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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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破裂

ユリは、蒸し器で蒸かしていたじゃがいもの皮を剥き、ポテトマッシャーで潰した。味をつけて炒めておいた挽き肉と玉ねぎのみじん切りを合わせ、コロッケの種を作った。


チーズを1cm角程度にカットし、コロッケの中心に入れ、丸い、コロッケの形を作っていった。


シィスルが仕込みを始めてしまい、手の空いたメリッサが覗きに来た。


「ユリ様、こちらは何を作られているのですか?」

「これは、コロッケよ」

「コロッケは、王宮にいた頃に、食べたことがありましたが、もっと平べったい形で、中に何か入っていたりはしませんでした」

「あーそうね。これはコロコロコロッケよ。お店でも出していないわ。賄いでのみ作っていたから、リラちゃんが公開しなかったのかもしれないわね」

「特別製なんですか!?」

「手間がね。ランチを出していた頃って、90人前くらい作っていたから、これを500~600個とか作ったら、発狂しそうよ。うふふ」

「手伝いたいです」

「なら、お願いするわ」


賄い8人前で、1人6個でも、48個必要だ。材料的には、100個くらい作れるように用意してある。


パウンドケーキを仕込んでいるシィスルも、こちらが気になっているみたいなので、ユリはシィスルと交代することにした。


「中心に、この切ったチーズを入れ、丸めます。全部丸め、生地が冷えてから、まわりに小麦粉を薄くつけ、溶き卵をつけ、パン粉をつけ、食べる前に油で揚げます。菜箸が無理そうなら、スプーンかフォークを使ってください」


ユリは二人に作り方を教えると、途中まで終わっているパウンドケーキを引き継ぎ、型に流し入れた。

ならしたあとパイピングをして、オーブンに全て入れた。


豚バラを巻いたアスパラガスを串にさし、うずらの卵4個を串にさし、くし切りの玉ねぎにも崩れないように串をさし、コロッケを作っている二人より先に、衣をつけた。

冷蔵庫にしまい、クッキーを仕込んでいると、ユメとキボウが一緒に来た。


「ユリー、手伝いに来たにゃ!」

「キボー、てつだうー!」


「二人ともありがとう。クッキーお願いします」


黒猫クッキーを生地の状態で渡すと、ユメが型抜きからしてくれる。ユリはさっさと世界樹様のクッキーを作り、空いているオーブンで焼いた。キボウは、ユメに聞きながら、黒猫クッキーを手伝っているようだった。


ユリは茶碗蒸しを作り、蒸している間に、イチゴプリンを仕込んだり、焼き上がった世界樹様のクッキーを取りだし、ケーキクーラーにのせ、代わりに黒猫クッキーをオーブンに入れた。

(ケーキクーラー=焼き物を冷ますための網や台など)


