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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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即席

夕方ごろ、追加分も全て作りおわり、明日の分迄も少し作り、厨房はやっと余裕が出来た。夕食も温めるだけになっている。


「マリーゴールドちゃん、何か作ってみたい希望とかある?」

「はい。リーフパイとマロンパイを作り食べてみたく思います」

「仕込みだけ今日やって、明日仕上げ見に来る? それとも、今日、仕上げだけやってみる?」


ユリの言った意味がいまいち良くわからないと、マリーゴールドは、首を傾げていた。


「あの、仕込まずに仕上げが出来るのですか?」

「焼くだけになったパイ生地が売っていてね、お店に使うのでなければ、試作品に使うには良いと思うのよね」

「ユリ様のご都合に従います」

「なら、冬ではないので、パイシートを買って来ましょう」


既に気温が高く厨房が暑いので、この時期はパイの仕込みには向かないのだ。


「オレ行ってくるよ」

「ソウ、ありがとう」


先ほど戻ってきて、マーレイと一緒にガラス容器を洗っていたソウが、買いに行ってくれるらしい。ユリは必要量をソウに頼んだ。


「では、ホワイトシチューも作ってしまいましょう」

「ホワイトシチューでございますか?」

「シィスルちゃんと、ポットパイを作る約束をしたからね」

「それはもしや、シチューの上にパイがのっていて、スプーンで崩していただくものでございますか?」

「あら、食べたことあるの?」

「いえ、リラさんからお話だけ伺いました。とても楽しみでございます」


野菜類は小さめにカットし、急いでシチューを仕込んだ。

煮込んでいる最中にソウが戻り、先にリーフパイの作り方を教えるのだった。


「5mm厚程度の、薄く伸していないパイを、菊型で抜きます」

「どの型を使いますか?」


菊型は、たくさん大きさがあるのだ。


「型の大きさが葉っぱの横幅になるので、好みのサイズでどうぞ」


マリーゴールドは、4cmくらいの菊型を使っていた。とりあえずいくつか型抜きし、大理石の台に並べた。気温が高いので、すぐに柔らかくなる。使わないパイは急いで冷凍庫にしまう。


「グラニュー糖を敷いた上で、真ん中から上下に伸します」

「思っていたより難しいです」

「思いっきりやった方が簡単よ」

「はい」


「ひっくり返して、ナイフで葉脈の切り目を入れます」

「葉っぱらしくなってきました」

「少し置いて落ち着かせてから、焼きます。今日は焼くまで冷蔵庫に入れてください」


とりあえず冷蔵庫にしまい、今度はポットパイの用意を始めた。


「マリーゴールドちゃん、ポットパイのシチューの仕上げをするわ」

「はい」


ユリは、ふやかしたゼラチンを加え、シチューを仕上げた。

二人で大きいココットに分け、腕をかざし呪文を唱えた。


「ウカヤキエル」

「ユリ様、何の呪文でございますか?」

「冷却よ。まずは、割れ難い器に入れた水で練習すると良いわ」


冷凍パイシートを少し伸して丸くカットし、卵を塗って器に被せた。

マリーゴールドにも教えながらいくつか作り、何個かは作らずに残しておいた。


「こちらは、このまま冷蔵庫にしまってよろしいでしようか?」

「お願いするわ。シィスルちゃんも作りたいと思うのよね」

「はい」


ソウが買ってきたのは、冷凍パイシートの他、栗の渋皮煮の瓶詰め、こし餡だ。


ユリは、瓶詰めの栗の渋皮煮をザルにあけ、水分を切った。

こし餡を同じ大きさに丸め、オーブンと天板を用意してからパイを薄く伸し、約10cm角にカットし、一旦冷蔵する。

こし餡と渋皮煮をひとつにまとめて丸め、冷蔵したパイを出してきて、パイの縁に卵を塗り、折り畳むように丸めた中身を包み込む。

天板に並べ、しっかり卵を塗り、上に竹串で穴を空け、もう一度冷蔵。

全てが包み終わったら天板に並べ、セットしたオーブンで焼くのだ。


「きつく巻かなくて大丈夫よ。でもしっかり生地同士を貼り付けてね」


全て包みおわり、マロンパイをオーブンに入れた。次はクロッカンだ。リーフパイなどを作ると、パイの切れ端が大量に出る。


「大きいプリンカップ、スライスアーモンド、胡桃(くるみ)を用意して、クロッカンも作りましょう」

「これはもしや、クロ猫ッカンでございますか?」

「あら、知っているの?」

「5年くらい前の冬に、兄のお土産でいただきました」

「一ヶ月半くらいしか売っていないのよ」

「では、(わたくし)はとても幸運だったのでございますね」


作っていると、いつのまにか後ろにユメがいた。


「クロ猫ッカンにゃ?」

「そうよ。ユメちゃんも作る?」

「作りたいけどにゃ。お店が大変にゃ」


ユメは忙しそうに店に戻っていった。


「今食べている人って、何ご飯なのかしらね」

「いつ何時(なんどき)にいただいても、こちらでのお食事は、ディナーではないかと思われます」


一番メインの食事ということ?

