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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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売切

売れ行きが気になり、ユリはイリスに聞こうと思い、店に顔を出そうとし、そこで見てしまった。


「カトラリー!」

「あ、ユリ、手掴みは無理みたいにゃ」


殆どの人が、海苔巻きをナイフとフォークで食べていた。

若干いる、手で食べている人は、恐らくご近所の良く見かける人たちだ。厨房から店を覗いていたユリに、気がついたユメが答えてくれた。


「食べ難くないのかしら?」

「手掴みは抵抗有るみたいにゃ」

「え、だって、この国でもパンは手掴みで食べるでしょ? 海苔巻きは、おにぎりと同じようなものなのに」

「ユリが言えば、みんな従うにゃ」


確かに、ユリが言えば、皆従うと思われる。


「強制はしたくないわ」


「ユリは何しに来たのにゃ?」

「あ、売れ行きを聞こうと思って」


ユメは、イリスとメリッサに確かめてきてくれた。


「売れ行き的には、既に半分以上出ているらしいにゃ」

「やっぱりそうなのね。店売り、細工巻きしか出ないものね。トーストとか、飽きたのかしら?」

「限定品から売れるのは、仕方ないと思うにゃ」

「それもそうね。なら、240組作るつもりで、頑張るわ」


ユリが店の出入り口そばから厨房へ戻ると、リラとマリーゴールドが、細工巻きを手伝っていた。丁度お昼休みらしい。


「マリーゴールドちゃんが作りたいのはわかるけど、リラちゃんまで」

「え!マリーは良くて私はダメなんですか!?」

「あなたは明日作るじゃない」

「あ、そういう意味か!」

「手伝ってくれるのは、物凄くありがたいけど、ちゃんと休憩してね」

「はーい」「かしこまりました」


「ユリ様、私が作るので、ベルフルールのみんなに買って帰っても良いですか?」

「構わないわよ。作ってくれるなら、買わなくて良いわ」

「ありがとうございます!」


リラとマリーゴールドは、急いで6人分(巻き物にして10本)を仕上げていた。


「ホシミ様、1本だけ作らせていただいてもよろしいでしょうか?」

「おー、良いぞ。その間、少し休憩するよ」

「ありがとう存じます」


「マリーゴールドー、キボー、てつだうー」

「キボウ様、ありがとう存じます」


ソウが場所を明け渡していた。キボウは引き続き、皮を水でふやかしてくれている。


「お父さん、少し場所借りて良い?」


リラがマーレイに頼んでいたので、ユリが声をかけた。


「マーレイさん、その間休憩したら良いわ。何か好きなもの飲んでね」

「ありがとうございます」


リラとマリーゴールドは、大分慌てて作っているようだった。


「ねえ、リラちゃん。巻き()、要る?」

「はい!お願いします!」


「予備を考えなかったら、いくつ必要?」

「3つお願いします」

「なら、これ。私が予備として持って来た分だけど、差し上げるわ」

「ありがとうございます!」

「予備を欲しいなら、そんなに高くはないから、注文してね」

「はい!」


ユリは倉庫から、洗濯バサミがたくさんついた洗濯物干しハンガーを持って来た。


「洗ったらしっかり乾かさないと、とたんにカビるからね。これに干すと良いわ。これもあげるから、使ってね」

「ありがとうございます!」


厨房でも使っているので、使い方の説明は不要だ。


リラとマリーゴールドは、超特急で6人前を作り、バタバタと帰っていった。


「嵐のようだったわね」

「私がマリーの分を持っていったのを、他の従業員に見られてしまったらしいです」

「あら、それは、悪いことをしてしまったわね。次回から、皆さんの分も持たせた方が良いかしら?」

「何だかんだ、女性が店に食べに来るのは難しいのだと思います」


開店してから店で食べた女性客は、休みの日に招いたアルストロメリア会のメンバーと、旅の途中に寄った家族くらいなのだ。あとは、従業員とその身内だけであり、営業中に食べたことがあるのは、花梨花とシィスルとマリーゴールドだけだ。花梨花は、男装して来ていた。


