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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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裁縫

昼休みが終わる少し前、並んでいる客に気が済むまで取材したらしいエルムが、帰ると挨拶しに来た。


「では、Mの日(つきのひ)Fの日(かえんのひ)がおよそ同じメニュー。Wの日(みずのひ)がお休み。Tの日(じゅもくのひ)Gの日(きんのひ)も、およそ同じメニュー。Eの日(だいちのひ)Sの日(おひさまのひ)がお休みで、しばらく営業なさるのですね」

「はい。その予定です。リクエストは、ノートを参考にします。特注は、基本的には受けませんが、内容によるので、聞いてみてください」

「かしこまりました。必ずや、分かりやすく記事に致します」

「ありがとうございます。次回イベント予告は、5月5日Tの日(じゅもくのひ)、その次が、5月9日Mの日(つきのひ)です」

「連続ですね!」

「5月9日は、真冬箱を是非お持ちください。フルーツ宝箱を販売する予定です」

「それは楽しみです!」


今日のメニューを持ったユリと一緒にエルムは外に出て、最後に部下を励まし、帰っていった。


ユリが外にいると、マーレイとイリスが、折り畳みテーブルを運んできて組み立てていた。手伝いの男性にも、ユメのリュックサックの使い方を説明し、まずはイリスが担当するらしく、挨拶をしていた。マーレイもイリスも、顔見知りらしい。


貴族からの注文の配達分を取りに来たレギュムが、外にいるお手伝いの男性を見て驚いていた。普段、侯爵邸の転移陣を使うときに、対応してくれる担当係官なのだそうだ。


「なぜ、こちらにいらっしゃるのですか!?」

「お手伝い争奪戦に勝ちました。上官から推薦して貰いました」

「お手伝い争奪戦でございますか?」


その後、イリスがレギュムに説明し、レギュムと一緒に来ていたクララが、手が足りないのであれば、私もお手伝い致しますと名乗り出ていた。


「無理に時間を調整しなくて大丈夫ですが、開始30分から1時間ほどお手伝いいただけると、とても助かります」

「1時間程度なら、時間調整等せずとも問題有りません」

「ではクララさん、販売開始の忙しい時間をお願いします」

「かしこまりました」


イリスが説明等してくれるので、任せてきた。

ユリは、注文分をレギュムに渡し、お店の営業を開始した。


「さあ、リラちゃん。半鶏丼とサクラムースの追加作るわよー!」

「半鶏丼、800以上も作って大丈夫ですか?」

「明日、200個注文なのよ。その分ね」

「注文分が有るんですか」

「サクラムースは器を変えるから、気をつけてね」

「はーい」


ソウとマーレイが引き続き手伝ってくれたので、追加分の半鶏丼も出来上がり、サクラムースの仕上げは、器こそ違うものの、基本的なデザインに差はないので、難なく終わり、明日納品分も全て問題なく仕上がった。

休み明けのデザートも仕込みおわり、久々に厨房は暇になったのだった。


「とりあえずやること無いなら、俺、少し出掛けてくる」

「はーい。行ってらっしゃい」


ソウが出掛けていき、マーレイにも少し休憩に入って貰った。


「リラちゃん、何か希望有る?30分くらい時間有るわよ」

「えっと、料理以外でも良いですか?」

「私が分かることなら良いわよ」

「エプロンの作り方を教えてください」

「あー、丁度良いわね。切ってしまえば、ほぼ真っ直ぐ縫うだけだから、覚えると良いわ」


リラの選んだ布を持ってきて、カットの仕方を説明するのだった。


「丈を長く作りたい場合は、布の耳を横向きに置いて、クロス部分は、縦にとります。逆に、丈を短く作る場合は、耳の部分側からクロス部分の布をとります。これは決まりではなく、あまりが出にくいようにしているだけなので、柄の都合などがある場合は、好きな向きで作ってください」

「はい」


昼休みに、イリスとユメとキボウも布を選んできていた。

イリスは、大柄な花柄を2種類で、ユメが西瓜柄とかき氷柄で、キボウが樅木(もみのき)メインのクリスマス柄2種類だった。

全員が、かぶるだけのバッククロスタイプを希望し、ユリは現時点で、16着作ることを約束したのだった。


「丈の決め方は、胸当ての高さから布を持ち、欲しい長さを計ります」

「あれ、この布だと丈が足りないかも」

「あまり長すぎるのも使い難いわよ?」

「布の向きを変えることにします」


殆どの布は、120cm×100cm、もしくは、90cm×150cmにカットされている。ユリはたくさん持ち込んでいるのだ。他に、エプロンには向かない生地もたくさん有り、それらは、一巻きずつある。


「縫い代は、1.5cmくらい、2cmでも良いわよ」


リラはノートにメモをしていた。


「真っ直ぐに縫うなら、真っ直ぐにカットするし、角を作らないようにカットするなら、この角の部分に丸みを持たせます」


ユリは折り紙をカットし、大まかな形を説明した。絵で説明するよりも、相手に正確に伝わる。


「この切り抜いた布を使って、ポケットを作ります」

「あ、ポケット! 成る程この部分なのですね」


「こんにちは。あれ?何してるんですか?」

「お邪魔致します。こちらは、布で何か作られるのでしようか?」


ユリとリラが作業台に布を広げ話していると、シィスルとマリーゴールドが訪ねてきた。


「エプロンが足りないから新調しようと思ってね」

「もしかして、皆さんのエプロンは、ユリ様が作っているのですか!?」

「もしや、ユメ様が使っていらっしゃる、あの可愛らしいエプロンでございますか?」


シィスルとマリーゴールドが、わりと早口で尋ねてきた。


「そうよ。リラちゃんから見せて貰ったこと無いの?」

「あー、ユリ様、二人に会った頃、既に私は背が、」

「あ、そうね。あれ、私と同じサイズで作ったから、今ではかなり小さいわね」


当時150cm無かったリラは、現在170cm程ある。


「リラさんが小さい頃のエプロン・・・」

「私よりも少し小さかったのよ。13歳の頃はね。世界樹の森に行った翌日に会ったときは、この身長だったけど」


横目でリラを見上げながら、ユリはぼやいていた。


「羨ましい」


シィスルが呟いた。


「シィスルちゃん、エプロン欲しいの?だったら休憩室に布が有るから選んでらっしゃい」

「ありがとうございます!!」


食いぎみにお礼を言うと、シィスルは走っていってしまった。


「ユリ様!(わたくし)もよろしいでしょうか?」

「マリーゴールドちゃんも欲しいなら、一緒に選んでらっしゃい」

「ありがとう存じます!」


常に行動が落ち着いているマリーゴールドが、珍しくウキウキとしていた。


「なんだか、珍しいわね」

「シィスはともかく、マリーがはしゃいでいるのは、珍しいです」


暫くして、シィスルは牛の模様柄とキリンの模様柄、マリーゴールドは、ファンシー調のユニコーンや虹などが描いてある柄と、ピンク地に星やハートが描いてあるキラキラな感じの生地を待ってきた。


ユリは三人に布のカットを教えると、理解したらしいマリーゴールドは、一つ持ち帰り手縫いで仕上げて参ります!と言って、張り切っていた。


リラたちが、全員分の裁断までしてくれたので、ユリは縫うだけで良くなり、だいぶ楽になった。20着は、ミシンを使うユリでも大変である。


「さあ、夕飯を作りましょう」

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