茶碗蒸しと入れ換えで、イチゴプリンを蒸し器に入れ、世界樹様のクッキー用の抹茶のアイシングを用意した。


「キボウ君、そろそろクッキーお願いします」

「わかったー」


ユリがキボウと世界樹様のクッキーを仕上げていると、メリッサが、シィスルに何か質問しているのが聞こえた。


「えーー!!! そんなに凄いものなんですか!!」


突然メリッサが叫んだ。

大方、キボウの時送りの事でも聞いたのだろう。


「ユリ様、コロッケ終わりました。油で揚げるだけになっています」

「ご苦労様。少し飲み物を作って休んでちょうだい。メリッサさんにも何か作ってもらえる?」

「はーい」


シィスルは、ユメの分も何か作ってくれたらしい。

ユリは、キボウに飲みたいものを聞いた。


「ユメ、おなじー、キボー、のむー」

「ユメちゃんと同じの飲むの?」

「あたりー!」

「ユメちゃーん、それなあに?」

「アイスココアにゃ」

「ありがとう」


キボウにもアイスココアを作り、蒸し器からイチゴプリンを出し、オーブンから黒猫クッキーをだし、ユリも一休みした。


「ユリ、それはなんにゃ?」

「イチゴ味のプリンよ」

「まだ食べられないのにゃ?」

「だいぶ熱いわね。強制的に冷まして食べる?」


普通のプリンなら、熱くても結構美味しいのだが、イチゴプリンは、熱いと酸っぱいのだ。


「何個冷やせば良いにゃ?」

「全員分なら8個かしらね」

「キボウ、頼んでも良いにゃ?」

「いーよー」


又、ユメが冬箱に充填し、キボウが2回の時送りをして、イチゴプリンを強制的に冷やしていた。


ユリは急いで生クリームを泡立て、絞り袋に入れた。

苺を半分にカットし、キボウが時送りしたイチゴプリンを受け取り、上に生クリームでローズバッドを絞り、半割りの小さい苺をのせた。

その間にシィスルが、オーブンからパウンドケーキを出してくれた。


「はい、どうぞ。皆さんにも配ってね」

「ユリ、ありがとにゃ!」


ちょうど来たマーレイにも、キボウが渡していた。

来ていないのは、ソウとイリスだけである。


マーレイは、自分でジンジャエールを作り、ニコニコして飲んでいた。



ユメとキボウが、皆にもイチゴプリンを配ってくれたので、ユリはマーレイが持ち込んだ野菜などを確認しに行き、戻ってくると、シィスルから聞かれた。


「ユリ様、このイチゴプリンの配合は教えていただけるのでしょうか?」

「大体、牛乳3:卵2:苺1:砂糖1の割合ね。イチゴは潰して液状にして加えます。作り方は、普通のプリンと同じよ。色を濃くしたいなら、少しだけビーツを混ぜると良いと思うけど、色を気にしないなら、上に苺を飾り付けた方が見た目が良いと思うわ」

「確かに、見えませんものね。上に飾りの苺がある方が、インパクトがありますね」


ココットに作っているので、横から色が見えたりしないのだ。


「苺がない季節は、イチゴジャムを使っても作れるわよ。その方が、苺が濃いから色が濃くつくわね。他には、生チョコに使っていたフリーズドライ苺なら、牛乳4:苺0.1:卵2:砂糖1くらいかしらね。苺は粉にして、砂糖と混ぜてから牛乳に溶かすと良いわ。もっと柔らかく作りたいなら、牛乳を増やすか、生クリームを足すと良いわよ」

「あ、ありがとうございます」


「今回のは、牛乳1500mg、全卵1000g、苺ピューレ500g、グラニュー糖450g、生クリーム100ml、クレーム・ド・フレーズ50mlね」

「え、最後 のはなんですか?」

「クレーム・ド・フレーズは、苺のリキュールよ。無ければ、ラム酒とかブランデーで良いわ。乳臭さが軽減するわよ」

「どうもありがとうございます!」


小休憩が終わり、荒熱のとれたイチゴプリンを冷蔵庫にしまった。

ずいぶん冷えるのが早いなと思ったら、キボウが全体に最初の時送りをしたらしい。ユメが冬箱に入れたものだけ、2度目の時送りをして皆に配ったようだ。


仕事を再開し、コンロに油を温め、お昼ご飯の用意と平行して2度目の茶碗蒸しを作った。こちらは温かいまま提供する用だ。シィスルが教えてほしいと見に来たので、ユリは指示を出しながら茶碗蒸しはシィスルに任せた。


「メリッサさん、あなた、揚げ物は出来るの?」

「申し訳ございません。経験がありません」

「やってみる?」

「はい!」


冷蔵庫から衣のついた材料を出してきた。


「コロッケは、油が適温でないと、爆発することがあるから、しっかり温度を確かめてから揚げるのよ」

「ば、爆発!?」

「温度か低すぎるところに入れて、急激に温度が上昇すると、破裂するらしいわ」

「破裂・・・」

「心配なら、アスパラガスの豚バラ巻きと、玉ねぎのくしぎりを揚げたら良いわ。爆発しないから」


ユリは、コロッケと、うずらの卵を担当することにした。


「箸は使える?」

「申し訳ございません」

「別に謝らなくて良いのよ。なら、これね」


ユリは、長いトングと揚げ物用の網を渡した。


「リラは、箸で調理が出来るのですか?」

「そうね。リラちゃんは、最初から箸で衣をつけたり、揚げ物をしたりしていたわね。特に教えた訳じゃないんだけど、見て覚えたって言っていたわ」


慌てた様子で、イリスが来た。


「遅くなりましたー」

「無理に急がなくて大丈夫よ」


イリスはマーレイに何か説明すると、こちらに来た。


「ユリ様、少しメリッサに話をしてもよろしいでしょうか?」

「構わないわよ」


メリッサは、イリスにつれていかれた。


「揚げ物代わりまーす」


シィスルが、メリッサに代わり、揚げ物を手伝ってくれるらしい。茶わん蒸しが蒸し器に入れ終わり、手が空いたようだ。シィスルは特に説明しなくても、大丈夫らしい。


「ユリ、お皿用意するにゃ?」

「ユメちゃんありがとう」

「キボー、てつだうー」


ユメがキボウに指示を出してくれ、カトラリーやお茶を用意してくれた。


「ユリ、ご飯炊けたみたいにゃ!」

「混ぜてください」

「やってみるにゃ」


心配そうにマーレイが見に来て、少し手伝っていた。


「ご飯、たくさんにゃ。お店にも使うのにゃ?」

「焼おにぎりを作ろうと思って。茶碗蒸しと一緒に良いかなって思ったのよ」


蒸し上がった茶碗蒸しを取りだし、揚げ物が終わり、お昼ご飯の用意が整った。

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