予定数210組(持ち帰り120、賄い8、店内飲食予定75、失敗など1)を作り終えた。リラたちが6食分作っていったので、材料的には、30食分残っている。


「残りの30食分も仕上げてしまいましょう。これは、皿盛りではなく、箱詰めします」



4時を過ぎると、普通の注文も入るようになってきた。

細工寿司は普段より値段が高いので、軽食のつもりで来た場合、持ち合わせが足りないのだろう。


あちこちを手伝っていたユリは、夕食を作り始め、一番早く作り終わったソウが、洗い物を始めた。


「ホシミ様、洗い物でしたら、私が」

「いや、巻くの飽きたから。でも、マーレイこそ飽きたよな」


藤の海苔巻きは、他の巻物の6倍作る必要があるのだ。


「いえ、海苔巻きを作るのは、とても面白いです」

「なら、やっぱり、俺は飽きたから洗い物するよ」

「かしこまりました」


マーレイは物凄いスピードで藤の海苔巻きを終わらせ、ユリに確認に来た。


「ハナノ様、次に、何をしたらよろしいでしょうか?」

「巻きたいなら、シィスルちゃんを手伝って、巻かないなら、夕飯の手伝いかしら」

「巻物のお手伝いをして参ります」


シィスルは、マーレイに梅の細巻きを頼んでいた。


少しの間休憩していたキボウが、ユリに確認に来た。


「ユリー、キボーてつだう?」

「キボウ君、ありがとう。明日用の箱を60組組み立てるのと、シィスルちゃんの手伝いで頼まれた材料を渡すのと、夕飯の手伝いと、どれが良い?」

「わたすー!」

「お願いします」


キボウは、シィスルの助手をするらしい。

今ある洗い物が終わり、ソウは出来た海苔巻きを箱詰めしていた。

ユリも夕飯の目処がたち、細工巻きに戻った。


「ユリ、持ち帰りまだ追加作れるにゃ?」

「今作っている30組が最後よ」

「わかったにゃ。助かったにゃ」


鞄の在庫より多く、注文を受けてしまったらしい。

出来上がっている寿司折りをいくつか持って、ユメは店に戻っていった。



閉店時間になり、

持ち帰り用の寿司折りは完売。店内用の皿盛りは、1食残ると言う結果になった。イチゴババロアに至っては、持ち帰る客で、早々に売り切れたそうだ。個数制限をしなかったのが原因らしい。明日分まである予定だったので、ユリが驚いた。


「ほぼ完売ね。皿盛りだけど、折りに詰め替えて、メリッサさんがお土産に持ち帰ると良いわ」

「箱がもったいないです。お皿は明日返すので、このまま持ち帰っても良いでしょうか?」

「え、持ち難くない?」

「問題ないです!」


メリッサは、ニコニコしながら皿盛りの細工寿司を持ち、帰っていった。


「申し訳ないけど、ご飯のあと、残業できる人だけお願いします」

「はい!」「はい」「はい」「手伝うにゃ!」

「あ、俺も」「キボー、てつだうー」


シィスル、イリス、マーレイ、ユメ、ソウ、キボウ。

メリッサが帰ったあと、残った全員が残業してくれるらしい。


ご飯を食べながら確認された。


「ユリ、なに作るの?」

「明日分のイチゴババロアよ。400あったはずなんだけど、売り切れたらしいわ」

「のり巻き手伝ってたから、知らなかった」

「朝作る時間無いと思うのよね」


「明日も早く来ます!」「なるべく早めに参ります」

「イリスさん、マーレイさん、ありがとう」


「ユリ様、明日、マリーと少し手伝いに来ても良いですか?」

「とてもありがたいけど、休まないの?」

「週のお休みのうち、片方は勉強をするようにしているので、丁度良いです」

「絶対に無理しない程度なら良いわよ。よろしくお願いします」

「はい!」


少し食休みをしてから、仕込みを開始した。


「器の用意、計量、仕込み100個分ずつ5回です」


さっと、マーレイとイリスが器の足りない分を洗い始めた。

シィスルとユメが計量を始め、ソウとキボウが、聞きながら手伝いを始めた。

ユリが器具類の用意をし、シィスルと二人で仕込みを始めた。

ユメとソウが引き続き計量をし、終わり次第、出来上がったものを冷蔵していった。

2回目からは、ユリとシィスルが別れて、ユリはユメとソウを助手につけ、シィスルはマーレイとイリスを助手につけ、同時に仕込んだ。

キボウは、洗い物を流しに運んだり、冷蔵庫の扉を開けたりしてくれていた。


シィスルが戻らないことを心配したのか、リラとグランが訪ねてきた。


「こんばんは。珍しいですね、残業ですか?」

「こんばんは。遅いので、迎えに参りました」

「あら、リラちゃん、グラン君、こんばんは。イチゴババロア全部売れちゃったのよ」

「えー!Gの日(きんのひ)に、400仕込みましたよね?」

「そうね。それ全部、早い時間に売り切れたらしいわ」

「うわー。細工寿司はいくつ作ったんですか?」

「リラちゃんたちが作ったのを含めて240人前ね」

「あはは、予定の倍ですね」

「なので、最低でも明日も240は作る予定です」


リラとグランは、シィスルを真ん中に、帰っていった。


「グランは・・・」


イリスが何かを呟き、マーレイと帰っていった。

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