見送
「ユリ、外を確認してきても良いにゃ?」
「水やり?」
「チューリップとバタフライピーとローゼルに、水やりしてくるにゃ」
「一緒に手伝うわ。何時も任せちゃってるからね。どうもありがとう」
「俺も見に行くよ」
結局、全員で畑を見に行くことになった。
キボウが植物の様子を見ながら、ユメに、水の量などを次々指示していた。
「すこしー、いっぱいー、えいよー、すこしー」
「待つのにゃ、栄養が足りない鉢の水はどうするにゃ?」
「いっぱいー」
「これは、私たち役立たないわね」
「キボウ、凄いな」
役立ちそうもないので、空いているじょうろに、水を汲んでくる手伝いだけをした。
「おはようございます。皆さんお揃いで、畑の世話ですか?」
「あら、リラちゃんおはよう。どうしたの?」
「細工寿司の本を借りたのを置いて行ってしまったので、取りに来ました」
「これから出掛けるから、倉庫側から出入りしてくれる?」
「はーい。どこに行かれるんですか?」
「花見よ」
「へえ!素敵ですね」
リラは、休憩室から細工寿司の本を持って戻ってきた。
「リラも一緒に行くにゃ?」
「いっしょ、いっしょー」
「私もご一緒して良いのですか?」
「構わないわよ。あなたもお休みなんでしょ?」
「ありがとうございます!本を置いて、少し着替えてきます!」
リラは全速力で走っていった。80mくらいある。
わ、若いわ。
ユリは感心した。
「ソウ、私を先に連れていって、一緒に戻ってきましょう」
「あー、成る程な。それで、俺がユメとキボウを連れて、一緒に行くのか」
ソウは、ユメとキボウに何か告げてから、ユリをどこかの庭園の前に連れてきた。とりあえず、花は見えない。
[oiaroino oi olicine]と、文字が消えかけ、かなり読み難くなった看板に書いてある。きちんと読み取れないためか、文字が翻訳されなかった。
オイアロイノオイオリシン?って何かしら?
「場所覚えたら、戻るよ」
「はーい」
ソウが転移で戻ったのは、店の横ではなかった。
あら?と、辺りを見回すと、そこは、ベルフルールのそばだった。
「ユリ、お帰りにゃ」
「おかえり、おかえりー」
「ただいま。ソウ、頭良いわね!」
「リラが死ぬ気で走ってたからな」
「確かに」
どうやら、転移前にユメとキボウに告げていたのは、この場所に戻ってくると言う打ち合わせだったらしい。店の前で待てば、着替えたリラは、再び全速力で走ることだろう。
少し待つと、慌てふためいた様子のリラが出てきて、皆を見て驚いていた。
「こちらまで来てくださったんですか!?」
「そうしないと、あなた、全速力で走るでしょ?」
「ありがとうございます!」
リラの格好は、シックな感じのワンピースと、布製の袋だった。ユリの服装に合わせたらしい。
ユリも、飾り気のない長めのワンピースを着ている。
「リラさんをよろしくお願いします!」
弟子二人まで、見送りに出てきた。
ユリは、リラの弟子二人に説明することにした。
「遅くとも、夕方までには戻ってくる予定よ」
「はーい」「はい」
何やら弟子二人が、リラを見てニヤニヤしている。
なんだろうと思ったが、リラの慌てぶりが面白いのかと思い、気にしないことにした。
「あ、そうだ。これ、お弁当の、袋サンドイッチよ。おやつにでも食べてね」
ユリは、ユメと話しているリラに見えないように、シィスルとマリーゴールドに、2組渡した。
「ありがとう存じます」「ありがとうございます。やっぱりだ」
二人はにこやかに笑い、持っていた布をかけていた。
「ユリ、先に行く?」
「そうするわ」
「リラ、ユリに掴まって」
「はい!」
ソウに呼ばれ、ユメとの話を止め、リラはユリのそばに来た。
「しっかり掴まってね」
「はい!」
ユリは一足先に、転移した。
すぐあとを、ソウがユメとキボウをつれ、転移した。
500話らしいです。
リラの弟子が笑っていた理由は、「クロネコのユメ」の方で書いています。




