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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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記念

今日は、ユメと出会って、丁度一年になる。

世間的には5年経っているが、体感的には丁度一年だ。

一年前の今日、ソウが、可愛らしい黒猫を連れて帰ってきた。その黒猫はソウによると、轢かれていたのを助けたら懐いたので、連れてきたらしい。

ユリが名前をつけると、なんと、可愛らしい猫耳幼女になって挨拶してくれたのだ。


懐かしいなぁ。と、ユリは出会った頃を思い出していた。


「おはようにゃ」

「あら、ユメちゃん早いわね。おはよう」

「手伝うのにゃ!」

「ありがとう。今日は記念日だから、疲れない程度にお願いするわね」


ユリが記念日と言うと、ユメは何か考えているようだった。


「何の記念日にゃ? お店の開店記念日にゃ?」

「ユメちゃんと出会った記念日よ!」

「にゃ!今日が、ユリと初めて会った日なのにゃ?」

「そうよ。ユメちゃんに初めて会って、名前をつけた日よ。アルストロメリアの開店記念日は、今週末で、イベントは週明けの予定よ」


ユリは材料を揃えながらユメと話していた。


「私は、どうやってここに来たのにゃ?」

「ソウが、連れてきたわ。ユメちゃん、馬車にぶつかって怪我をしていたらしくてね。私が名前をつけたら、ちっちゃいユメちゃんになって、可愛くてビックリしたわ」

「ちっちゃいにゃ?」


ユメはユリの言葉がピンと来ないようで、首をかしげていた。


「私は小さかったのにゃ?」

「そうね。ここに来たときは、黒猫だったけど、ご挨拶をしてくれたときは、今のキボウ君と同じくらいの身長かしら」


ユメの記憶の、自身が小さかった頃は、もう欠けてしまったらしい。

ユリは慌てた様子を見せないように、ユメの質問に答えていた。


「小さかった私は、ユリに迷惑をかけなかったにゃ?」

「え? 迷惑なんて一度もないわよ。むしろ、何度もユメちゃんに助けてもらったわ」


実際にユリのピンチに、ユメは当時の少ない魔力を使って、ソウを呼んでくれている。


「それなら良かったにゃ」


ユメが笑顔になった。ユメは、迷惑をかけていないかどうかばかり気にしている。


「ユメちゃん、ユメちゃんが思い出せないことがあっても、私はユメちゃんが大好きだし、迷惑なんて一度もかけられたことはないわ。だから、焦ったり、無理したりしないでね」

「ユメー、だいじー、だいじー」

「キボウ君、おはよう」

「おはよー、おはよー」


キボウが来たので、話を中断した。すると、ソウも帰ってきた。


「ただいまー。キウイ買ってきたよ」


フルーツオムレットに使うため、ソウに、キウイフルーツ等の買い物を頼んだのだ。


「ユリ、他に足りないものはない?」

「大丈夫よ。ありがとう」


みんな来たので、仕事を振り分けることにした。


「ユメちゃん、クレープ焼いてみる?」

「良いのにゃ!?」

「普通の、赤っぽいの、黄色っぽいのどれが良い? 」

「何が違うのにゃ?」

「中身を分かりやすくするためだから、違いは色だけのつもりよ」


ユリは、うっすら色がつくようにクレープ生地を作った。

黄身の色が濃くなるような餌を与えていない鶏のため、こちらの卵で作ると、卵料理は割りとなんでも黄色が薄く白っぽく出来上がる。赤系統の色を足しやすいが「黄色が濃いと美味しそう」と刷り込まれた元の国の人には、安っぽく見えるのだ。こちらでは、黄色味が強いと味が濃そうと言う概念がないため、食べてからしか判断しない。

卵の黄身の色は、鶏が食べた餌に左右される。


「普通の作るにゃ!」

「焼き方教えるわね」


ユリは、すでに混ぜて寝かせてあるクレープ生地を持ってきた。クレープは、生地を混ぜてから一度寝かせた方が上手く焼ける。


「クレープ用の小さいフライパンをしっかり温めて、少量のバターを溶かし、生地をこのレードル1杯分入れて、回りが乾いて浮いてくるまで焼きます。焼けたら、竹串か、素手か、小さめのヘラを使って剥がして、ひっくり返し、表面を少し焼いたら、こっちのトレーに少しずつずらして重ねていきます」

「火は消さないのにゃ?」

「火加減をそのままにしておけば、失敗せず、綺麗に焼けるわよ」

「成る程にゃー」

「わからなかったらまた聞いてね」

「わかったにゃ」


ユメは楽しそうに、クレープを焼き始めた。

今度はソウが聞きに来た。


「ユリ、俺も何かすることある?」

「手伝ってくれるの? クレープを焼くのと、果物を切るのと、どっちが良い?」

「果物切るよ」

「各種約100個作る予定です。バナナ50本は半分切り、苺Lサイズ54個半分切り、キウイフルーツ7個を16等分、缶詰の黄桃は約8等分で、108カット以上お願いします」

「了解した」


ユリはカスタードクリームの仕込みを始めた。


「おはようございまーす。って、もう始めているんですか?」


リラとシィスルが来て、ユメやソウが手伝っているのを見て驚いていた。


「今日は記念日なのよ。うふふ」

「何か予告ありましたっけ?」

「予告は出していないわ。ユメちゃんが、うちに来た記念日なのよ」


リラとシィスルは、マヨネーズを作ったあと、ユメのところに行き、クレープを焼いていた。


マリーゴールドが出勤してきた。いつもより少し遅めだ。


「おはようございます。あら、リラさん、まだこちらにいらして大丈夫なのでございますか?」

「え?やだ、もうマリーゴールドが来る時間!?」


リラとシィスルは、慌ててベルフルールに戻っていった。


「マリーゴールドちゃん、おはよう」「おはようにゃ」「おはよう」

「皆さまおはようございます。ユリ様、今日の予定を教えてくださいませ」

「一覧渡すわね。9時半からで大丈夫よ」


ユリは、走り書きをマリーゴールドに渡した。


◇ーーーーー◇

クレープ生地仕込み 3種類

スポンジ焼成 4号80台

カスターC(牛4L、黄40、グラ900、粉120、ス120)

━━━━━━━━━━━━━━ここまで終了

バナナ半分切り50本 100個分

各種フルーツカット 黄桃、苺、キウイ 108個分

普通のクレープ110枚

━━━━━━━━━━━━━━作業中

ビーツ入りクレープ125枚

くちなし入りクレープ125枚

スポンジ、1cmスライス320枚

苺ヘタ取り324粒、3個セット108組

生クリーム泡立て


お昼ご飯、カレーの予定

肉、ニンジン、玉ねぎ、じゃがいも、皮剥きとカット

コールスロー用キャベツ、ニンジン、カット。コーン水切

カレー煮込み、炊飯

カレー仕上げ、サラダ仕上げ

◇ーーーーー◇


予定表を見たマリーゴールドが、質問してきた。


「ユリ様、カスタードクリームの横に書いてございます、牛乳、卵黄、グラニュー糖、薄力粉、の後の『ス』は、なんでございますか?」

「あら、よく他のは判ったわね。最後のは『スターチ』で、コーンスターチよ」


作ったことがあるので、判ったらしい。


「全て薄力粉ではないのですね」

「固さと口当たりが少し違うのよ。全部薄力粉でも良いのよ」


マリーゴールドは、予定表を頭に叩き込んだあと、冷蔵庫を開けて色々確認し、「赤いクレープ作ります」と言って準備していた。

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