葛切
週の半ば、ローズマリーに相談事が有る。と伝えるにはどうしたら良いか、朝、納品に来たマーレイに相談すると、メッセンジャーをしてくれるというので頼んだ。
その日の昼にはパープル侯爵家の執事がとんできた。
やっぱり14:00過ぎに。
いつ突然来ても問題ないし、伝言で良いなら承ると言われた。
鍋掴みを作る計画書を渡し、次回分は持ち込むが、メンバーの数を作って揃えてほしいことを記した。
よし、これでひと安心と、パープル侯爵家の執事にはお菓子のお土産を持たせ帰らせた。
週末になり、今週はアルストロメリア会がお休みなので家でゆっくり出来ると思ったら、お店の外で声がする。
2階から覗くと店の入り口側に豪華な(派手な?)貴族の馬車とリラが見えた。
揉めていたらリラが可哀想なので顔を出すことにした。
正面ではなく、倉庫側から出て、そばに近づくと、話しているのが聞こえた。
どうも私の事を話しているようだった。
「こんにちはー。どうされたんですか?」
「ユリ様!」
「あ、また、きちんとお呼びしないと失礼です!、ユリ・ハナノ様、この者がお名前を」
「あー、リラちゃんには、ユリと呼ぶように言ってあります」
「そうなのですか?そのようなこと・・・」
「貴族的に問題がないなら女性からはユリで良いんですけどね」
「・・・私もユリ様とお呼びしてもよろしいのですか?」
「はい。親しい感じで良いですよね」
「ありがとうございます!!」
何か、ウキウキと帰っていった。
「大丈夫だった?」
「はい」
「なんだったの?」
「お菓子を買いに来たみたいです。今日はお休みです。と言ったら、ユリ様にお会いしたい。と言っていました」
「そうなのね。迷惑かけてごめんね」
「迷惑なんて、でも、ちょっと怖かったです」
「そうだよね。・・・所であの人は誰だったんだろう?」
「イエローこうしゃく家のライラック様と言っていました」
「そうなのね。リラちゃんありがとう!何か食べていく?」
「はい!ありがとうございます!」
リラに迷惑をかけたので、ブランチをご馳走した。
ユメは基本的に客の前にあまり来ないが、リラは良いらしい。
「ユメちゃん、何か食べる?」
返事をしない時は、要らないと解釈している。
「なにか食べたくなったら教えてねー」
「なーご」
「ユメちゃんは頭が良いんですねー」
「そうねー、頼りになるし、すごく頭が良いのよ」
「にゃー!」
「そうだぞーって言ってるのかな」
「ふふふ、そうかもしれないわね」
「ユリ様、とっても美味しかったです!ありがとうございます」
「こちらこそ、対応してくれてありがとう」
「なにかお手伝いがあったら是非呼んでください!」
「はい、おねがいしますね」
リラは笑顔で帰っていった。
2階に戻ると、ついてきたユメが変身した。
「ユリー、お菓子食べるにゃ」
「何が良いですか?」
「ユリのおすすめで良いにゃ」
「はい、では、出来立て葛切りはいかが?」
「新しいお菓子にゃ?」
「ユメちゃんが、試食初ですね。直ぐ出来るので待っててください」
「待ってるにゃ」
葛粉を水に浸け溶かし、裏ごしてある。
使う時に、水に沈殿した葛粉を良く混ぜてから耐熱容器に5mmほど入れ、沸かしたお湯の上に浮かべ加熱する。固まってきたら器ごと沈め、透明になったら、取り出して冷水で冷やす。型からはずし、1cm幅に切って器に入れ、黒蜜と、お好みできな粉をかけて食べるのだ。
さっと作り、氷水で冷やした。
切って器に盛り付け、黒蜜ときな粉を添えた。
「さあ、どうぞ」
ユメは黒蜜をたっぷりかけて葛切りを食べていた。
「あ、俺 良いところに来た?」
「ソウも葛切り食べる?」
「もちろん食べる!」
「ちょっと待ってね」
型に注ぎ、浮かべ、型を沈め、冷水にとり、切り分ける。
「はいどうぞ」
「早!そんなに簡単にできるんだ?」
「そうねー、葛さえ水に混ざっていれば、お湯沸かすだけだから」
「うま!これ、他で食べるより旨いな」
「ふふふ、それはありがとう」
「ユリ、おかわりあるにゃ?」
「はい、もう作ってあるわよ」
「すごいにゃ!」
ユメの食べていた器に葛切りを足した。
するとユメはさらに黒蜜を足していた。
自分の分も作り、一緒に食べた。
「久しぶりに食べると美味しいわねー」
「夏にふさわしい甘味だな」
良く見るとソウもユメに負けないくらい黒蜜たっぷりで食べていた。
ソウって、こんなに甘党だったかしら?
でも、また作ってあげようっと。
アルストロメリア会でもうけるかしら?
次は若鮎だからその次にでも作ろうかな。
クロネコのユメ
第4部分 夢の甘味
掲載日:2021年 07月16日 13時00分
よろしくお願いします。




