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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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藁稭

ユリがそのまま外に行こうとすると、ソウに止められた。


「ユリ、デニムは、この国ではまだ無理だ」

「あー。スカートに変えるわ」


見た目が、デニムパンツに見える、スキニータイプのぴったりしたものだった。

ユリが部屋に戻り、スキニーパンツをスカートに履き替え廊下に出ると、キボウが待っていた。


「ユメー、こうかーん。キボー、えらいー!」

「え?」


ユメちゃん、交換って、どういうこと?

ユリは焦った。ユメと、何かを交換したのかと思ったのだ。


「ユメちゃんはどこにいるの?」

「そとー!」

「ユメちゃんは1人で外にいるの?」

「リラー」

「ユメちゃんとリラちゃんが一緒に外にいるの?」

「あたりー!」


ユリは急いで、外までユメを探しにいった。


ユメとリラは、椅子つきテーブルを広げ、店の前でのんびりとお茶を飲んでいた。ユリはそれを見て、やっと落ち着いた。


「二人とも何してるの?」

「ユリ、お帰りにゃ!」「ユリ様、お帰りなさい!」

「あ、ただいま。キボウ君が、ユメちゃんが交換で、キボウ君が偉いって言いに来たんだけど、なんだかわかる?」


二人は、少し笑いながら説明してくれた。


ユリが出掛けたあと、ユメとリラとキボウで、こごみを採りに行って、キボウは安全のために、リラに紐で繋いで連れて行ったらしい。

その時にキボウが、草蘇鉄(くさそてつ)を植木鉢用に、いつもの掛け声の魔法で掘り出してくれたそうだ。

その後、お天気が良いからと、店の前にテーブルを広げ、花を見ながらお弁当を食べていたら、通りすがりの人に羨ましがられたので、お弁当を分けた。すると物々交換で、アスパラガスを貰ったらしい。それを立てた方が良いとキボウが言ったことや、バタフライピーの花がたくさん咲くとキボウが言うのを誉めたんだそうで、その事だろうと長い説明をされた。


「何か、色々あったのねぇ」


ユメちゃんが無事でよかった。と、ユリはホっとした。


「ユリ様、アスパラガス、お店で使えないようでしたら、私が買い取ります」


え、アスパラガスって、売るほどあるの?

リラからの申し出に、ユリは困惑した。


「お金で買わなくて良いけど、どのくらいあるの?そんなに多いの?」

「目で数えたら、120本くらいあったにゃ」

「え!? お弁当いくつと交換したの?」

「冷たい鶏丼3つにゃ!」


120本が、1800(スター)!?

ココナツの器に入った鶏丼は、半鶏丼で、容器代込みで1つ600(スター)だ。店で売っていた頃よりも少し大きめの器に入っているとは言え、せいぜい1つ750(スター)くらいだ。


「だいぶお得価格の交換ね」


ユリは「交換」の真相を知り、気が抜けて笑ってしまった。


「そうなのにゃ? リラが、お弁当は1200(スター)くらいだから、35~40本くらいが適正って言ったにゃ」


商売っ気の多い、リラの助言らしい。

どうやらリラは、店売りの鶏丼1000(スター)と、持ち帰りの半鶏丼600(スター)と値段の記憶がごっちゃになっているようだ。

話していると、キボウが話題のアスパラガスを持って現れた。


「これー!」


予想よりも、ずいぶんと立派なアスパラガスだった。

これはあれだ、わらしべ長者だ。ユリはそう感じた。


ユリが作ったお弁当なので、ユリ本人がわらしべ扱いは良いのだが、ユリの作ったお弁当は、ランチ営業をしていない今、欲しかった人からは、幻扱いをされるくらい貴重な品なのだ。


「キボウ君、ありがとう。キボウ君が偉かった話を今聞いたわ。ユメちゃんに、草蘇鉄の植木をありがとう」


キボウはユリにも認められ、ニコニコして満足そうだった。


「そういえばキボウが、オストーリッチファーンって呼んでたにゃ」


駝鳥羊歯(だちょうしだ)?」

「ソウ、お帰りにゃ」「ホシミ様、お帰りなさいませ」

「ただいま」


ソウは、寿司を持って現れた。片手に4つずつの8人前だ。


「草蘇鉄の英名だったか学名だったかが、オーストリッチファーンよ。日本語でも駝鳥羊歯でも通じることもあるわよ」

「成る程にゃ。でも駝鳥より、孔雀(くじゃく)って感じにゃ!」

「うふふ、そうね」


「あ、リラ、ユリから寿司だ。そちらの分で8人前だから、食べる直前まで預かっておくよ」

「握り寿司ですか!? 凄ーい! ありがとうございます!!」

「握り寿司だ。マーレイにも、食べるときに取りに来るよう連絡しておいてくれ」

「はーい!ありがとうございます!」


リラは、何人かに以心伝心を送っているようだった。

ソウは握り寿司をユリに渡し、ユリは鞄にしまった。


「俺は、パープル侯爵に、片付けのお礼をしに行ってくる」

「あ! 今回は全員帰っちゃったから、あとを引き受けたのがパープル侯爵なのね!」

「そういうこと」


そうすると、パープル侯爵は、スタッフとしてあの場に居たことになり、国代表として、国王夫妻が来ていたのだろうと、ユリにも理解できた。


「ユリ、次はいつにゃ?」

「3日後の13日水曜日(みずのひ)よ」


「ソウ、何をお礼するにゃ?」

「侯爵が気に入ってるシャンパンを買ってきた」

「クリスマスのときのにゃ?」

「飲まないのに、良く覚えてたな」


ユメの記憶に驚いたあと、ソウは転移していった。


「あ、リラちゃん、お願いがあるんだけど、」

「はい。なんですか?」

「昨日、お城に行ったときに、謎アイスクリームが出されてね、材料当てをしたのね。私は楽しかったんだけど、私を試したってことで、問題になったみたいで、料理人が気に病んでいるみたいなのね。それでリラちゃんから、大丈夫だと説明してもらいたいのよ」

「わかりました。今行きますか?」


リラは今、時間が大丈夫らしい。ユリはキョロキョロと、キボウの姿を探した。


「キボウ君ー。リラちゃんをお城の厨房に連れて行ってもらえる?」

「いーよー」

「私も行くにゃ!」

「キボウ君、ユメちゃんと、リラちゃんをお願いします」

「わかったー」


キボウは、ユメとリラと手を繋ぎ、転移していった。


みんなが出掛けてしまったので、ユリは予想以上に減ってしまったパウンドケーキを作ることにした。


オーブンをセットし、コックコートに着替えに行った。

上下白衣を着て、計量し、型を準備していると、リラとユメとキボウが帰ってきた。


「あー!ユリ様、なにやってるんですか?」

「パウンドケーキ、予定外に売れちゃって、足りないのよ」

「いくつ売れたんですか?」

「売ったのは100本だけど、使ったのは、120本でね。残りが30本しかないのよ」

「勿論手伝います!」

「あはは。ありがとう。アスパラガス、100本くらい持って行ってね」

「ありがとうございます!」


ユメもキボウも手伝ってくれたので、2回分仕込み、50本できた。

藁稭=わらしべ

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