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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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配達

手の空いたマリーゴールドが、サクラムースの仕上げを見に来た。


「朝顔型のガラス容器の上に、半球型をのせます。凍っている場合は、接続部分に、ほんの少しだけ生クリームを絞っておくと、ずれて動いたりしません。全て形にしたら、桜の絞り口金を使い、薄ピンク色の生クリームを絞ります。上には、桜の花弁(はなびら)形に抜いたゼリーをのせてください」

「とても可愛らしい仕上がりですね!」

「半球型をのせてあるのを先に使って仕上げてください。予定は500個です」

「はい」


「ハナノ様、ハナノ様」


店から呼ばれた。まだ客はいないので、外で券を配っている二人のどちらかだと思われる。


「はーい」


ユリが顔を出すと、心配したのか、ユメもついてきた。


「どうしました?」


見たことのない、恐らく貴族の従者と思われる人が後ろに立っていた。


「あの、こちらのかたが、どうしても7つ欲しいとおっしゃるもので」


見たところ、一人で来ているようだった。服装は、メイド風の女性だ。女性が買い物に来るのは、とても珍しい。しかも一人だ。


「お一人でいらしているのですか?」

「はい。急遽、使いで参りました。いくら出しても構わないから、7つ入手してきて欲しいと、奥様から頼まれております。どうにかならないでしょうか?」


ユリがどうしようかと悩んでいると、ユメから袖を引っ張られた。


「ユリ、ソウみたいに手数料取って、私が届けるにゃ?」

「え、ユメちゃんそれで良いの?」

「馬車で来ているなら、キボウにも手伝ってもらうにゃ」

「キボウ君に聞いてみましょう」


さっと、ユメが聞きに行き、ユメはキボウをつれて戻ってきた。


「大丈夫にゃ」

「キボー、てつだうー」


「家はどこなのにゃ?」

「は、はい!」


メイド風の女性は、ユメに詳しい名前などを名乗り、場所の説明をしていた。どうやらここから1時間くらいの距離らしい。


「ちょっと待っててにゃ」


ユメは奥に行き、少しして戻ってきた。


「ユリ、出来ているのを持ち出しても良いにゃ?」

「11時前かぁ。まあ、良いわ。城にも先に渡しているものね」

「ユリ、いくら取れば良いのにゃ?」

「持ち帰り半鶏丼は、600(スター)よ。サクラムースは要らないのかしら?」


メイド風の女性を見ると、質問してきた。


「そちらは、本日のお菓子でございますか?」

「そうよ。今日、明日の新作よ」

「可能でございましたら、8つお願い致します」

「大丈夫よ。って、8つ?鶏丼は7つで良いの?」

「はい」

「少し用意してくるわね。ユメちゃん厨房へ来てください」

「わかったにゃ」


ユメをつれて厨房へ行き、ユリは8個ずつと、パウンドケーキを渡した。


「食べない人が、さっきのメイドさんなら、ユメちゃんからと言って、鶏丼のもう一つは差し上げて良いわ。サクラムースは、700(スター)よ。あとね、女性が一人で来ることになった理由が、他の人の病気だったら、病気の人に、『女神の慈愛・パウンドケーキ』を、食べさせてね」

「わかったにゃ!」


ユメはキボウをつれ、転移していった。

即キボウだけ戻ってきて外に出て、馬車とメイド風の女性をつれていった。


ユリは厨房に戻り、サクラムースの仕上げを急いだ。

時計が11時を指した。


「マーレイさん、外の二人と少し代わってもらえるかしら?」

「かしこまりました」

「ユリ様、私も行ってきてもよろしいでしょうか?」

「はい。イリスさんもお願いします」


知り合いの二人が、一人で食べることになるのは寂しいだろうと、イリスも整理券配布を手伝ってくれるらしい。


「メリッサさん、2人前、用意してもらえるかしら?飲み物は、好きなものを頼むように伝えてね」

「はい」


ユリは鞄から、鶏丼を2人前取り出した。メリッサが、カトラリーと共にトレーにのせ、店に持っていった。


「あれ?皆、居ないの?」


ソウが、仕事が終わったのか、2階から下りてきた。

厨房に、ユリとマリーゴールドしか居ないので、不思議に思ったらしい。


「メリッサさんは、お店にいるわ。マーレイさんとイリスさんは、整理券配布の交代で外にいるわ。ユメちゃんとキボウ君は、鶏丼をもって、メイドさんを送っていったわ」

「成る程。俺、手伝うこと有る?」

「忙しいなら無理しなくて大丈夫よ」

「あ、いや、仕事終わったから、暇になったよ」


何を頼んだら良いかと、ユリは考えてみた。


「鶏丼の盛り付けか、サクラムースの仕上げか、クッキーの仕込みかしら」

「サクラムースの仕上げって、俺でもできるの?」

「試してみて無理そうなら、自分で食べて消費すれば良いと思うわ」

「なら、やってみるよ」


横でマリーゴールドが仕上げをしているので、見本には困らない。


「その生クリームはさすがに無理そうだから、俺が花弁のゼリーをのせるのでも良い?」

「ありがとう。助かるわ」


桜形に絞る生クリームは、無理だと判断したらしい。


メリッサが厨房に来て、ジンジャエールを作っていた。


「二人のリクエストは、ジンジャエールなの?」

「はい。なので、私が作りました」

「メリッサさん、ありがとう」


飲み物は、手が空いていれば、作ってくれる。厨房でないと作れないのは、ココア、アイスココア、冷凍イチゴミルク、ホットミルク等の調理の行程があるものだ。


後ろに人の気配がした。

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