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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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山菜

転移組里帰りの日の午前中。


「ユリ、川に格好良い草があるにゃ」

「格好良い草?」

孔雀(くじゃく)の羽みたいにゃ」


ユメが指差した方向には、羊歯(しだ)植物らしき群生があった。

ユメとキボウは、畑の植物に水やりをしていて、その時に見つけたらしい。二人を呼びに来たユリに、教えてくれたのだ。


「んー、あれ?あれって、草蘇鉄(くさそてつ)?」

「あたりー!」


キボウのお墨付きが出た。

川の南側、つまり、法面(のりめん)で少し木の影になる場所と橋の下に、まだ開ききっていない葉が丸まった羊歯があり、良く日の当たる場所に、わさっとした逆三角形に見える羊歯が群生しているのだ。


「ユメちゃん、あれ、山菜だわ」

「食べられるのにゃ?」

「山菜名は、こごみとか、こごめとか呼ばれる、食べやすい美味しい山菜よ。あく抜きも必要ないし、茹でて胡麻和えとか、天ぷらが最高よ」

「食べてみたいにゃ」

「たべるー、たべるー」

「ちょっと下りて採ってきましょう」


ユリが長靴とナイフと籠を取りに行って戻ってくると、リラが居た。


「ユリ様、おはようございます。お出掛けは何時ごろですか?・・・えっと、その水用の履き物は?」


リラは、ユリが手にしている長靴が気になったらしい。


「リラちゃんおはよう。川原に山菜があるから取りに行こうと思って、」

「少々お待ちください。私も履き物を取ってきます!」


山菜という言葉を聞くや否や、リラは濡らしても良い履き物を急いで取りに戻っていった。


「私のご飯を心配して、ユリが何時に出掛けるか聞きに来たのにゃ」

「あら、本当に偶然なのね」

「呼んではいないのにゃ」


勘の良さが凄いわね。とユリが考えていると、意外な告白があった。


「キボー、よんだー!」

「えー」「呼んだのにゃ?」


どうやら、キボウが呼んだらしい。リラが来るまでキボウに話を聞くと、ユリが出掛ける前に教えてほしいと頼まれていたようだ。


戻ってきたリラは、シィスルとマリーゴールドを引き連れていた。

キボウが川に下りないように、見ていてもらおうと考えたらしい。確かにキボウは軽いので、何かあったら流されてしまいそうなので、ユリもキボウには川に下りてほしくないと思っていた。


「キボー、まってるー。ユリ、リラ、くさそてつ、とるー。ユメ、いっしょいくー」

「私も見に行って良いのにゃ?」

「いーよー」


一緒に待っていてくれるシィスルとマリーゴールドがいるので、キボウは川に行かなくて良いらしい。


「お店の開始にかかったら迷惑よね。急いで採りにいきましょう」

「大丈夫ですが、楽しそうなので急いでいきましょう!」

「私も見に行くのにゃ!」


3人は川にかかる橋を渡ってから、橋の脇に有る梯子(はしご)を下りた。

ユリもユメもキボウも、転移すれば楽に河原まで行けるのだが、そういう使い方は思い付かないらしい。


「近くで見ても、格好良いのにゃ」

「え!これ、食べられるんですか!?」

「食べられるのは、これの若芽ね。全ては刈り取らないでね。育ってしまったものは、固くて無理だと思うわ」


まずは橋の下の、くるんと丸まった葉先のある、生えたばかりのこごみを収穫した。リラもユリに習い、同じような状態のこごみを、少し残すようにして収穫した。


「へぇ。これが食べられるんですか。羊歯はみんな食べられないと思っていました」

「羊歯というなら、(ぜんまい)(わらび)も食べられるわよ。ここにはなさそうだけど」

「え!そうなんですか?」

「ここに有ったとしても、残念ながら私には、(わらび)は見分けがつかないのよね。(ぜんまい)はわかるけど、大きくなった葉っぱを見ないと無理ね」


ユリとリラがこごみを収穫している間、ユメは日向に育った草蘇鉄を眺めていた。草蘇鉄は見た目も良いので、観賞用に庭に植える人もいる。


「ユメちゃん、それ持って帰る?植木鉢になら植えても良いわよ」

「畑はダメなのにゃ?」

「地下茎で増えるから、草蘇鉄だらけになってしまうわ」


とりあえず今は、収穫したこごみの下ごしらえをするので、帰ることにした。

後で大きいスコップを持って、堀りに来るつもりらしい。


橋の脇の梯子(はしご)を登り、店の前に戻ってきた。

籠を覗き込んだキボウが、リラの籠から数本を弾いていた。


「ちがうー!」

「ふぇ、違うの入ってました!?」

「あら、私も見ていなくてごめんなさいね」


シィスルとマリーゴールドも覗き混み、少しうろたえていた。


「こ、これ、食べられるんですか?」


まあ、知らなければ、食べ物には見えない見た目かもしれない。


「軽く茹でて、マヨネーズとかでも美味しいわよ」


話ながら、ユリの店の厨房にみんなで来た。

ユリは鍋に湯を沸かし、ボールに水を張ったものをみんなに配った。


「まずは、洗います。この丸まったところに、ごみが入っている場合があるので、優しく洗ってください」


ユメとキボウも参加して、6人全員で、こごみを洗った。


「採ってから時間が経ったものは、切り口が黒ずむので、その場合は、少し切り落としてください。今日はしなくて良いです」


沸いた湯に塩を加え、下処理したこごみをざっといれた。


「湯がく時間は、せいぜい1~2分です。太くて固そうな場合でも、3分以上茹でると茹ですぎかもしれません」


すぐにザルで掬い、冷水に移した。


「冷水に入れて、冷ますと同時に、わずかなアクを抜きます。水分を良く切って、出来上がりです」


「本当に手間要らずなんですね」

「そうね。とりあえず、マヨネーズでもつけて食べてみると良いわ」


冷蔵庫からマヨネーズをだしてきて、全員が食べてみた。


「美味しいにゃ!」

「おいしー!おいしー!」


「うわー。食べやすくて美味しい!」


シィスルとマリーゴールドも、おっかなびっくり食べてみた。


「あれ?食べやすい。美味しい!」

「アクもなく、美味しゅうございます!」


「ゴマ和えが美味しいわよ。天ぷらは、洗ったあと、茹でずに少し小麦粉をつけてから、衣をつけて揚げてみてね」

「ごまドレッシングでも良いですか?」

「あー、それなら店でも出せるかもしれないわね」


時計を確認すると、10時を過ぎていた。


「私はそろそろ出掛けるから、あとお願いね」

「あー、私たちも、店に戻ります!」

「ごちそうさまでございます」


シィスルとマリーゴールドも、仕事に戻っていった。


「戸締まりなど、しておきます!」

「よろしくお願いするわね」


リラにあとを任せ、ユリは階段を上がった。

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