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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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挨拶

自由行動のあいだ、ユメとキボウは、世界樹の森に行ってくるらしい。

ユリは、袋サンドイッチを6組ずつ渡した。


「ユメちゃんとキボウ君は、食べずに戻ってきてね。1時間位を目処によろしくね」

「わかったにゃ」

「わかったー」


二人は転移していった。


「ユリ、挨拶に一緒に行く?」

「私が行って、面倒なことにならない?」

「離宮の管理は基本的に、領地の前侯爵(公爵)だから、(わきま)えないのは居ないと思うけど、大仰(おおぎょう)に歓迎するのは居るかもしれないな」


ユリは、派手な歓迎の様子を少し想像してしまった。


「うわー。嫌かも・・・。ソウって、偉いわよね。ちゃんと礼儀作法とかも知ってるし、結構な人数と顔見知りだし」

「まあ、16歳から居るからな」

「部活動が忙しいとか言っていた頃、本当はこっちに来ていたのね」

「本家のゴタゴタでめんどくさかったからな。高校生は、一番ユリに会わなかった時期だな」

「私も中学生で、部活のブラスバンドが忙しかったわね」


3月生まれと4月生まれのため、学年で3歳違う。二人とも、同じ中高一貫校に通っていたが、ソウは通年首席で、ユリはごく普通の成績だった。ソウに一目惚れした、高校からの途中組の生徒数人から、ユリは酷い嫌がらせを受け、少しソウから離れていたと言う事情もあった。


ユリのブラスバンドは中学生の時だけで、高校生になってからは、寿(ことぶき)夫妻の洋菓子店で、アルバイトをしていた。ユリの予定では、両親が経営する洋食屋で、デザートを担当するつもりだったので、勉強をかね、洋菓子店でアルバイトをしていたのだった。なので、売り子ではなく製造だ。


ユリが高校生になり、ソウとソウの同級生が卒業し、大分回りが落ち着いたが、ユリが高校を卒業する直前の冬に、ユリの両親は事故で亡くなってしまい、ユリは進学を諦め、両親が残した店を継ぐために、有名レストランに就職したのだった。


調理を担当し、2年間働けば、調理師免許が受験できる。

本来、最短2年で済むはずのところ、ホール担当に回され、3年近く頑張ったが環境を改善されず、上層部に抗議したところ、調理師免許に受かれば、調理担当に変えると言われ、いきなり受けたが、やはり落ちた。

独学で勉強し、翌年も受験し、見事合格したが、約束を守られなかったためレストランを退職した。ユリの調理経験は、実質、子供の頃からの両親の手伝いだけだ。両親の店のメニューは一通り作れるが、外で調理の修行をしたことはない。


23歳になったばかりの春、両親の店を復活させたが、経営に疎いユリは、開店して1年半ほどで悪徳業者に騙され、店を失うことになったのだった。


そんなこんなで、この国に来ることになったのだが、まさか、一番偉い人になる予定などなかったので、人から(かしづ)かれるのには慣れないのだ。


「先触れ出しておくよ」

「あ、うん。お願いします」


ソウが先に行き、歓迎や堅苦しい挨拶は不要と、伝えてきてくれた。


戻ってきたソウと離宮へ訪問すると、仕事中の使用人たちは、一旦停止して頭を下げはするものの、すぐに仕事に戻り、前侯爵夫妻も「御越しくださいまして、ありがとうございます」と立って挨拶したあとは、すぐに席につき、歓談に入ってくれた。

ユリの店に食べに来たことがあるらしく、使用人共々、ユリの性格が気さくだと理解していたらしい。


「ハナノ様、昼食はどうされるのですか?」

「持参で来ていますので、食べる場所だけ提供してください」

「では、藤が見渡せるテラスをご用意いたします」

「どうもありがとう」


聞いても良いかどうかと、迷っているような()振りをしていたので、ユリから聞いてみた。


「なにか、質問がありましたか?」

「はい。因に、何をお召し上がりになられるのですか?」

「メインは袋サンドイッチです。よろしければどうぞ」


ユリは、一組取り出した。


「こっちが、アボカド、フルーツトマト、サラダチキンをコブサラダドレッシングで和えたもので、こっちが、ベーコンエッグをとろけるスライスチーズで挟んだものです」

「ありがとうございます。お店のメニューでございますか?」

「お店では出したことはないです」

「なんと!いただいてもよろしいのですか!?」

「どうぞ。あ、奥様にもどうぞ」


ユリはもう一組取り出した。


「ユリ・ハナノ様、有り難う存じます」

「どういたしまして。名前、ユリで良いですよ」

「ユリ様、有り難う存じます」


少し年配の女性なので、昔ながらの丁寧すぎる言葉遣いのようだ。とても感激しながら、美味しそうに袋サンドイッチを食べていた。

手土産のパウンドケーキを渡し、世間話などをして過ごした。


歓談し、1時間弱経った頃、ユメが一人で現れたらしい。


「黒猫様が、お一人でお迎えにいらしています」

「なら、私たちは絵を描いている弟子を迎えに行って、テラスをお借りすることにするわ」

「かしこまりました」


そのままテラスに案内してもらい、転移してリラを迎えにいった。キボウは、リラと一緒に待っていた。


「リラちゃん、絵は描けた?」

「はい!ありがとうございます!」

「キボウ君、リラちゃんと待っていてくれて、ありがとう」

「キボー、まったー」

「お昼ご飯を食べるから、移動するわよ」

「はい」「わかったー」


テラスに転移し、皆でお昼ご飯を食べることになった。

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