夕飯
「ユリ様、夕飯は何を作るんですか?」
「予定はパスタだけど、ミートソースと、カルボナーラなら、どっが良いと思う?」
「うわ、どっちも食べたい」
「んー。なら、双方作って、食べたい方を聞いて回る?」
「私、聞いてきます!」
リラは、みんなに確認に行ってしまった。
「シィスルちゃんとマリーゴールドちゃんは、どうするの?」
「お店で食べようと思って2人で来たんですけど、うっかりエプロンに魅入ってしまいまして」
「あら、そうなの? だったら食べていくと良いわ。全員分のサラダを作ってくれる?13人前よ」
「はい!」「はい」
今日は、レギュムとクララが夕飯時に居ないので、各自夕飯を食べる予定だと言っていた。昼にレギュムが荷物を取りに来たので、届けるための遠出なのかもしれない。
「ユリ様ー、全員、半分ずつ食べたいそうです!」
リラが戻ってきて報告していた。
「全員って、シィスルちゃんとマリーゴールドちゃんに確認していないわ」
「あれ? シィスとマリーも食べていくの?」
「はい」「はい」
「両方食べたいよね?」
「はい!」「はい」
「だそうです!ユリ様」
「ソウとキボウ君の分も半分ずつにして、どちらかを選ぶようなら、んー、多めに作れば良いわ。では、10人分ずつ計量お願いします」
「はい」
リラが野菜を取りに行き、ユリが粉チーズとベーコンと卵と生クリームを用意していると、サラダの用意が終わったらしいシィスルとマリーゴールドが、ユリに頼んできた。
「ユリ様、覚えたいので、手伝わせてください」
「私もお願い致します」
「なら、まずは、野菜を切ります。玉ねぎ、ニンジン、マッシュルームを、みじん切りです」
手早くみじん切りを作り、鍋に入れ挽き肉と共に炒め始めた。トマト缶とトマトピューレを開け、コンソメと一緒に加え、赤ワインと少量の砂糖を加え、少し煮詰める。
2kgのパスタを1kgずつ、2つの鍋で茹で始める。
粉チーズと卵黄と生クリームを混ぜていると、メリッサが挨拶に来た。
「イポミアは食べていきますが、私はそろそろ帰ります」
「半鶏丼は余った?」
「12個余ったにゃ」
ユメが数を報告してくれた。
「メリッサさん、夕飯は間に合わないから、良かったら半鶏丼4個持って帰って良いわよ」
「ありがとうございます!」
メリッサが帰ったあと、夕飯が出来上がった。
ユリがソウとキボウを呼ぼうとすると、二人が丁度来た。
「ソウ、キボウ君、ミートソースとカルボナーラなんだけど、半分ずつ食べる?どちらか一方を食べる?」
「俺、半分ずつ!」
ソウはすぐに決めた。
「なにー?」
「ミートソースはトマト味で、カルボナーラはベーコンが入っているわ」
「キボー、たべるー!」
「両方半分ずつで良い?」
「いーよー」
人数が多いので、どう座ったら良いかとユリが悩んでいると、リラが弟子とイポミアを誘って、4人でテーブルに座った。
マーレイとイリスが、2人がけに座り、お手伝い組は、カウンターに座るのだった。
味が違うので、フォークを2本ずつ添え、飲み物は、イリスが用意してくれた冷茶で、サラダとデザートを添えた。
デザートは、休み明け販売分の今日作ったものだ。
「お店で見たことがない食事!?」
「お店で見たことがないデザート!?」
「ハナノ様、こちらはなんでしょうか?」
お手伝い組が、騒いでいる。
「双方スパゲッティで、赤っぽい方が、ミートソース。トマト味で、みじん切り野菜と挽き肉を煮込んだものです。白っぽい方が、カルボナーラ。お店のピザトーストにのっているベーコンと言うお肉と、粉チーズや生クリームを和えたものです。デザートは、休み明けの販売分です」
「なんと!?」「凄い!」「役得です!」
食べ始めると、とても気に入ったらしく、食べ終わるのが物凄く早かった。
「ハナノ様、こちらは、販売はされないのですか?」
「ミートソースの方なら出しても良いけど、カルボナーラは、1回作ると2~3人前くらいが出来上がるから、出すのは面倒なのよね」
「販売に使った魔道具の鞄に入れるのは、駄目なのでしようか?」
「あー、うん、そのうち考えておくわ」
3人はニコニコしていた。見知らぬ美味しいものを食べた説明は難しい。美味しいものを先に食べた自慢は、実物を食べさせれば良いだけなので、簡単だ。
「大変美味しかったです。本日はありがとうございました」
「え?お礼は私が言う方なのでは? 帰るのでしたら、半鶏丼、いくつかあるのでお土産にどうぞ」
「ユリ、残り8個にゃ」
「あら、割りきれないわね」
「私は2つで構いません。お2人は3つずつどうぞ」
「良いのですか!?」「ありがとうございます」
「私はパープル侯爵の屋敷に部屋を貰っているから、家族は同居していないんだよ」
「ありがとうございます」
貴族の三男だと言う男性が遠慮してくれて、無事に分けられた。
「こちら、今日の報酬です。お手伝いありがとうございました」
ユリは、2万☆を小袋に入れ渡した。
「いつでもお声がけくださいませ」
「私もいつでも手伝います!」
「私も、手伝いたいです」
「またそのうち、持ち帰りを大量に販売するときにお願いしますね」
お手伝い組は、帰っていった。
ユリが振り返ると、イポミアが残念そうに項垂れていた。
「イポミアさん、どうしたの?」
「あ、いえ、」
イポミアは、はっきり話さなかった。すると、ユメが解説してくれた。
「ユリ、イポミアは、鶏丼が欲しかったのにゃ」
「あら、そうだったの?だったら、器を返してくれれば、1人前の方を持ち帰って良いわよ」
「え!良いんですか!?」
「いくつ欲しいの?」
「両親の分で、2つお願いします!」
ユリは、自分の鞄から鶏丼を2つ取り出し、イポミアに渡した。
「ありがとうございます!」
イポミアは元気にお礼を言うと、お手伝い組の皿も片付けて洗い、帰っていった。
「ユリ様、ちょっと良いですか?」
シィスルに呼ばれ、ユリがシィスルに説明している間に、リラとマリーゴールドが残りの片付けをし、解散になった。
シィスルの質問は、エプロンを仕上げてみたいらしく、先ほどの説明で分からなかったところの確認だった。




