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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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仕上

お茶を楽しんだ後は、再び琥珀糖の仕上げをする。


「カットはナイフで切っても、手でちぎっても、クッキーの型で抜いても良いです」


ユリは、ハニカム型を見せた。


「こういった、六角形の連なった型で切り抜き、上部を鋭角にカットすると、より宝石感が増します」

「ユリ先生、あ、ユリ様」

「呼び方は、先生でもなんでも構いませんよ」


マーガレットから先生と呼ばれ、以前はユリ先生と呼ばれていたことを思い出した。何かしらの遠慮があり、呼ばないようにしていたらしい。


「はい!ユリ先生! カットした小さな欠片はどうされるのですか?」

「そのまま食べてみても良いですが、フルーツポンチに混ぜたり、グラスに炭酸水と入れても、素敵な飲み物になります」


マーガレットが質問したのは、ラベンダー以外からも質問する流れを作るためらしい。二人で目で合図をし、頷いていた。


「ユリ先生、他に素敵なカットなどはございますでしょうか?」

「直方体等にカットした後、4つの角を少し切り落とし、八角形にしたあと斜めにもカットして、カットされた宝石型にしても、見映えがしますよ」


今度の質問は、ピアニーだった。

聞くことを遠慮していたらしいサンダーソニアとカンパニュラの侍女たちも、思ったことを聞くことにしたようだ。


「ユリ様、(わたくし)たちも、先生とお呼びしてもよろしいでしょうか?」

「はい、どうぞ。お好きに呼んでください」

「ありがとうございます。ユリ先生。では、質問させていただきます。この琥珀糖は、時間がかかると伺いましたが、仕上げはいつされるのでしょうか?」

「琥珀糖を完全に糖化させるには、5~7日ほどかかります。気長にのんびり作るお菓子なのですが、今日はそれだと困るので、キボウ君が時送りをして時間を早め、今日中に仕上げる予定です」


固めるときにキボウが時送りをしたので、もしかしたらそうかもしれないとは思っていたらしい。それでも、やはり驚いたようで、チョロチョロしていたキボウに、頭を下げていた。


「なーにー?」

「キボウ君が時送りをしてくれるから、お願いしますってご挨拶されたのよ」

「わかったー」


「それでは、皆さんもカットをしてみましょう。クッキーの抜き型はこちらにありますので、お好きな型を使用してください」


ユリは、ハニカム型で六角柱を作り、説明の通り、先を尖らせ、水晶の結晶のような形を作って見せた。


「ユリ先生、正方形のどの辺りをカットすれば、美しい正八角形になりますか?」

「正方形の対角線は1.41倍なので、おおよそ、一辺が3:4:3

か、2:3:2の割合で見当をつけ、斜めにカットすれば、正八角形に近くなります。理解しにくいなら、紙を折ってみると良いですよ」


そもそもが、琥珀糖は大きくても2~3cm角なので、3:4.23:3や2:2.82:2等の細かい数字を示しても意味がない。

ユリは折り紙を正八角形に折って見せた。


「正方形から正八角形にするには、こんな感じに角を落とします」

「実際に見ると、とても分かりやすいですね」


リラとシッスルは全く聞きに来ないで、同じサイズの小物を量産しているようだった。ユメも手伝っているらしく、勝手の分かっているリラとユメは、先に進めているようで、ユリの持ち込んだクッキングシートに並べ始めている。


