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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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先触

王宮の自室は、転移には向かないらしいので、ユリは、ソウの部屋に転移した。

部屋にあるハンドベルを鳴らすと、メイドではなく、カンパニュラとサンダーソニアが直接来た。


「ユリ様!お待ちしておりました!」

「・・・二人とも早いわね」


ついさっき、同じ状況で同じことを思った気がする。


「はい。ローズマリーから連絡をもらい、隣の部屋で待っておりました」


ユリがしない先触れを、しておいてくれたらしい。なんともありがたい。


「では、早速。うふふ」

「ユリ様、来週か再来週とうかがいました」

「そうね。カンパニュラちゃんの予定を聞こうと思って来たのよ」

「はい。わたしは、はやくつくってみたいです。でも、いまれんしゅうしている がっきのはっぴょうが、うまくいかなくて、23日のEの日(だいちのひ)がいいです」

「何か、楽器を習っているの?」

「はい。ふえです」

「へぇ。どんな笛?」


ユリの言葉に、部屋にいたカンパニュラのお付きの女性が、笛を持ってきた。

見た目は、オカリナのような笛だ。


「これ、私が吹いても大丈夫?」

「はい。大人用の新しいものでございます」


ユリはオカリナのつもりで、音階を奏でた。


「あ、大丈夫そうね」


簡単に童謡を一曲吹くと、驚いていた回りの人たちが我に返り、褒め称えた。


「初めて見た楽器で、音楽が奏でられるものなのですか!」


サンダーソニアが、ユリに尋ねてきた。


「私の回りに、ほとんど同じと思われる楽器があったのよ」


「ユリさま!どうしたら、そんなにじょうずに ふけるようになりますか?」

「楽器をいきなり吹くよりも、発声練習で、息を同じ強さで長く吐き出せるようにすると、音が安定するわよ」


ユリは、リコーダーの吹き方のコツを説明してみた。

カンパニュラは、自分の楽器も持ってきてもらい、少し吹いてくれた。


ちゃんと出来ているのに、自信がないのが問題のようだった。


「カンパニュラちゃん。楽器、楽しんで吹いてる?」

「え?たのしい、ですか?」


うーんと、唸って悩んでしまった。


「楽器は楽しいと思って、自信をもって演奏すると、もっと上手に吹けるわよ」


サンダーソニアに聞いたところ、先生がかなり厳しく、怖いらしい。先生に萎縮してしまっているようだ。


「専業の演奏者になるのでなければ、楽しく演奏するのが一番だと思うのだけどね」


大人はみんな、成る程と頷いていたが、当事者のカンパニュラには、理解できないらしい。


「ユリ様、他にも演奏できる楽器はございますか?」


話の流れを、サンダーソニアが変えてきた。


「弦楽器と打楽器以外は、簡単にならたぶん出来ると思うわ。結婚式の時に見た楽器なら、金管楽器はたぶん吹けるわね。木管楽器は音階だけかな。鍵盤楽器は右手(主旋律)だけなら、なんでも弾けるわよ」


ユリは幼い頃は電子オルガンを習い、中高生の頃はブラスバンドにいたのだ。上手かどうかはともかく、トローンボーン以外の金管楽器はそんなに操作が変わらない。ちなみに、ユリの身長(150cm)だと、トロンボーンの一番遠い、第七ポジションが届かない。


「今度、何か楽器を持ってくるわね」

「はい!たのしみにしてます!」


「あと、参加者は、カンパニュラちゃんの他は、誰が来るの?」

(わたくし)もよろしいでしょうか?」

「はいどうぞ」


一番に発言したのは、サンダーソニアだった。カンパニュラも安心できることだろうし、ありがたい。


「他にはいないの? なら、指名しても良いかしら?」

「はい」

「あなた方のお付きの人から一人ずつ出してちょうだい」


ユリの発言に、カンパニュラが答えた。


「シッスルをつれていきたいです!」


今ここにいる貴族女性の中では、シッスルは一番身分が低いらしい。少しオロオロしている。


「あら、良いわね。練習したり助手をしたりする人は、気心が知れている方が、やり易いわよね」


選ぶ基準を聞き、身分の高さではないとわかり、サンダーソニアは、興味のある人を連れていくことにしたらしい。


参加メンバーが決まり、日程も決まり、ユリはひと安心した。


「作る物のリクエストはあるかしら?」

「はい!ユリさま、カラースワンという、とりのおかしがつくりたいです」

「食べたことの有るもので良いの?」

「はい!」

「では、それを作りましょう」


「あの、ユリ様、琥珀糖は、難しいのでしょうか?」

「あれは、時間がかかるだけで、作業に難しさはないわよ」

「一緒に作ることは可能でしょうか?」

「構わないわよ」

「ありがとうございます!」


サンダーソニアの希望で、琥珀糖も作る予定になった。


「どんな色が良いかを考えておいてくださいね」

「はーい!」

「そうそう、会場になるパープル邸で、ローズマリーさんとラベンダーさんが、カンパニュラちゃんが楽しんで参加できるようにと、お待ちしております。って言っていたわ」


カンパニュラが、とても喜んでいた。



「ユリ様、お昼ご飯はどうされますか?よろしければ、ご一緒にいかがでしょうか?」

「私が急に食べると言って、困らないの?」


ユリは、料理人として心配したのだ。

ユリの発言を聞いてなのか、さっと控えの間の方の部屋から出ていった人がいた。


サンダーソニアとカンパニュラが、控えの間の方を振り向き、いま入ってきたドアのそばにいるメイドを見た。

頭を下げたあと、何かメモを持って、近づいてきた。


サンダーソニアのお付きの女性が受け取り、内容を確認してくれた。


なんでも、ユメとキボウが来ていて、ハイドランジアに食事を提供したから、各自バラバラのまま昼食を取るようにという内容だった、

ちなみに、ユリがいきなり食べようが、足りないということはなく、誰まで同席に呼ぶべきかで、各所に連絡をしていたらしい。


「そちらの都合で、構わないわ。私としては、誰が一緒でも問題ないわよ」


ユリも、最低限のテーブルマナーくらいは出来る。

ユリの食事は王宮から提供してもらい、ユリは久しぶりに、他人が作った食事を食べたのだった。

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