鍋掴
店の鍵を閉めると後ろから声をかけられた
「アイスクリームあるにゃ?」
「ユメちゃん!ユメちゃんの分は上にあるんだけど、お店の残らなくって、ソウの分がないのよね。どうしようかしら」
「え、俺の無いの?」
「あら、ソウ、ごめんね、何度も食べに来る人がいるなんて考えもしなくて、いっぱい残る予定だったのよ」
ショックを受けているらしいソウを気の毒に思ったのかユメが言った。
「仕方にゃいにゃ。ソウに分けてやるにゃ」
「ほんとか?ユメ、おまえ良いやつだな!」
なにもユメちゃんのを貰わなくても良いのに。でもまあ、そこまで食べたいと思ってもらえるのは嬉しいわね。
結局ユメはイチゴアイスクリームだけを食べて、抹茶とバニラは私とソウにくれた。
「また作るからね。ユメちゃんありがとう」
「もともとユリのにゃ」
ユメは黒猫に戻り行ってしまった。
「別に、ユメのを取ろうと思った訳じゃないぞ?」
「大丈夫。わかってるって!」
少しすねたままのソウに言った。
「今度はお店とは別に作るね」
「うん、期待してる!」
そんなにもアイスクリーム好きだったかしら?
ソウにしてみれば、アイスクリームが好きというより、ユリが作ったものが、強いて言えばユリが、まあ、察してあまりあるのである。
「そうだ!ミトンがほしいの!」
「何だっけそれ?」
「熱いものつかむ大きい手袋みたいな」
「あー、鍋掴か、店で使うの?」
「アルストロメリア会」
「なにそれ?」
「お菓子教えてるでしょ?それの集まりの名前だって」
「へぇー」
「腕までカバーする断熱材入りの熱くないやつがほしいんだけど、ここには無いみたい」
「なるほど。いくつ有れば良い?とりあえずは買ってくるよ」
「私のいれて8いや12組。毎度1人1万☆ずつ貰って、何かいたたまれないというか」
「そんなの気にせず貰えば良いのに」
「ここで作れると良いんだけどね」
「そうだな」
結果的に、今回は買ってきてもらったけど、来店者の馬車を見たとき、ふと目に留まったオイルランプの芯は何でできているか調べたら石綿だった。
お店ではオイルランプを使っていないから思い付かなかったのよね。
貴族女性はお菓子作りをしても、釜を見ないから 鍋掴を改良なんて思い付かないのだ。
現代ではアスベスト規制もあって石綿は身近な場所から消えたけど、シリコン鍋掴みを持ち込むのは私の判断できる範囲を越えている。なら、過去にあったものを作るしかない。
まあ、私はシリコン鍋掴み使っていないけどね。
お店では綿の軍手2~3枚重ねで仕事をしている。
ただ、それだとまれに腕を火傷するのだ。
貴族女性の腕に火傷があれば色々不味いだろう。




