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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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燐片

今日の予定を進めていると、マーレイと一緒にイリスが来た。二人ともかなり早めの出勤だ。


「ハナノ様、銀杏(ぎんなん)と百合根と焼き蒲鉾(かまぼこ)のご用意ができるようです。竹の子の塩漬け、三つ葉、椎茸、鶏肉、卵はご用意致しました」


焼き蒲鉾。色付きの板蒲鉾がなければ、表面を焼いてある、焼き蒲鉾を探して欲しいと頼んだのだ。

元の国の蒲鉾の赤い色は、自然着色料(コチニールやラック)使用の方が、むしろ苦情が来るという、少し難しいものなのだ。なので、この国に板蒲鉾があっても、赤い蒲鉾は存在自体していない可能性をユリは考えたのだった。

クララが、百合根の茶碗蒸しを知っていたので、関東の蒸し蒲鉾がなくても、関西の焼いた板蒲鉾があるかもしれないとユリは考えた。板にのった蒲鉾はマーレイに見せたので、ユリが欲しい物自体は理解してくれたのだ。


ちなみに、ユリの大好きな赤い色素のビーツは、蒸して作る板蒲鉾に使うと、熱で退色するので、使用には向かないのである。


「マーレイさん、助かったわ。ありがとう」


出汁に使う昆布や鰹節は、常に買い置きがある。


「ユリ様、今日は早く参りました。何かお手伝いはございませんか?」

「イリスさん、銀杏の殻を割るか、百合根を分解して洗うかならどっちが良いですか?」


イリスはマーレイをちらっと見てから答えた。


「百合根を洗います!」

「銀杏の殻を割っておきます」


マーレイが、銀杏を割っておいてくれるらしい。


「マーレイさん、キッチンばさみのギザギザのところか、胡桃割り器か、何か器具を使って割ってください」

「かしこまりました」


昨日ソウが用意してくれた分は、せいぜい、今日と、休み明け1日分程度なのだった。マーレイが探してくれたお陰で、全て国産で作ることができそうだ。


「ユリ様ー、クッキー類終わりました。次何しますか?」

「洗った百合根の傷んだところを切り捨てて、適当な大きさに分けてから2~3分茹でておいてくれる? 銀杏の剥いたものは、少なめの水で、お玉で軽くグリグリしながら茹でて、薄皮を剥いておいてちょうだい」

「はーい!」


マーレイが、すまなそうに質問に来た。


「あの、ハナノ様、銀杏の縮んだ物はどうしたらよろしいでしょうか?」

「縮んだ感じの物は、茹でずに冷たい水に浸けておいてください。ものによるけど、半日から1日くらいでふっくらすると思います」

「かしこまりました」


すでに4月なので、大分干からびているらしい。

ユリは鶏肉と椎茸と竹の子を切りながら、出来上がる茶碗蒸しを収納していた。


「ユリ様、大分傷んだ感じの百合根はどうしますか?」

「食べると口当たりか悪いから、避けちゃって良いわ」

「はーい。ユリ様、この百合ってどんな花が咲くんですか?」

「百合根の百合は、鬼百合(おにゆり)小鬼百合(こおにゆり)が主で、たまに、山百合(やまゆり)鹿の子百合(かのこゆり)もあるわね。鬼百合と小鬼百合は、全体がオレンジ色で黒っぽい斑点があって、山百合は、全体が白くて、中に黄色い筋がある とても香りの良い百合で、鹿の子百合は、外側が白くて、中に赤い筋があって、鬼百合と小鬼百合と同じように、花びらがかなり丸まった感じに反り返る百合よ」


リラは百合根を見ながら何か考えているようだった。


「これ、植えたら百合が咲くんですか?」

「その大きいまま植えれば、すぐに咲くけど、燐片(りんぺん)1つとかだと、咲くまでに数年かかるわね」

「この、避けた大きいカケラを植えておいたら、いつか百合が咲くんですか!?」

「咲くわね」


ワクワクを隠せない顔でリラが聞いてきた。


「植えてみても良いですか?」

「良いわよ。キボウ君に助言をもらうと良いわ」

「はい!」


リラは、避けて捨てるつもりだった、傷の有る大きめの燐片を、大事そうに別けていた。


「あ!これ、芽が出てる!」

「芽が出てるのは、そのまま植えたら良いわ」

「はい!」

「あまり中心まで剥かないで、直径2cmくらいの大きさで残したものを植えると、燐片よりは早く花が咲くわよ」


あまりに細かすぎても使い難いのだ。


百合根は結構土が入り込んでいるので、しっかり洗う必要がある。

リラとイリスで、分けた百合根を何度も洗っていると、キボウが戻ってきたらしい。


「キボー、きたよー」

「キボウ君おかえりなさい。芽が出ている百合を植えたいそうだから、リラちゃんに教えてください」

「わかったー」


リラは手を引っ張られ、つれていかれるようだ。


「ちょっと持ってください。シャベル持ってきます」


リラはシャベルを探しにいってしまった。


「うえる?」


キボウは、百合根を見ながら、リラと一緒に百合根を洗っていたイリスに聞いていた。


「リラが植えます」

「わかったー」


リラとキボウは、百合根とシャベルをもって外に出ていった。


「予定数終わりましたので、茹でて皮を剥きましょうか?」


おそらく畑に行ってしまったリラに代わり、マーレイが皮剥きまでしてくれるらしい。


「マーレイさん、ありがとう。お願いします」



しばらくすると、リラとキボウは帰ってきた。

リラは手をよく洗い、ユリに言われて爪ブラシを使って、さらに洗い直した。


「南側のお日様がよく当たる場所に植えてきました!」

「あら、では、鬼百合か、小鬼百合ね」

「そうなんですか?」

「キボウ君が場所を指定したなら確実ね。鬼百合と小鬼百合は日向で、山百合と鹿の子百合は、半日陰なのよ」

「同じ百合でも色々違うんですね」

「そうね」


ユリは今日出す予定のムースを仕上げ、リラはキボウとクッキーを仕上げ、マーレイとイリスが、茶碗蒸しの器に具材を分け、ユリが卵液を注ぎ、足りない分の茶碗蒸しも仕込み終わった。


そうこうしているうちに、お昼ご飯の時間になった。


「ソウも、ユメちゃんも遅いわね?」

「どこかに出掛けられているんですか?」

「んー。聞いてないからわからないわ」


食事の準備が終わり、ソウとユメの分は、魔道具の鞄に一旦しまうことにした。


「お待ちしなくてよろしいのですか?」


イリスが心配して尋ねてきた。


「いいわ。食べ終わっても来なかったら、以心伝心を送っておくわ」


みんなが席についた。


「さ、食べちゃいましょ」

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