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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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水流

4人揃って朝ご飯を食べた。ユリが作業していたので、ソウが作っておいてくれたのだ。


「べーこん!べーこん!」

「あー、これは買ってきたものだな」


キボウが、食事に出たベーコンを見て喜んでいた。

ソウが作ったのは、サラダ付のベーコンエッグとトーストだった。


「ソウ、どうもありがとう」

「どういたしまして。それで、塩抜きは何方式ですることにしたの?」

「手分けして、知っているもの全て試してみることにしたわ」

「へぇ。それは俺もやったことがないから、興味深いな」

「うふふ」


ソウの話が終わったタイミングでユメが尋ねてきた。


「ユリ、何か呪文を唱えていたのは、何にゃ?」

「あー、あれは、弱水流の魔法ね。本来、泳ぐときの補助に使うらしいわ」

「にゃ?」「は?」「なにー?」

「塩抜きの方法で、水流を作るために、エアポンプや小型モーターを回すというのがあったのよ。でも、モーター無いじゃない? だから、弱水流で代用できないかなぁって思って」


ソウは、魔法の存在そのものを疑問に思ったらしい。


「ほぼ海の無いこの国で、何に使うんだ? その魔法」

「湖で泳げば良いんじゃないかしら? 湖、無いの?」

「結界を張る前は、海に出られたと思うにゃ」

「あ、そうだったな。海に出られた頃に使っていたのかもな。湖は、どっかの領地の王家の別荘のそばにあるよ」


ユメから貰った王家の離宮の一覧に載っていたらしい。


「みずうみ、なにー?」

「湖は、川の水が自然にたくさん溜まった場所だな」

「かみさまのもり、あるー」

「世界樹の森の中に、湖があるの?」

「あたりー」

「日帰りできるなら、見てみたいわねぇ」

「日帰りできるならな」


見に行ったら最後、戻ってきた時には季節が変わっていそうだ。


食べ終わったユリは、再び厨房へ行き、手を叩いたあと、1つだけ分けてあるボールの水を変え、魔法の呪文を唱えた。


「イウスウリョニマン」


「ユリ、何て言ってるのにゃ?」

「イ・ウ・ス・ウ・リョ・ニ・マ・ン。よ」

「弱水流なのにゃ?」

「正しくは『波の流水』で、大波の呪文も別にあるわね」

「私も使えるにゃ?」

「多分1000pくらいだから、唱えてみればわかるんじゃないかしら? ()()()()()をイメージして、最初は水を触りながら唱えると良いわよ」


ユメは空の器に水を張り、試してみるらしい。


ユリは、お弁当に入っている、魚型の醤油容器に少しだけ水を入れ、キボウに渡した。


「これを入れると、水が動いてるのが分かりやすいわよ」

「わかったー」


ユリは、水道の水流のボールの中の、肉の裏表を返していた。


「うにゃー!!」


ユメが悲鳴をあげたので、何事かと思って振り向くと、水流が強すぎたのか、鍋から水が飛び散っていた。

キボウは、魚の醤油入れが動き回って、キャッキャと大喜びだが、ユメはずぶ濡れだ。


「ユメちゃん、大丈夫? ほら、これで拭いて」


タオルを渡すと、ユメは顔を拭き、手を叩いていた。

魔法がキャンセルされ、水しぶきが収まった。


「強すぎたにゃー」

「そのようね」

「ちょっと温かいシャワーを浴びてくるにゃ」

「風邪引かないようにね。着る服、買ったものもあるわよ」

「そうなのにゃ?」


先日、ユリの服をソウに買われたとき、ユリは、ユメとキボウの服を買ってきたのだ。

ユリも作業が終わったので、一緒に2階に戻り、ユメの服を杖の鞄から出し、渡した。


「可愛らしいのにゃ!」

「良かったわ。私のセンスだから、あんまりヒラヒラじゃないけどね」

「にゃー。私もあまりヒラヒラは着ないのにゃ」

「そうなの? お城の絵とかヒラヒラな服ばかりだし、初代様教の人たちのセンスは派手でヒラヒラ服らしいから、てっきりユメちゃんの趣味がそういうのかと思っていたわ」

「今の私には断言できないけどにゃ、日記に書いてあったのは、服を選んだことがないって話だったにゃ」

「あはは。私と一緒ね」


ユメは部屋に戻り、ユリの渡した服の一部を置き、風呂に入っていった。


「キボー、」

「キボウ君にも買ってきたんだけど、着てくれる?」

「ユリー、ありがとー!」


ユリはキボウを「キボウ君」と呼んではいるが、性別がいまいちわからないので、男女どちらにも使えそうな子供服を買ってきていた。


キボウに服を渡すと、キボウはそのまま受け取り、パッと真上に軽く投げた。

すると、キボウの着替えが完了した。まるで手品を見ているみたいだ。


「キボウ君、凄いわね!」

「キボー、すごーい、キボー、すごーい」


「ユリ、どうしたのにゃ?」


ユメが風呂から上がったらしい。シャワーだけなので、早かった。


「キボウ君の着替えが、手品みたいだったのよ。こー、服を上に投げるようにしたら、次の瞬間、着替えが終わっていたのよ」


ユリは、身ぶり手振りを交えながらユメに説明した。


「キボウ、その服、似合ってるにゃ」

「とても似合ってるわ」

「キボー、にあうー、キボー、にあうー」

「ユメちゃんも、とても似合っているわ」

「ありがとにゃ!」


ユメの服は、裾が広がった長めのAラインタイプの猫耳付パーカーと、細目のジーンズ。中に、丸襟の長袖ブラウスだ。

キボウの服は、オーバーオール、丸襟の半袖ポロシャツ、薄手のジップアップパーカーだ。

キボウは普段腕を出しているので、ユリはあえて半袖にしてみたのだった。



開始2時間後に当たる、9時の水流の確認もしたあと2階に戻ると、ソウが丁度箱を抱え帰ってきた。


「ソウ、それ何にゃ?」

「これ、燻製器とチップとウッド」

「いっぱいにゃ」


同じ箱が4つある。袋に入った細かい木片のようなものも4袋と、長い煉瓦のような塊が4つある。


「無難に桜にしておいたよ」

「ありがとう」


「無難に桜って何にゃ?」

「燻製に使うチップの素材の種類だな。他には、クルミとかリンゴなんかもあるぞ」


他には、ブナ、ナラ、ヒッコリー、ミックスタイプなどがある。


「桜が無難なのにゃ?」

「まあ、使いやすいかな。あとは、ユリの好みだな」

「昔、違うチップを使ったら、燻製臭すぎて食べるのが辛かったことがあってね。私の好みは桜らしいのよ」


「臭すぎるのは、確かに食べにくいと思うにゃ」

「買ってくるベーコンやソーセージは、そんなに燻製臭くないからね」

「成る程にゃー」


「ソウ、明日はよろしくね」

「任された!」

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