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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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清青

「今日のランチは、袋サンドイッチです。他に、鶏のチューリップ唐揚げと、ブロッコリーの唐揚げと、アスパラの串揚げがあります。冷たいスープの他、飲み物は冷茶があります」


ユリは、大皿の揚げ物の他、袋サンドイッチやお茶やスープを5人前取り出した。


「ユリ様、なぜ、スープカップが5人分有るのですか?」


リラは、サンドイッチはともかく、他のおかずなどは、自分の分はないだろうと考えていたのだ。


「うふふ。予知した訳じゃないわよ。いくつかカップに入れて鞄にしまってあるだけよ。だから、まだあるわ」


驚くリラを見て、なぜか、ユメが笑っていた。


テラスからは、長い房の紫色の藤の他、まだ咲き始めの白い藤が見えた。他にも、房は短めだが、一つ一つの花がかなり大きめのピンク色の藤も見える。


皆、サンドイッチから、食べ始めていた。


「ユリ、美味しいにゃ!」

「おいしー、おいしー」

「旨いな!さっき見ていて、早く食べたかったよ」

「食べる前から美味しそうだったけど、やっぱり美味しいですね!」

「みんな、ありがとう。シィスルちゃんと、マリーゴールドちゃんにも差し入れしてきたからね」

「ありがとうございます!」


ユメがおかわりしたいらしく、尋ねてきた。


「ユリ、何個作ったのにゃ? まだあるにゃ?」

「食パンで4斤分、サンドイッチとして、40個よ。でも、ちょうど半分配ったわね。みんな、合計4個まで食べられるわよ」

「おかわりするにゃ!」

「キボーも、キボーも」


ソウも食べるかと思ったのに、何も言わないので、不思議に思ったユリが横を見ると、ソウはニコニコと、皿ごと寄せた鶏のチューリップ唐揚げを食べていた。山盛りあったはずが、かなり減っている。ソウの皿には、チューリップの茎が山盛りだ。


「ユリ様、私もいただいて良いですか?」

「はいどうぞ。揚げ物も食べてね」


リラに袋サンドイッチを渡し、頼まないソウをじっと見ていると、気がついたのか、慌てていた。


「ユリ、どうした?」

「サンドイッチはもう要らない?」

「え?食べるよ。なんで?」

「渡して良い?」

「うん。ありがとう」


ユリがソウに話しかけている間に、ユメが皿ごと引っ張って、揚げ物を丸テーブルの中央に戻していた。


全て食べ終わったところで、預かっていたサクランボを取り出し、配った。


「えーと、11個かぁ。なら、どうせ持ち帰るのでしょ?あなたにあげるわ」


ユリがリラに3つ目を渡した。


「キボー、たべるー!」

「キボウ君、食べたいの?」


リラが、気を使ってキボウに渡そうとした。

リラを制止し、ユリは自分の分からキボウに分けた。


「はい。どうぞ。キボウ君」

「ユリ、ありがとー」


「なんだ、なら俺は」


ソウは、ユメに1つ渡し、ユメとキボウとリラに3個ずつ、ユリとソウが1つずつになった。


「ソウ、良いのにゃ?ありがとにゃ!」


「リラちゃん、持ち帰るなら、このケースごといる?」

「ありがとうございます」


リラは食べずに、全て持ち帰るらしい。

ユリは鞄からドラゴンフルーツを出して、皆に配った。


「それ食べたら、次に行きましょう!」



屋敷の外に出て、ソウがユリを先に連れていこうとしたら、キボウに阻まれた。


「キボー、さきー」

「キボウを先に連れていくのか?」

「あたりー」


主張しているので、とりあえずその通りにした。

ソウがキボウを連れ転移すると、即戻ってきたキボウが、ユリ、ユメ、リラを連れ転移した。


「うわ。ビックリした。来たと思ったらキボウいなくなるし。皆を連れてきてくれたのか。キボウ、ありがとう」

「キボウ、役立つのにゃ」

「キボー、やくだつー、キボー、やくだつー」


「キボウ君は、どこでも制限がないのね」

「キボウ君、ありがとうございます」

「よかったねー」


そして皆は辺りを見回した。


「うわー!空まで届く、柔らかく清らかな青。これはネモフィラですか?」

「そうね。ネモフィラね」

「ネモフィラ、ネモフィラー」


小高い丘の全てが、ネモフィラで埋め尽くされていた。


「凄いにゃ。何処まで有るのにゃ?」

「なんでも、500万株植わっているらしいよ」


500万株?全員が、多すぎる数字に理解が及ばない。


「数字で言われても、全くわからない数ね」

「その丘を上って、 見渡したら良いよ」


近くまで行くと、人が通れるように、小径(こみち)がある。皆で連なって、丘の上まで登った。


「木とガゼボと空しかない。あとは、ネモフィラだけ!」

「凄いわね。壮観ね」

「何処までも青いにゃ!」

「あおーい、あおーい」

「空との境まで、ネモフィラなんだな」


見渡す限り、ネモフィラが咲いている。向こうに見える丘の上にガゼボがあり、所々に木があり、他に目に映るものは、青い空と、ネモフィラだけだ。


「すわるー!」

「ガゼボまで行ってみるにゃ!」

「そうね。行きましょう!」


ガゼボに座りたいらしいキボウが、走り出した。


「慌てて転ぶなよー」

「あのガゼボ、ネモフィラの海に浮かぶ小舟のようですね!」


なら、木はなんだろう?

ソウは、後ろにいるリラの言葉を疑問に思ったが、あえて突っ込まなかった。


実際の低年齢層は居ないはずなのに、子供の集団がはしゃいでいるように見える。

まあ、自称4歳と自称1歳ばかりなので、本当に一番若いはずのリラ18歳は兎も角、背が小さい組は、はた目には子供に見えるのだ。


ガゼボの前につくと、ユメが不思議そうにし、ユリが喜んだ。


「テーブル、ガタガタにゃ?」

「うわー!このテーブル、ネモフィラになってるわ!」

「みるー、みるー!」


ガゼボに入るには、一段高くなっており、中心にテーブルがあり、上から見ると、ネモフィラを(かたど)り、色をつけてあった。テーブルの上にはガラスがのっている。五角形らしき建物の内壁の模様にもネモフィラが描いてある。

ユリは、視線が低く見渡せないキボウを抱き上げ、テーブルを見せた。


「ネモフィラー、ネモフィラー!」


ゆっくり歩いてきた、ソウとリラが到着した。


「なにやってるの?」

「キボウ君にテーブルを見せていたのよ」


テーブルと内壁を見たソウが、疑問を呈した。


「すぐそこに本物があるのに」

「でも素敵でしょ?」


「咲いていない時期にいらしたお客様のためにでしょうか?」

「成る程にゃー」

「すてきー、すてきー」


リラがキョロキョロし、悩んでいるのが見えた。


「リラちゃん、ネモフィラも描く?」

「良いんですか?」

「では、このガゼボが見える場所限定で、自由時間にしましょう」

「ありがとうございます!」

「私も見て回るにゃ!」

「キボーも、キボーも!」


3人は、良い位置取りを探すために、行ってしまった。

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