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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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檸檬

仕込みが落ち着き、他にも手をかけられるようになった。

ユメに渡した指輪の鞄を返してもらい、中を確認した。

9割くらいのケーキ等が抜かれており、大分中身が減ったようで、使いきれていない果物が目立つようになった。


パイナップル33

マンゴー22

ピタヤ赤11、黄6、白5

レモン187

黄柚子11

干し柿54

林檎24

苺4パック


ユリは、果物を取り出し作業台の上に並べた。決まった用途がある柚子や苺をしまい、そのまま食べるであろう果物をしまっていると、ちょうど厨房に来たユメに言われた。


「レモンにゃ!あ、ユリ、レモンの花が咲いていたのにゃ!あとにゃ、レモンマーマレードが欲しいと言うお客が居たのにゃ」

「持ち帰りってこと?」

「凄く気に入ってたのにゃ。買って帰りたいって言っていたのにゃ!」

「レモンマーマレードの瓶詰め作ったら、売れるのかしら?」

「売れるにゃ!」「売れると思います!」


ユメとシィスルが同時に答えた。


「そうなの?」

「マーマレードは、他に作る人がいないのにゃ」

「まあ、そうね」

「ベルフルールでは、持ち帰り分を作るのは難しいです」

「そうだったわね」


マーマレードは他のジャムと違って、皮を刻むのがかなり大変なのである。そしてこの国には、マーマレードが無いのだ。植物が豊富で食べるものに困らず、そのためか面倒な料理全般が無かったので、同じ理由だと思われる。

ユリが悩んでいると、皆が手伝うと言い出した。


そこまで皆に言われたらユリも断れず、レモンはシロップ用をいくつか残し、マーマレードを作ることにした。さすがに今日は瓶が無いので、明日以降の仕事だ。



「ユリ様のそのお鞄は便利ですね」


ユリが作業台に出した果物をしまっていると、シィスルから声をかけられた。


「時が止まったようなものだしね」

「ような、なんですか?」

「そうよ。完全停止ではなく、大体274年くらいで、1日分くらい進むわ」

「何で、そんなに半端な数字なんでしようか?」

「数字的には整った数字よ。10万分の1なのよ。鞄に入れて10万日経つと、外で1日経った物と同じになるのよ」

「え、えー!」

「だから、1年間入れっぱなしでも、5分程度しか経過しないのよ」


シィスルは計算してみたようだが、途中でこんがらがり分からなくなって諦めたようだった。

24×60÷(100000÷365.2425)=5.259492 よって、約5分15秒と、ユリは計算している。



「ユリ様、今週のEの日(だいちのひ)は、リラさんも一緒に領主様のお屋敷に行かれるのですか?」

「え? あー、アルストロメリア会ね。そういえば、リラちゃんから明確な返事はもらっていないわね。お店忙しかったりする?」


ユリは気軽に聞いたのだが、シィスルは答えを悩んでいるようだった。


「えーと、こんなことを言うのは烏滸おこがましいのですが、リラさん、全然休まないので、ユリ様とお出掛けされる先で少しでも休めるなら、ユリ様に言われるなら休むかもしれないと思って」

「リラちゃん、休んでないの!?」

Wの日(みずのひ)Eの日(だいちのひ)も、何だかんだお店にいて、仕事をしたりしていることが多いです」


なんとなく想像できるわぁとユリは思った。

勿論、Sの日(おひさまのひ)も仕事をしているらしい。


「リラちゃんがいないとお店回らないほど忙しいの?」

「それは、リラさんが居る方が仕事は楽に回りますが、例え居なくても、マリーと二人でなんとかなります」

「シィスルちゃん、教えてくれてありがとう」


ユリでも言いくるめられて、気がついたらリラは手伝っていることがあるのだ。弟子ならば、尚更リラに逆らえないだろうし、ましてや仕事をしているのを止めるのは難しいのだろう。


ユリだって、現在店は週休3日になってはいるが、何も仕事がない日は割りと少ない。そんなユリを師匠に持つリラが、休業日にゆったり休むわけもなく、弟子にはちゃんと休ませているだけでも称賛に値するかもしれない。


「ユリ、何考え込んでるのにゃ?」


いつの間にか来たユメに、顔を覗き込まれていた。


「あ、ユメちゃん。なんかね、リラちゃんが全然休まずにいるみたいで、どうしたら休むかなって考えていたのよ」

「そんなの簡単にゃ」

「え?簡単なの?」

「ユリが、しっかり休めば良いのにゃ」

「どういうこと?」

「リラは、ユリを尊敬しているのにゃ。ユリが行動で示したことなら、(なら)うのにゃ」

「えー」

「ユリもリラも働きすぎなのにゃ」


ふと顔をあげると、シィスルが頷いていた。

実際ユリは、朝5~6時頃から仕事を始め、お店を閉めた18時以降も、片付けの他にも作業していることが多い。

店の定休日も何か作っていることも多く、女王の仕事で城に出向いていたり、これからアルストロメリア会をすれば、土曜日(だいちのひ)も仕事と変わらない。


「最低限の仕事しかしていないつもりなんだけど」

「ユリの最低限の基準が高すぎるのにゃ。私みたいに、少し休んだ方が良いにゃ」

「ユメちゃん、朝から手伝っているでしょ?」

「昼前に大分休んだにゃ」

「そうなのー!?」


思い出してみると、クッキーのあとユメは居なかった。


「ユメちゃん、週休何日が適正だと思う?」

「この国では週休1日でも、ちゃんと休むなら適正だと思うにゃ。ユリが育ったところでは、どうだったのにゃ?」

「会社員は週休3日、自営業は1~2日だったわね」

「作業的に休めないならにゃ、便利な機械を導入するか、人を増やすか、もう少しユリは楽をした方が良いにゃ」

「少し、考えてみるわ」

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