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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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品種

「おっはようございまーす!」


予想通りというか、予想外というか、リラはとても早く来た。


「ちょっとあなた、まだ8時前よ?時計見間違えたの?」

「ノートを書きに」


なぁんだ。ノートを書くのね。


「それなら、良い、わけないわ!あなた最近ノートなんか書いていないじゃない」

「あはは」

「こんな時間から、何しに来たの?」


リラは少し真面目な顔になって、話し始めた。


「シィスが巻き寿司で、マリーがパイなので、私の希望も聞いてもらえるのかと」


そんな切実な感じに訴えなくても、何でも教えるのに。


「私にできることなら、いくらでも教えるわよ?」

「では、(かさ)があって、安く売れるお菓子ってないですか?」

「何に使うの?」

「お店の持ち帰りに使ったり、お祭りに提供したりです」

「うちのお菓子は食事より高いものが多いものね。前にユメちゃんから貰ったと思うけど、きな粉棒とか、ラムネは?」

「ラムネは作り方を教わりましたが、きな粉の方はわかりません」

「簡単だからそれ作る?」

「これも教わりたいですが、他にはありませんか? アラレのお餅って、高いですか?」


アラレっぽいものが良いのかしら?


「安くはないわね。具体的に、どのくらいの価格で出したいの?」

「100(スター)以下です」

「アラレ100(スター)以下じゃ、見栄えしないわね。そういうのなら、ポップコーンでも作る?」

「どんなものですか?」

「たぶんあると思うから探してくるわね」


ユリは2階に行き、戸棚からポップコーンの種を持ってきた。


「あ、これ賞味期限過ぎてるわ」


それはそうである。転移した時に持ってきたものは、長期保存缶詰等以外、賞味期限切れなのだ。未開封ではあるが、ちょうど6年前に用意したものだ。


「ダメなんですか?」

「まあ、食べなければ、作り方の説明だけするわよ」

「はい」

「手持ちのなるべく軽い大きな鍋に、底に重ならない程度に入れて、油を入れて、蓋をして、火にかけて、ずっと揺すりながら、音があまりしなくなるまで頑張ったら出来上がりよ」

「え、それだけですか?」


リラがポップコーンの種をまじまじと見ていると、キボウが来た。


「たね、うえるー?」

「あら、キボウ君。これはお菓子にするから植えないわ。あ、そうだ、これ、植えたら芽が出るの?」

「キボー、みる?」

「お願いします」


キボウはポップコーンの種を選り分けてくれた。


「◯△□※▼ー」


キボウは何か呪文のようなものを唱えながら作業していた。そして、分け終わったらしい。


「ダメー。だいじょぶー」


左がダメなもので、右が大丈夫らしい。ダメなものが1/3くらいある。


「大丈夫なものを少しだけ植えましょうか?」

「キボー、うえるー!」


キボウは、何粒か持って、行ってしまった。


「ダメだと言われたのは捨てて、大丈夫と言われたもので、実際作ってみましょう」

「はい!」



ポップコーンを作っていると、少し慌てたユメが階段を下りてきた。


「何があったにゃ!?」

「ユメちゃん驚かせてごめんなさい。ポップコーンを作っているのよ」


バンッバンッと、かなり大きな音がする。

ユリが鍋を揺すり続け、音が少しくぐもって来た頃、火を止めた。


「さあ、できたわ。こんな感じよ」


ふたを開けると、鍋にたっぷりとポップコーンが入っていた。


「あ!これ知ってる!」

「あら、知っていたのね」

「あ、いえ、作り方は初めて知りました。こんなに簡単だったんですね。って、どうしてこうなるんですか?昔試したけど、こうならなかったんです」

「試したって、普通のコーン?」

「え、もしかして専用のがあるんですか?」

「料理に使うコーンと、ポップコーンのコーンは、品種が違うのよ」

「そんな理由だったのかぁ。あああああ」


長年の疑問が解けたらしい。ポップコーンは、ポップ種や爆裂種と呼ばれる品種でしか作れないのだ。


「出来上がってすぐ、塩を振れば良いわ」

「はい。他に甘いものは何かありませんか?」

「キャラメルポップコーンでも作る?」

「糖化クルミとか、甘いヒナアラレみたいのなですか?」

「その理解で合っているわ」


ユリはさっと、フライパンで生クリームと砂糖を使いキャラメルソースを作り、できあがっているポップコーンを絡めた。


「マーブル台にあけるから、適当に離してくれる?」

「はい!」

「手伝うにゃ!」


リラはそのまま、ユメは新しい炊事用の手袋をして、手伝ってくれた。


(あつ)!」

「ユリ様は無理しないでください」

「ユリも手袋したら良いにゃー」


ユリが熱いものを触るのが苦手なのを皆に把握されていた。


「いつ食べられるのにゃ?」

「ユメちゃんごめんなさい。これ、賞味期限が4年過ぎているのよ」

「にゃ!?」


ユメが唖然としていると、キボウが戻ってきた。


「キボー、きたー」

「キボウ、どこに行っていたのにゃ?」

「はたけー」


「キボウ君、とうもろこし植えたの?」

「うえたー」


一応聞いてみようとユリは思った。


「ねえキボウ君、これ、食べられる?」

「だいじょぶー」


発芽するといわれたものだけ使ったが、まだ少し心配だ。


「何か呪文を唱えていたわよね?何の呪文?」

「ときもどしー」


解き戻し? いえ、時戻し!?


「コーンの時を、植えて芽が出るように戻したの?」

「あたりー!」


「食べてみて良いにゃ?」

「はい、どうぞ」


リラとユメとキボウが一斉に食べ出した。


「美味しい!なにこれ!」

「美味しいにゃ。初めて食べたにゃ」

「おいしー、おいしー!」


3人は、食べ続けていた。


「あと引く味!」

「止まらないにゃ」

「おいしー、おいしー!」


あ、不発だった残った種は、噛ったら固いわよ?

とうとう最後まで食べ尽くしていた。


「それでどうする?種、買ってくる?」

「おいくらですか?」

「1kg で、500(スター)くらいね。使う量はさっき見たでしょ。しっかり食べる感じでも、一人前20~30gくらいよ。こちらにもあるなら、それを購入すれば良いし、とりあえず買ってきて使えば良いわ」

「では、お願いします!」


ちょうど食べ終わったところに来たソウが、俺も食べたかったと言って、すぐに買いに行ってくれた。

ユリの台詞で、油を入れる前に蓋をしていたのを、修正しました。

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