白衣
ミラベルに関する記述を少し書き足しました。
「ユメちゃんは自分で来られる?」
「大丈夫にゃ」
「キボウ君は自分で来られる?」
「だいじょぶ、だいじょぶ」
「ソウも自分で来るわね」
「あ、うん」
同じように聞いてくれると思ったらしい。
そもそも部屋が違うので、ユリにソウを連れていくという選択肢は無かったのだが。
「リラちゃん、つかまって」
「はい!」
ユリは一足先に、パープル邸に有る自分の部屋に転移した。
「うわ、ここ何処ですか?」
「パープル邸の、私の部屋よ」
「お貴族様の私室、初めて入りました」
「私も滅多に来ないけどね。うふふ」
リラがかなり驚いていた。
ハンドベルを鳴らすと、すぐに複数人のメイドが来た。
「ようこそいらっしゃいませ、ユリ・ハナノ様」
「又、よろしくお願いするわね」
この挨拶をした女性は、ミラベルという名前らしい。
「リラ様は、どうぞこちらへ」
リラは唖然とした顔をしたあと、慌てていた。
「様じゃなくて、私は『リラ』でお願いします!」
「では、リラさん。こちらへどうぞ」
一人のメイドが、リラを連れていった。
そのあと、すぐにユメが来た。
「リラはいないのにゃ?」
「メイドさんに連れていかれたわ」
「ようこそいらっしゃいませ、ユメ様」
「私もこちらで良かったかにゃ?」
「はい。よろしければ、別のお部屋をご案内いたしますが、いかがいたしますか?」
「私は、部屋は要らないにゃ」
「かしこまりました」
ユメは部屋を断っていた。
違うメイドが来て、茶器を2組持ってきた。又違うメイドが来てお茶を入れ、全員が下がっていった。
「せっかくだからお茶をいただきましょう」
「そうだにゃ」
お茶を飲みながら、少し落ち着いた。
「見知った人が居なかった気がするわ」
「そういえば、そうだにゃ」
コンコンコン。
ドアノックが聞こえた。
「ユリ様、サリーでございます」
「はーい」
なんで入ってこないんだろう?とユリは思っていた。
そんなユリに気がついたユメに、指摘されるのだった。
「ユリ、入室許可を出すのにゃ」
「あ、そ、そうね。入ってくだ、じゃなくて、入りなさい」
「失礼致します」
ドアを開けてサリーが入室し、顔見知りのメイドたちが廊下に並んでいた。
「サリーさん、お久しぶり!」
「ユリ様、又、アルストロメリア会でお会いできて、大変嬉しく思います」
「廊下の皆さんも、良かったら部屋に入って顔を見せてちょうだい」
たまに来ることはあっても、話す機会はほとんどなかったので、本当に久しぶりなのだ。ユリの店の店員募集の件もあり、おそらくその時応募したのは、今ここに来たメイドなのだろうと思われる。
ずらずらと入ってきて、泣きそうになっているメイドまでいた。
少し懐かしい話をしたり、ユリの差し入れのイチゴが美味しかったと言われたり、少しの間楽しく会話した。
「最初に来た人は、新しい人なのかしら?」
「上級メイドです。こちらのお部屋つきのメイドでございます」
「何か違うの?」
「簡単に説明いたしますと、平民出身か、貴族の子女かで、仕事内容が変わります。こちらのお部屋つきは、伯爵令嬢や子爵令嬢が、侍女のようにお世話いたします」
「分かりやすい説明をありがとう。彼女たちは貴族の令嬢なのね」
「今、この中にも貴族令嬢のメイドも居りますが、やはり、5年半前に居たかどうかは大きいようでございます」
「私、貴族のマナーがなっていないから、がっかりしちゃったかもしれないわね」
「何か、ご不快な点がございましたか?」
「そんなことはないわよ」
「ユリ、向こうも緊張してたと思うにゃ」
「そうなの?」
「はい。ユリ様がとてもお優しいと存じ上げております私どもが、いくら説明いたしましても、やはり最初は緊張するのだと思われます」
「それなら、仲良くしてもらえるかしら」
「あ、あの、これは、内緒でございますが、ユリ様のお部屋つきは、争奪戦でございました。奥様は実力主義でして、最重要なのは身分よりも実力や結果でこざいますので、お屋敷の希望者で競いました」
「そうなの!?」
ユリの見知ったメンバーは、礼儀作法でミラベルに負けてしまったらしい。
コンコンコン。
「ユリ・ハナノ様、白衣をお持ちいたしました」
部屋の外から、呼び掛けられた。
「白衣?」
「ユリ様のお店のお衣装を参考に、新調致しました」
「そうなのね」
「ユリ、入室許可を出すのにゃ」
「あー、ごめんなさい。入ってちょうだい」
先ほどお迎えをしてくれた上級メイドのミラベルが、衣装を持ったメイドを連れてやって来た。
胸元のフリルがたくさんのブラウスと、プリーツスカートに見える何かだ。確かに生地は染めていないようで白いが、これを白衣と言われてもユリはいまいちピンとこない。
とりあえず受け取り見せてもらうと、スカートではなく、キュロット?ガウチョ? 足が別れているのだ。ユリは少し考えて、思いだした。
あ、これ、袴だわ!