ユリはマリーゴールドの誉め言葉に照れてしまった。


「マリーゴールドちゃん、ありがとう」



「こんにちはー!」「ユリ様ー!」


リラとシィスルが来たようだ。だがまだ17時過ぎだ。


「あなたたち、お店(ベルフルール)は大丈夫なの?」

「注文締め切りましたので、あとは片付けだけでーす」


どうやら、こちらで持ち帰り弁当を売っている影響で、ベルフルールは()いているらしい。


「マリーから、ポットパイを作っているとお知らせが来たので、参加しに来ました」

「私も作りたいです!」


早速、シィスルはマリーゴールドに聞きながら作っていた。


「パイ、いつ仕込んだんですか?」


リラの疑問は当然である。


「このパイ生地は、ソウが買ってきたものよ.、時期的に、この厨房で仕込むのは、大分大変そうだからね」

「ユリ様の故郷は、この時期、まだ暑くないのですか?」


エアコンを、何と説明したら良いかと、ユリは考えた。


「ミキサーを動かしているのと同じ、電気の力で、涼しい部屋があるのよ」

「お部屋が冷蔵庫なんですか!?」

「冷蔵庫ほどは冷やさないけど、考え方は合ってるわ」


実際、洋菓子屋のパイを仕込む部屋や、生菓子を扱う部屋は、真夏でも14~15℃程度で、かなり涼しいのだ。アイスクリームを作る部屋などは、本当に冷蔵庫の部屋の中だ。


「それなら、アイスが溶けないように慌てたりしないのですね」


リラが懐かしそうに呟いた。あの頃、暑い部屋でいかにアイスを溶かさないように手早く詰めるかで、色々大変だった。


「ここも、エアコン入れたいわね」


ユリがボソッと呟くと、ソウが答えた。


「入れるか?」

「え?電気、大丈夫なの?」

「カナデが秤を改良しただろ?今使っている冷蔵庫と冷凍庫を魔鉱石兼用にすれば、足りるぞ」

「是非お願いします!」

「カナデに言っとくよ」


この家の電気の主な使用量は、業務用冷蔵庫と冷凍庫なのだ。


「うわー、ユリ様、その何かを入れるとどうなるのですか?」

「部屋を涼しくしたり、温かくしたりできるのよ。まあ、温かくは必要ないと思うけど」


厨房は、ほぼ常に暑い。

又、ユメが来た。


「ユリ、今日分売り切れたにゃ。あの作ってたのは売らないのにゃ?」

「どのくらい希望者がいるの?」

「まだ、10人くらいは並んでるらしいにゃ」


整理券のない持ち帰り希望者が、並んでいるらしい。


「足りそうなら売って良いわ。このあと来る人には断って、明日来るように言ってください」

「わかったにゃ」


17:40を過ぎたので、お店も注文を締め切ってあり、お店を覗くと、ユメが一人で対応していた。イリスとメリッサは、外の持ち帰りを手伝っているらしい。


「外の販売は、お母さんとメリ姉が担当なんですか?」

「外には、イリスさんと、メリッサさんと、イポミアさんがいるわよ」

「え?」


リラがマリーゴールドを見ると、マリーゴールドが頷いていた。


「リラさんのお知り合いのかただと思われます」

「イポミアって、ミア姉? 私ちょっと見てくる!」


リラが慌てて外に行ってしまった。


リラちゃんより年上なのかしら? 

ユリはのんきに考えていた。


「マリーゴールドちゃん、ご飯の用意しましょう」

「はい」


温めるだけなので、すぐに食べられる。


リラは、イポミアと話しながら戻ってきた。


「うー、ミア姉にまで、先を越された」

「あはは、リラ、少し見ない間に大きくなったね」

「ミア姉が縮んだんだよ!」

「そんな訳ない」

「明日も来るんだよね?」

「たぶん?」


リラとイポミアがこちらを見た。


「イポミアさんが続けてくれるなら、頼む予定よ?」

「是非お願いします!明日は何時から来れば良いですか?メリ姉は、9時に来ていると聞きました!」

「配膳だけするなら12時までに。その他手伝うなら9時以降に来てください」

「9時に来ます!」

「はい。疲れない程度に頑張ってください」


このあと、年齢を聞くと、イポミアは、20歳だといっていた。リラとシィスルがベルフルールに戻り、皆で夕食を食べて解散した。

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