木柵
大変申し訳ございません。
前話の内容で、上級メイドの女性の名前「ミラベル」を書き足しました。
ほんの少し文章が変わっております。
読み直さずとも、話の流れに変わりはございませんが、気になられる方は、お読み返しをお願い致します。
白衣モドキの衣装は、アルストロメリア会で揃えたらしい。いくら割烹着を上に着るからといっても、スカート部分に汚れがつくのだ。特にお菓子作りは、粉が舞うことが多いので、割烹着とスカートとの境目の汚れが目立ってしまい、意味をなさない人がいるらしく、専用の服を作ることで、それを回避したらしい。
せっかく作ってくれたらしいので、ユリも着ることにした。新しい割烹着も渡された。
顔見せに来たメイドたちは、持ち場に戻ると言って退室していった。
ユリは手伝いを断り、天蓋のベッドの有る方へ行って着替えてきた。
「私の分も作ってにゃ」
「かしこまりました。サイズを計らせていただいてもよろしいでしょうか?」
「構わないにゃ」
ユメも作ってもらうらしい。変身して着替えないのかと、そっとユリが聞くと、外出着と違って、機能性の服なので、実際に作った方が良いのだと説明された。
成る程とユリは納得した。
「あ、そうだわ。ソウの方に一緒にいる、キボウ君が欲しがったら、やはり作ってもらえるかしら?」
「お作りいたします。キボウ様に確認いたしますか?」
「そうね。実際に欲しいと言ってからで良いわ」
着替えが終わったので、ミラベルが連れていってくれるらしい。不案内なユリにはとてもありがたい。
「ユリ・ハナノ様、お荷物などはございませんでしょうか?」
「荷物は大丈夫よ。あと、名前、ユリで良いわ」
「かしこまりました。ユリ様」
緊張していたらしい顔に、ミラベルはやっと笑顔を浮かべた。
ユリから名前呼びの許可をもらうことが、重要だったらしい。
久しぶりの専用厨房につくと、なんだか違和感があった。
あら?ここ、こんなに広かったかしら?
「以前より広くなりました」
「あ、やっぱり広いわよね」
部屋が1.5倍、いや、2倍くらい広くなっていたのだ。
「ユリ様、お待ちしておりました」
ラベンダーとリラが待っていた。
ユリと同じ白い服を着ており、なんとリラも割烹着を新調してもらったらしい。
「あら、新しい割烹着?」
「以前の割烹着も持っては来たんですが、短すぎて笑われました」
リラは5年半前に比べて、身長が25cm位伸びたので、子供用から大人用にサイズを変更して作ってくれたそうだ。
アルストロメリア会専用厨房には、すでにカンパニュラやサンダーソニアも来ていて、二人の侍女やシッスルも皆同じ服、白衣モドキと割烹着を着ていた。
以前の部屋のサイズより大きくなったと思われる場所の境に、木製と思われる1m位の高さの柵が置いてあり、その後ろに、王妃ハイドランジアや、ローズマリーもいた。その横にいるのは、スノードロップだと思われる。その全員が、ドレスの上に、割烹着を着ていた。
柵は、向こう側が見通せる程度に粗い、藤籠や竹ざるのような編み込みだ。
授業参観かしら?
こちら側にいるメンバーは、ラベンダー、リラ、マーガレット、ローズ、ピアニーがいる。
「ローズさん、ピアニーさん、お久しぶり!」
ユリは半年ぶりを懐かしく思い、軽く挨拶した。
「ユリ様、再び見えることができ、恐悦至極に存じます」
「ユリ様、ご息災をお喜び申し上げます」
以前だって敬われてはいたが、完全に別世界の人のような挨拶を受け、ユリはうろたえた。
「あ、ありがとう。できれば、以前と同じくらいでお付き合いください」
「かしこまりました」「かしこまりました」
ローズとピアニーがニコッと笑い、ユリが落ち着いた。
その後、カンパニュラについてきた侍女も丁寧な挨拶をしてくれた。
「身分の違いはあると思いますが、わからない事はわからないままにせず、わかる方にしっかり教わってください。そして、わからない方に親切にすることは大事です。ここで割烹着を着ているときは、全員が一生徒として、同じく習う立場とし、遠慮せず質問をしてください。教わりに来たのに、わからないままにすることが、一番無意味な行為です」
少し遅れてユメが来た。なんと、同じような白衣と割烹着を着ている。
「もう作ってもらったの!?」
「仕上げだけになっていたらしいにゃ」
「仕上げ?」
「名前を入れてもらったにゃ」
どうやら、どの名前をいれたら良いかわからず、刺繍だけ残し出来上がってはいたらしい。サイズを計って、以前と変わらないことを確認されたそうだ。
皆が後ろの柵側を振り返り、少しざわついた。
ユリもそちらを見ると、パープル侯爵とソウが、入ってきたのだ。なんと白衣を羽織っている。二人の白衣は医者が着る白衣のようなタイプで、パープル侯爵は、白衣に着られている感があるが、ソウは変に似合っていた。
あー、あれは、マッドサイエンティスト的な?
ユリは少し笑ったあと気がついた。
あれ?キボウ君はどこに行ったのかしら?
どうやら、柵が高すぎて、キボウは柵の後ろに隠れてしまっているらしい。ソウが柵をずらし、キボウは中からでてきた。
キボウは、ソウが着ている白衣と同じものを羽織っていた。
「キボー、てつだうー!」




