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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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桜里

ユリが、さっきは先に送ってもらったので、今度は後で良いと遠慮したら、そんなこと気にしなくて良いと、皆に言われた。


今回も、ソウはユリを先に連れていくことになり、ユメとキボウに「少し待っててな」と言って、転移した。


紫陽花と違い、桜はすぐに見渡せた。

濃いピンク色や薄いピンク色のボンボンのような八重の花や、白っぽい桜が一面に咲いている。


「八重桜だわ!」


ユリが桜に見とれていると、ユメとキボウの声がした。


「凄いにゃ!」

「すごーい、すごーい!」

「ユリ、お待たせ!」


満開の桜の下を、花を見上げながら歩く。


「前を見て歩かないと危ないぞ?」

「はーい。つい、美味しそうだなって思っちゃって。うふふ」


大部怪訝そうな表情で、ユメがこちらを見た。


「ユリ、食べるのにゃ?」

「桜花の塩漬けに使う桜は、こんな感じの花なのよ」


成る程と理解したのか、ユメが笑顔になった。どうやら、花をそのまま食べる想像をしたらしい。


(すずめ)じゃ有るまいし、桜を散らせたりしないわ」

「あれは、花の根本にある蜜を吸っている結果らしいぞ」

「なんの事にゃ?」

「桜の木に雀が来ると、花を散らすのよ」


少し先を歩くキボウが戻ってきた。


「はなー!」


そう言って指差した先は川で、川面(かわも)に散った花びらがたくさん浮かんでいた。向こう岸には既に散り始めの桜の木がある。こちら側と種類が違うらしい。


「向こうの花吹雪は、見事ねぇ」

「川下り的なこともできるけど、屋形船に乗る?」


ソウの提案に、一番に反応したのはユメだった。


「船に乗ってみたいにゃ!たぶん船に乗ったこと無いにゃ!」

「そうなの?なら、ぜひ乗りましょう」

「のるー、のるー!」


とても乗り気なキボウを見て、毎日木製の舟の上で寝ている気がすると皆が思った。


「ユメ、この先、南南西、約1km先にある屋敷に来られるか?」

「大丈夫にゃ」

「キボウを頼んだ」

「わかったにゃ」


ソウはユメと話をつけると、ユリを連れて離宮のそばに転移した。

すぐに、キボウをつれたユメが転移してきた。


「ユメちゃんは、距離と方角の説明だけで転移できるの!?」

「ユリはできないのにゃ?」

「迷子になりそうです・・・」


ソウとユメが、言葉にせず納得していた。ユリは、一度行った場所でないと、転移できない。この国から元の国に行けたのは、行き先を明確に思い描けたからだ。


「舟を出してもらってくるから、ちょっと待ってて」


ソウは少し高台にある離宮に入っていった。すぐそばには舟乗り場の小屋があり、船着き場らしき場所には、何(そう)かの舟が係留されていた。


「思っていたより、舟が大きいにゃ」

「これより小さいと、みんなで乗れないと思うわよ?」


恐らくモーターはないので、手()ぎなのだ。あまり小さいと、漕ぎ手が乗ることができない。


「ユリ、もしかして、漕ぎ手がいなくても、動かせるのにゃ?」

「あー、そうね!やったことはないけど、動かせると思うわ!」


ユメとそんな話をしていると、ソウが男性二人を連れ、戻ってきた。


「今、ちょうど良い時間らしいよ。1時間くらい引き潮で、その後、満ち潮らしいから、戻ってくるのも簡単だって」


「ユリ、残念だったにゃ」

「そうね。うふふ」

「ユリ、ユメ、どうしたの?」

「なんでもないわ」

「なんでもないにゃ!」


ソウはキボウを見たが、あっさり言われた。


「キボー、しらなーい」


早速舟に移動し、ソウが連れてきた男性は、舵のため舟の前後に乗り込んだ。二人とも長い竹竿を持っていた。


この辺は海が近いためか、川の流れそのものにスピードはほとんどなく、とても緩やかだ。海には出られないため、流され過ぎる恐れもない。

ゆっくり舟が動き、景色もゆっくり変わっていく。

屋形船なので、半分以上は屋根があり、屋根の無い部分に大きめのクッションを敷き、上に寝転がって桜を眺めていた。


「全自動で下から眺める桜は贅沢にゃ」

「たまに、緑色の小鳥もいるわね」

「さくら、さくらー!」


たくさんの花びらが舞い落ちてきた。ヒラヒラ降ってくる花びらに、キボウが大喜びだ。


「他の人は、花見酒とかするのかしら?」

「屋形船を借りる人は、そういう人もいるよ」

「サクラアイスでも食べる?」

「室内に入ると、花見えないぞ?」

「なら、後で食べましょう」


屋形船は、秘密会議などに使う場合もあるらしい。


「思っていたより揺れないにゃ!」

「この辺は河口付近で、流れがなだらかだからな」


まだ両岸の桜が見えるが、だんだん植わっている桜の数がまだらになっていき、少し先の景色から岸の桜が見えなくなった。

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