試食
食事が終わる頃、デザートと一緒に、ユメとキボウとハイドランジアが来た。
「ユリ、デザートはみんなで食べるのにゃ」
「たべるー!たべるー!」
「ユメちゃんとキボウ君は、持ち込みランチだったの?」
「キボウと同じものを鞄から出したのにゃ」
「おなじー!おなじー!」
「大変美味しゅうございました」
どうやらハイドランジアも、ユリが、ユメやキボウに持たせたランチを食べたらしい。
運ばれてきたデザートは、アイスクリームだった。うっすら緑色で、何か粒が入っていて、なんだか不思議な味がする。
「ユリ様、ユリ様がいらしているならと、こちらを料理担当の者が、よろしければお召し上がりくださいと」
「ん?あ、材料を当てるの?」
「はい」
ものすごく期待した目で見つめられた。
もう一度、しっかり食べてみる。
青臭いってほどではないけど、緑色の野菜が入っているのだと思う。あ!わかった。
「これは、アスパラガスかしらね」
正解を聞きに行くらしく、一人下がっていった。
「ユリさま、これ、おやさいなんですか!?」
「ほとんどはアイスクリームで、少しだけあとからアスパラガスを混ぜた感じかしらね?」
カンパニュラが驚いていた。
「枝豆かと思ったにゃ」
「枝豆だと、もう少しコクが有ると思うのよね」
「私は、野菜のアイスは南瓜が良いにゃー」
「かぼちゃもアイスクリームになるのですか!?」
「南瓜は、プリンにもなるし、クッキーにもなるし、お菓子に使いやすいのよ」
「すごいのですね」
カンパニュラは、野菜がお菓子になると知らなかったらしい。
「南瓜や紫芋は、私が元いた国で、アイスクリームの味にありました。色も綺麗ですし、美味しいですよ」
「いつか機会があったら、食べてみたいです」
「わたしも、たべてみたいです」
「では、そのうち、お持ちしましょう」
サンダーソニアとカンパニュラが、喜んでいた。
「ユリ、開催日と作る物は決まったのにゃ?」
「再来週のEの日よ。4月23日ね。カラースワンと、琥珀糖を作る予定です」
ユリの言葉に、キボウが目を輝かせた。
「ユリー、キボー、てつだう?」
「あら、キボウ君 手伝ってくれるの?どうもありがとう」
キボウが何を手伝うのだろうとみんなが思ったらしい。ハイドランジアが質問してきた。
「ユリ様、キボウ様はお菓子を作られるのですか?」
「キボウ君は、時送りの魔法で、本来1週間かかる琥珀糖を、当日中に出来上がるようにしてくれます」
「す、凄いのですね・・・」
「本当に凄いのですよ。私では、キボウ君の使う時送りの短い1回分で、真似て倒れかけましたから。うふふ」
それでもなんでも、ユリも使えることをみんなが驚いた。
みんなで話していると、聞きに行ったらしい人が戻ってきた。すぐにサンダーソニアのお付きの女性に紙を渡していた。
「あ」
紙を読んだ女性が、少し笑っていた。
「どうしたの?何が書いてあったの?」
「はい。ユリ様、料理人たちは、‘’リラちゃん‘’が一緒に来ているものと思い込んでいたそうでございます。そして、今、どう償えば良いかと、悩んでいるようでございます」
「ん?なぜ? その手紙は誰からなの?」
「この手紙自体は、△□○からでございます」
「え?」
ユリの語録に無いために、言語化されなかった。
「ユリ、執事みたいなものにゃ」
「ユメちゃんありがとう。それで、なぜ償いが必要なの?」
「ユリを試したからにゃ」
「え?うーん・・・私は楽しかったわよ?直接伝えられないだろうから、そのうちリラちゃんに、直接伝えるために顔出してもらうわ。そう伝えてくれる?」
「かしこまりました」
急いでメモを取り、文章化していた。
「ところで、正解はどうなのかしら?」
「アスパラガスで、正解だそうでございます」
「いくつくらい試作したのかしら?むしろ聞いてみたいわね。うふふ」
きっと試作した中で、一番美味しくて、分かり難そうなものを持ってきたのだろうと思う。
「さ、デザートもいただいたし、そろそろ帰るわね。ローズマリーさんとラベンダーさんが、返事を待っていると思うしね」
「ユリさま、どうもありがとうございます!」
「ユリ様、どうもありがとうございます」
カンパニュラとサンダーソニアがお礼を言うと、ハイドランジアが立ち上がり、正式な礼をして挨拶してきた。
「ユリ様、サンダーソニアとカンパニュラをよろしくお願い致します」
「はーい。再来週、頑張りましょう」
ユリは、転移のために、ソウの部屋に案内してもらった。
「ユメちゃんとキボウ君は、一緒に来る?」
「いっしょ! いっしょ!」
「私も一緒に行くにゃ」
ユリが、二人の手を繋いで転移した。
「どこにゃ?」
いつもと違う部屋に転移したため、ユメが不思議そうに呟いた。
「パープル邸よ。私の部屋ですって。ユメちゃんも、使ってね」
「わかったにゃ」
ユメは少し安心したように、微笑んでいた。
ユリは、ローズマリーに開催日を知らせ、すぐにレッド公爵邸に移動し、ラベンダーに知らせ、責任を果たし、家に戻ったのだった。