ユリはカンパニュラのそばに行き、カットをどうするか尋ねてみることにした。


「カンパニュラちゃんは、カットはどうするの?」

「はい。はものはまだあぶないと、おばあさまからいわれているので、クッキーのかただけをつかおうとおもいます」

「あまりギリギリにしないで、残った部分を手でちぎると良いわよ」

「はい!」


カンパニュラは、花やハートや星等の型を使い、楽しそうに抜き出していた。


「はい、少しだけ耳を傾けてください」


手を止め、全員がユリを見た。


「今、リラちゃんがしているように、トレーの上に、くっつかない紙を敷いて、その上に少し離して並べていってください」


トレーのサイズに切っておいたクッキングシートを配り、そばについているメイドたちが、カットされた琥珀糖を並べていった。


「すべて並べ終わった人は、キボウ君を呼んで、時送りをしてもらってください」


リラとシッスルは、ユメも手伝っているので、いち早く並べ終わったらしい。リラがキボウを呼ぶようだ。


「キボウ様、お願いします」

「さまー?」


リラはキボウに小声で何か説明していたようだが、ユリには聞こえなかった。


「いちにちー!」

「シッスル様、こちらを全て裏返します」

「リラさん、全てですか!?」

「はい」


メイドも手伝い、大慌てで小粒の琥珀糖の全てをひっくり返していた。

それを見た他の人たちは、欠片も使おうと考えていたのを断念し、ユリが最初に言ったように、フルーツポンチや炭酸水に入れて使おうと、並べた小粒を取り除くのだった。


キボウに時送りをしてもらうと、つくりかけの琥珀糖は、べたつかずに触りやすくなる。最初透明だった色は、だんだんと表面が糖化し、白っぽくなっていく。


「下側が完全に乾いてしまえば、網にのせ、自然乾燥でも良いです」


ユリは自分でカットした琥珀糖を、キボウに頼んでいない。

助手をしていたメイドに心配された。


「ちょっと試したいことがあるんだけど、実験しても良いかしら?」

「何かお手伝いはございますか?」

「少しだけ離れてくれれば良いわ」


並べた琥珀糖に呪文を唱えた。


「ウオスナク」


あっという間に表面が糖化し、ひっくり返さずに琥珀糖が出来上がった。


「うふふ。できたわ」

「今、何をされたのでございますか?」

「表面を乾燥させてみたわ」


どうやら、ユメに見つかってしまったらしい。


「にゃー!ユリずるいにゃ!」

「うふふふふ。ユメちゃんも試してみる?」

「溶かす前の寒天に戻りそうにゃ、やらないにゃ!」


小粒すぎて、コントロールの自信がないようだ。干し肉を作ってしまったことを思い出したらしい。


「最大で魔力1000p使うので、増強している人になら教えますよ。ただ、失敗すると、乾物レベルに水分が抜けるので、少量で試すことをおすすめします」


全員が聞きに来て、代表でサンダーソニアが試してみたが、完全に乾燥させてしまい、笑いだしてしまった。


「む、無理です、ふふふふふ。ユリ様、どうやったら、回りだけ乾くのですか?」

「一番大事なのは出来上がりのイメージを明確にすることかしら」

「それでも失敗するのにゃ!表面を乾燥させるつもりで、干し肉を作ったことがあるのにゃ!」


ユメの告白に、全員が試すのを諦めていた。


「切った野菜の表面を乾燥させる練習をすると良いと思います」


「ユリー、ケースどうする?」


見学していたソウから声をかけられた。


「シューの箱と一緒に預けたんじゃないの?」

「琥珀糖のケースは持ってるよ。ほらこれ」



アクリル製のケースを見せてくれた。デザインがおしゃれで、本当に宝石箱みたいだ。大きさは、4cm厚の10cm角程度の箱と、直径10cm程の丸型の箱だ。ご丁寧に、ソウは紙パッキンまで持っていた。


「何個有るの?」

「今持ってるのは100個有るから、何個でも大丈夫だよ」


希望数を聞き、一人辺り5~6ケースを配った。リラは自分の分を、全てシッスルに譲ったようだった。


そして、なんと、スワンシューの箱は、全体が透明のケーキ用の箱だった。

ソウはこの2種類を、見本として貰ったらしく、使用の感想が欲しいと言っていた。いつもお世話になっている店から頼まれたらしい。


ソウの持ち込んだ箱類は好評で、終わらない人たちを手伝い、皆で琥珀糖をひっくり返した。


「あーー!まだ残っておりました・・・」


多すぎて分けておいた、後から発見されたトレーを残念そうに抱えているのを見て、ユリが魔法で乾燥させ、全ての琥珀糖が出来上がり、今回のアルストロメリア会の実習が終了した。


この後は、服を着替え、昼食の予定だ。

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