自慢
休み明け、珍しくパープル侯爵がランチに来た。
話をさせてほしいというので14:00過ぎにお願いした。
既に13:40位なので、そのまま待っているらしい。
14:00になり、他の客が帰るとパープル侯爵がうなだれた様子で話しかけてきた。
「失礼は承知で申し上げたい。イエロー公爵夫人と懇意とは誠か?」
「それ誰でしたっけ?」
「な!?」
パープル侯爵は唖然としていた。
アルストロメリア会のメンバー以外に貴族女性の知り合いなんていたかしら?
「あー、休みの日に来てリラちゃんと揉めてた人だ!」
「揉めていた?リラちゃんとは?」
「リラちゃんは、ここでたまにお手伝いをしている子です。お休みだと教えたら私に会いたいと言ってリラちゃんを困らせていたみたいで」
「それだけなのか?」
「んー。たしか、私の名前を呼んで良いか聞くので、良いですよと言ったらなんかウキウキと帰られましたよ」
「それか・・・」
「どれですか?」
「親しい呼び方で呼ぶのを特別に認められたと、集まりで自慢されたそうだ」
「ん?ローズマリーさんがですか?」
「ああ、それで昨日は荒れに荒れ、私は大変だったんだ・・・」
「んー、そんなことでしたら、ローズマリーさんも私をユリと呼んだら良いですのに。差をつけたいなら、ユリ様じゃなく、ユリさんとか、ユリ先生とか、変えたら良いと思いますよ?」
「良いのか?」
「あ、女性限定ですが」
「もちろんわかってる。・・・では妻に言っておきます。ユリ・ハナノ様、どうもありがとうございます」
態度を改めてパープル侯爵はお礼を言った。
「そもそも、あの方、私には名乗ってすらいませんし」
「え、名乗っていないのか?」
「はい」
パープル侯爵は、色々考え込んでいるようだった。
「イエロー公爵家とはあまり仲良くないんですか?」
「反対色だからな」
「あーなるほど。わかりやすい!」
来た時とは全く違う様子で元気良く帰っていった。
お貴族様は大変ね。
さて、ごはん食べたら、今日も外おやつを出して、おやつタイムの用意をしなくちゃね。
ユメとソウの受けがよかった葛切りを出してみようと思ったのだ。
少し先に作っておいて対応しよう。
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今日のおすすめ「葛切り」
単品 900☆
おかわり 800☆
ほうじ茶セット 1000☆
ほうじ茶のおかわりは無料です。
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よし、紙も貼ったし、外おやつも準備したし、葛切りを作り始めよう!
一番大きなボールと、大きなバットを用意して、一度にたくさん作ろう。
お客さんが少なくなってきたら、小さいバットで作れば あまりも出ずに良いわよね。
もうひとつの大きなボールに氷水を用意して、ガラスの器も30用意したけど、・・・黒蜜をかける方式だと洗うの大変かなぁ?
つける方式にした方が洗い物少ないかな?
黒蜜はココットにいれよう。足りなければ小鉢を使おう。
ちょっと華がないから缶詰フルーツでも飾ったら良いかな?
さ、葛切りを作らねば。
とりあえず30人前作って器15個に盛り付け小さいトレー15枚にのせた。15人分は小皿に分けておいた。
缶詰を開けていると15:00になった。
一番のお客さんが入ってくる。
「今日のおすすめはどんなものですか?」
「冷たくてつるんとした甘いものです」
「おすすめセットください」
「おなじく」
「私もそれで」
やっぱり15人前くずきりだった。
おかわりは小皿で持っていき、ラーメンの替え玉の要領で足した。
黒蜜はデキャンタの小さいのを各テーブルに置き、足りなければ使ってくださいと声をかけた。
大体の人は1~3杯だったけど、7杯食べていた人がいた。
飽きないのかしら?
だいぶ人が入れ替わり、16:00時頃の注文も今日は全員が葛切りだった。
全員セットだなぁと思っていたら、一人だけ、単品と紅茶の注文だった。
合うのかしら?
結局100食相当用意して、102食作り、17:00前に売り切れた。
黒蜜もギリギリだった。
黒蜜は大量にあまる予定だったのになぜ?と思ったら、最後ほうじ茶に入れて飲んでいる人がかなりいたらしい。
私はお茶類に糖分を入れないので、そんな斬新な黒蜜の使い方は思い付かなかったよ。