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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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解放

休み時間が終ると、イリスの指導でメリッサの教育が始まった。


特にユリは何か聞かれることもなく、料理に専念できたので、イリスの指導はとてもありがたかった。指導されるメリッサも、気心の知れたイリスから教わるので、細かなことも聞きやすいらしく、楽しそうに仕事をしているようだった。


シィスルとマーレイは、追加分のコロッケ用の挽き肉と玉ねぎのみじん切りを作り、コロッケの生地を作っている。

ユリが、鰹節と醤油を混ぜたおにぎりを握っていると、声をかけられた。


「ユリ、私は何をしたら良いにゃ?」


ユメが、深刻な顔をして聞きに来た。


「好きなことをして良いわ。ユメちゃんはユメちゃんであるだけで充分なのよ。ユメちゃんの好きなようにして構わないのよ。お店を手伝うのも、作るのを手伝うのも、他にしたいことがあればそれをしてもね。私としては、お手伝いはとてもありがたいわ。ずっとユメちゃんに感謝しているわ。ユメちゃんが居なかったら、お店が成り立たなかったもの」


ユメは少し驚いたあと、ユリの顔をうかがうように聞いてきた。


「手伝っても良いのにゃ?」

「勿論よ。ありがとう!無理のない程度にお願いします」


ユリとしては、ユメに無理をさせてきた自覚があるので、強制的な労働から解放してあげたかったのだが、ユメにしてみれば、新しく人を雇ったから要らないと言われたような気がして寂しかったのだ。


ユメは笑顔になり、お店に配膳を手伝いに行った。


「ユリー、キボー、てつだう?」

「キボウ君も、手伝ってくれるならとてもありがたいけど、無理しないでね」

「わかったー」


ユメとのやり取りを見ていたのか、キボウまで不安になってしまったらしい。


ユリ的には、キボウのように、少しだけ手伝って、あとは自由にしてくれたら良いなと考えていたのだ。

ユリに言えた事ではないが、少しゆっくりすれば良いのに、仕事をしていないと落ち着かない人ばかりである。


「コロコロコロッケ、追加いくつまで可能にゃ?」

「今作ってるけど、普段の来店数から逆算すると、お一人様合計4個が限界かしら」

「なら、注文通すにゃ。コロコロコロッケ15セットにゃ!」

「コロコロコロッケ15セット、了解です」


お店が始まるなり、30個(15セット)の注文があり、今追加で30個注文された。すでに少し足りないのだ。


「ユリ様、私が丸めてユリ様が衣つけるのでも良いですか?」

「良いわよ。代わりましょう」


マーレイも作る方を手伝っているので、とても早い。シィスルが一人で衣をつけるのが追い付かなくなり、ユリに交代を申し出てきた。どうやらシィスルは、フライの衣付けが苦手らしい。

ユリは油の温度を確かめ、とりあえず先に30個揚げることにした。


「ハナノ様、こちら全てコロッケにされますか?」


マーレイが珍しく質問してきた。蒸し器に残っている芋について聞いているようだ。


「蒸し器にあったのは300個くらいできそうなお芋の量なんだけど、保存分できるかしら」


追加分として、1/3にあたる、コロッケにして100個分くらいを使い、残りは200個分くらいあるのだ。


「先程の感じのままですと、むしろ足りないのではないかと思われます」


ユリも薄々感じていたが、マーレイに言われて覚悟を決めた。


「マーレイさん、シィスルちゃん、更に追加で挽き肉と玉ねぎのみじん切り、お願いします」

「かしこまりました」「はい!」


混ぜてあるコロッケの具があるだけ生地を丸めると、マーレイとシィスルは、分担して追加分の挽き肉と玉ねぎのみじん切りを作り始めた。

ユリは、丸まっているコロッケの生地に衣をつけ、30個ずつ揚げていった。もちろん出来上がりを魔道具の鞄にしまい、注文には即対応した。


「ユリ、イチゴプリン15個にゃ。持ち帰りはどうするのにゃ?」

「冬箱を持っているなら有る限り売るわよ」

「とりあえず5個、持ち帰り注文にゃ。冬箱預かってくるにゃ」


ユメが笑顔で元気に仕事をしていた。

ユリは思った。ユメの仕事を減らした方が良いと思うのは、自分の自己満足で、傲慢な考えだったのかもしれないと。


ユリは、他人に頼るということをほとんどしない。それは信用していないとかではなく、迷惑をかけたくないという考えからだ。しかし、頼られる側も相手を選ぶが、好きな人から頼られるのは嬉しいのである。


ある程度揚げてしまい、ユリは衣つけに戻ってきた。

次の仕込みを始める前に、シィスルとマーレイが小麦粉までつけておいてくれたらしく、ユリは卵とパン粉だけつければ良くなっていた。


「なぜそのスピードで、崩れずにできるのですか!?」

「慣れよ、慣れ」


ユリの衣付けを見たシィスルが、驚いていた。

実際、数をこなせば ある程度は早くなるのだ。


ついでにと、豚肉を厚切りにして、豚カツも作った。

夕飯に、カツ丼を出そうと考えている。


「マーレイさん、メリッサさんのお家は、何人いらっしゃるの?」

「メリッサの両親と子供の4人暮らしのはずです」

「コロコロコロッケ、いくつあれば良いかしら?12個くらいで良いかしら?豚カツも持たせたら食べるかしら?」

「とても喜ぶと思います」




結局この日、コロコロコロッケは、約300個注文があり、残りは70個ほどだった。メリッサのお土産用と、ユメのリクエストに使ったら、おやつ用くらいしか残らない。


「うわー。本当に残らなかったわ」

「美味しい新しい物は、良く売れるのにゃ!」

「そうだったわね。忘れていたわ」


ユリは、帰る用意をしたメリッサを呼び止めた。


「メリッサさん、これ、約束のコロッケと、夕飯の豚カツよ。良かったら持ち帰ってね」

「あ、ありがとうございます!こんなにたくさん、本当にありがとうございます。明日も頑張ります!」

「はい。期待しています。でも無理はしないでね」

「はい。ありがとうございます。お先に失礼します」


メリッサを見送ってから、浅漬けをだし、みんなでカツ丼を食べた。

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