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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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映像

ユリは早起きして、お弁当を作っていた。

おかずを先に作ったあと、昨日の夜に焼いておいた四角い食パンを4(きん)取り出した。

耳に色をつけないように柔らかく焼いた食パンを5枚切りにし、半分にカットし、波刃のペティナイフで耳まで切り抜かず袋になるように開き、パンの表面をオーブントースターで軽く焼いてから、開いた間に具を詰めるのだ。

フルーツトマトとアボカドをスライスし、コブサラダドレッシングで()えたサラダチキンと詰め、出来上がり。ピタパンのようなサンドイッチだ。


次に、ベーコンを刻んでスクランブルエッグタイプのベーコンエッグを作り、とろけるスライスチーズを先に、2つ折りのようにして、同じく切り開いた食パンに詰め、その間に出来たベーコンエッグを詰めるのだ。


「ふふふーん♪」


鼻唄を歌いながらピタパンモドキを作っていると、ソウが起きてきた。


「ユリ、おはよう。何か手伝えることある?」

「ソウ、おはよう。袋サンドイッチを作ってるけど、他に何か希望有る?」


ソウは、ユリの作っているものを見渡した。かなり大量の袋サンドイッチが出来上がっている。


「お!これ、こっちでも作れるのか!」

「ん?どれが作れないと思われていたの?」

「サラダチキン」

「あら、サラダチキンぽいものは、とても簡単よ?」


ユリは、サラダチキンの作り方を簡単に説明した。

鶏胸肉に、粉末チキンスープと、塩と好みのハーブと、少量の酒を、耐熱性のジッパー袋に入れ、茹でるだけだ。時間があるなら半日から1日程、冷蔵庫で置いてから茹でると、更に良い。


「俺でも作れそう」

「作れるわよ。自分で作れば、好きな味に出来るわよ」


ユリは、出来た袋サンドイッチを、全て鞄にしまっていった。


「デザートは、果物で良いかしらね」

「昨日、硝子容器を貰ったときに、これ、預かってきたんだよ」

「なあに?」


それは、真っ赤なサクランボだった。小さめの透明なケースに、10粒くらい入っている。


「え!もうサクランボがあるの!?」

「出始めの高級品らしいよ。あの苺の人から、預かったって」


数が少ないので、あの場では出さなかったらしい。

ユリは受け取り、ケースのサクランボを眺めた。


「出始めなのね。実家(うち)では、高価な出始めの物は買わなかったから、私の認識に無いのね」

「白苺を買ったから、変わった物好きと思われたらしくて」

「成る程ね」


サクランボも鞄にしまい、お弁当の用意が整った。

次は、朝ご飯だ。


「ソウ、朝ご飯は、ご飯で良い?」

「何でも良いよ。ユリが作るものは、何でも美味しいから」

「うふふ、ありがとう」


味噌に漬け込んだ鮭を焼き、味噌汁と玉子焼きとほうれん草のおひたしを作り、ユメを起こしに行った。


「ユメちゃん、朝ご飯食べられる?」

「今行くにゃ!」


ユメは起きていたらしく、元気な声が返ってきた。


ユメを起こしにいっている間に、ソウとキボウが、テーブルに朝食を揃えてくれていた。


「おはよう、キボウ君。朝からお手伝いありがとうね」

「おはよー、おはよー。しゃけー、しゃけー」


キボウは、好きな焼き鮭が早く食べたくて、手伝っているらしい。


ユメも揃い、朝ご飯を食べ始めた。


「この鮭、旨いよなー。普通の塩鮭と何が違うの?」

「おいしー、おいしー」


「これは、味噌漬けよ」

「普通の味噌漬けとも違うよね?」

「なんちゃって、西京漬(さいきょうづ)けだからね」


「なんちゃって最強漬(さいきょうづ)けにゃ?」

「昔ね、貰い物の西京漬けが美味しかったんだけど、全く同じものを探したら、物凄く高価で、仕方なく自分で調味したのがこれなのよ」

「どうやって作るのにゃ?」

「市販の出汁(だし)入り味噌に、粉末の甘酒の素を混ぜて、そこに甘塩の鮭を1日漬け込むのよ。当時中学生で、あまり予算もなかったからね」

「へえ、そんな歴史が」

「西京漬けとは かなり違うけど、私はそれ以来これが気に入っていてね」

「でも、美味しいにゃ!」

「おいしー、おいしー」

「うふふ、ありがとう」


「お店では出さなかったの?」

「そうね。お店では出さなかったわね。名前のつけようがなかったからね」

「そんな理由なんだ」


この鮭は、ソウが向こうで買ってきた甘塩の銀鮭だ。キボウが焼き鮭を気に入り、週に1~2度、朝ご飯に出ている。塩鮭ばかりでは飽きるので、味噌漬けなど、少し変えて出しているのだった。


「ご飯を食べたら、出かけるか」

「何か用意するものはないのにゃ?」

「お弁当があれば、特には無いかな?」


ユメは何か少し考えているようだった。


「ユメちゃん、何か持って行きたい物が有るの?」

「カメラは無いのにゃ? 使い捨てカメラでも良いにゃ」

「え?使い捨てカメラって、なあに?」

「ユリ、知らないのにゃ?」

「うん」


ユリは、カメラを捨てるの?と、理解ができない。


「レンズ付きフィルムの事だな」

「ソウは知ってるのにゃ?」

「実物は触ったこと無いけどな。歴史資料館で見たことはあるぞ」

「今は無いのにゃ?」

「まあ、売っているのは見たことないな。ユメ、写真が欲しいと言うことなら、デジタルスナップを印画紙に焼き付けるのでも良いか?」

「良くわからないにゃ、写真になるならそれで良いにゃ」


ユメには、そもそもデジタルカメラの概念がない。


ユメとソウが話しているので、ユリはキボウに聞かれた。


「なにー?」

「キボウ君、私もわからないわ」


ユリの説明がないことに、キボウが驚いて目を丸くしていた。


「ソウ、結婚式の時のカメラは借りられないの?」

「あれ、リツの私物なんだよ」

「あー、リツ・イトウさんね 。確かに、借りたら面倒そうね。うふふ」

「まー、ちょっと待ってろ。部屋から良いもの持ってくるから」


ソウは部屋に戻り、何かをとってきた。

それは普通の眼鏡に見える。


「ユメ、これ、度は入ってないから、これをかけて1日過ごしてくれ」

「これなんにゃ?」

「これで映像が撮れる」

「にゃ!?」

「うわー。スパイグッズだわ。うふふ」

「あはは」


「ねえ、ソウ。これだとユメちゃんが写らないと思うんだけど?」

「それについては、これがある」


ソウは、身に付けている腕時計を指差した。

時計を見る角度で腕を前に出し「時間か」等、決められた言葉を唱えると、竜頭(りゅうず)の反対側の位置等から画像が撮れる。使用者の側からのみ、狙っている映像が見え、他者からは時計にしか見えない。


うわー、更なるスパイグッズだわ。

ユリは少し楽しくなって、ソウに聞いてみた。


「それ、使ったこと有るの?」

「ここに来るときに持たされたから持っているけど、実用として使ったことはないよ。辞める時に、大分型遅れになったからってそのままくれたから、時計として使ってるよ」


ユメの理解を遥かに越えていたらしい。カワイツバサの時代では、携帯電話すら、一般に普及していなかったのだ。


「時代が進みすぎてるにゃ」

「ユメちゃん、大丈夫よ。私も追い付いていないわ。うふふ」


カメラ問題も解決し、出掛けることになった。

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