完了
カンパニュラのお使いの騎士と入れ替わるように、マーレイが来た。
ユリが時計を確認すると、9:30だった。マーレイの予告より大分早い。
「マーレイさん、飲み物でも飲んで、少し休んでから開始してください」
「ありがとうございます」
マーレイは走って来たのか、息が切れているようなので、少し休ませることにした。
「ユリ、私も手伝うにゃ。何をしたら良いにゃ?」
「海苔巻き巻くなら、藤か外おやつで、巻かないなら、箱の組み立て、違うのがよければ、菊が、まとめるだけで出来上がるわよ」
「それ、作ってみたいにゃ!」
「では、海苔の巻いてある細い玉子焼きを8本、挽き肉入り茶飯の海苔巻きを1本、これらをまとめて一つに巻いてください」
「やってみるにゃ!」
リラは引き続き、薔薇巻きを作っていた。
ハムを並べ、少しまだらにマッシュポテトをのせ、葉っぱに見えるように胡瓜を2つ配置し、まとめる。外側は海苔と酢飯なので、現時点では、これが一番難しいかもしれない。
ユリは、梅用の赤い細巻きを合計250本作る予定だ。
少し休憩したマーレイが、何をしたら良いかと聞きに来た。
「ハナノ様、何をすればよろしいでしょうか?」
「箱を組み立てるか、藤か、外おやつか、梅の細巻きか、もしくは、作ってみたい巻物を手伝うのでも良いですよ」
マーレイは回りを見渡し、進みが遅い藤を手伝うことにしたらしい。合計300本なので、イリス一人では、絶対に終わらない。
全員がもくもくと巻いていた。
10時過ぎ、シィスルとマリーゴールドがやって来た。
「おはようございます」「おはようございます」
「シィスルちゃん、マリーゴールドちゃん、おはよう」
「あれ?皆さんいらっしゃるんですね。というか、もうほとんど終わってるんですか!?」
「みんな早くから来てくれてね。うふふ」
「どこをお手伝してもよろしいのでしょうか?」
「はい。良いですよ。今作っている人は、交代して少し休憩すると良いです」
ユリが超スピードで梅の細巻きを量産し、半分を過ぎた頃、リラが手伝いに来た。薔薇巻きが終わったようだ。
次にソウとキボウが、緑の生春巻を巻き終わり、そのつぎに、ユメが菊を終わらせた。
マーレイが、外おやつのツナマヨ巻きに移り、藤を、ソウとユメが手伝い始めた。
キボウはシィスルに箱を出してきてもらい、組み立ててくれるらしい。
「箱は200組、作ってください」
「わかったー」
色々な巻物を手伝っていたシィスルとマリーゴールドも、箱を組み立ててくれるというので、お願いした。
「そういえば今日のお昼ご飯は、細工巻きを食べますか? それとも、鞄にある他の食事を食べますか?」
「ユリ、鞄に何があるの?」
ソウが、代表して聞いてくれた。
「とろけるチキンカレー、牛丼、カツ丼、親子丼、タコライス、ホットドッグ、ピザトーストユメスペシャル、フレンチトースト、チキングラタン、玉子スープがあるわ。シィスルちゃんとマリーゴールドちゃんも食べていくでしょ?好きなのを選んでね」
「はい!ありがとうございます! 今の一覧で、聞きなれないものがありました。ギュウドンとはなんですか?」
「薄切りの牛肉と玉葱を醤油ベースのタレで煮た丼ものです」
「是非、それを食べてみたいです!」
「えーと、6人前あるから、食べたい人、手を挙げてー!」
手を挙げたのは、シィスル、マリーゴールド、イリス、メリッサ、ユメだった。
「ソウ、キボウ君、マーレイさん、リラちゃんは、どうする?」
「俺は、カツ丼で」
ソウはカツ丼らしい
「キボー、まきまき!」
「ん?今作っている、細工巻き?」
「あたりー!」
キボウは、細工巻きが気に入ったらしい。
「あの、余っているようでしたら、私もギュウドンをお願いします」
「はい。大丈夫ですよ」
マーレイは、牛丼に決まった。
「ユリ様は、何を召し上がるのですか?」
「親子丼を食べようと思っているわ」
「では、私も同じものを!」
リラはユリの真似で、親子丼希望らしい。
巻物のほとんどに目処がたち、ユリはカットを始めた。
「ユリ様、カットを教えてください」
「え、したことなかった?」
「売り物はないです」
リラがカットを聞きに来たので、見ていてわかっていそうだとは思いながらも、教えることにした。
「ご飯粒が包丁につくと、綺麗に切れなくなるので、濡れ布巾で刃を拭きながら、まな板に対し垂直にかまえ、刃を引くように下ろします。ただし潰さないように注意して切ってください。刃がふらつき斜めになると、海苔巻きの断面が斜めになります」
「上手く六等分するコツはありますか?」
「半透明の薄いまな板の下に、均等な線を引いた紙などを挟んでガイドにすると良いです。全て均等ではなく、端の2つが若干大きくなるようにすると、巻きの端の海苔の縮んだ分にバランスが合うと思います。練習で切るなら、外おやつ用を切ってみたら良いわ」
リラと、シィスルと、マリーゴールドが、交代しながら外おやつのツナマヨ巻きで、カットの練習をしていた。
「少し慣れたのなら、藤か梅を切ってみる?」
「どちらがおすすめですか?」
「梅の方は、若干ずれても大丈夫だけど、藤は、ずれると左右の花に段差が出来るわ」
リラたちが藤も梅もカットする意気込みなので、ユリは、外おやつのツナマヨ巻きをカットし、途中で、薔薇と菊も緑も教えるのだった。
「薔薇も菊も、そんなに注意事項はないけど、柔らかいので潰さないようにだけ注意してください。緑だけは、刃物が温かいとゼリーが溶けるので、必ず冷えている刃物を使って切ってください」
カットはユリも手伝ったが、なんと細工巻き300食は、午前中に全て作り終えたのだった。




