさせます!」
「お父様に交渉します!」
「是非お願いします!子爵様にはダメだとは言わせません!」
「え?」
具体的な日程は後ほどとなり、次回のお菓子を決めることになった。
時期的にも暑くなるので焼き菓子より冷菓の方が喜ばれるだろう。
「ユリ先生のお店で評判になった、くずきりというものは難しいですか?」
「あー、あれは簡単すぎて、・・・そうだ!黒蜜から作りましょうか」
「それでお願いします」
「次回から知らないメンバーが増えますか?」
「その予定です」
「わかりました、こちらもそのつもりでいます」
では、必要なものを書きましょう。
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葛切り
葛粉
水
黒糖
水
鍋
漉し網
金物トレー
レードル
大きな鍋
湯
トング
氷水
ナイフ
まな板
食べる容器
好みで、きなこ
◎おまけ
みかん(柑橘類)
重曹
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紙を渡す。
「こちらを用意してください。わからないものがあったら聞きに来てください」
「では、来週もよろしくお願いしますね」
「どうぞ、よろしくお願いいたします!」