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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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玉葱

休み明けの早朝。


「ユリ様ー! お酢があったら分けていただけないでしょうか」


リラがマリーゴールドを連れて現れた。


「おはよう。リラちゃん。マリーゴールドちゃん。どのくらい要るの?」

「おはようございます」

「おはようございます。マヨネーズに使う分くらいです」

「そこに有るから使って良いわよ・・・そうだ。マヨネーズベースじゃないドレッシングとか興味有る?」

「はい!!もちろんです!」


ユリはノートを持ってきて、材料を読み上げた。


「下ろし玉葱(たまねぎ) 中玉1個分、醤油 100ml、油 60g、味醂(みりん) 45g、砂糖 27g、レモン果汁 60ml、塩 4g、粉かつお ひとつまみ、胡椒(こしょう) 少々よ」

「マヨネーズも、お酢も使わないんですか!?」

「レモン果汁がたくさん入っているからね。これは、大部分をお酢に変えても良いわ」


書いたものを見返しながらリラが言った。


「粉かつおが有りません」

「普通の鰹節(かつおぶし)でも良いわ。さっぱりと食べるお肉のタレにも向いているのよ。レモンは鞄にたくさん有るから使って良いわよ」


「混ぜるだけですか?」

「そうね。あまりにも玉ねぎが(から)いときは、少し加熱すると良いわ」


自分の中で理解したらしく、リラは笑顔になった。


「あとで、材料を揃えて作ってみます!」

「あ、ここで作るなら、ジューサーミキサーで玉葱細かくすれば良いわよ。ミキサーの中にそのまま混ぜるだけで作れるしね。材料も使って良いわ」

「早速作ります!」


リラとマリーゴールドが、目をキラキラさせて、材料を集め始めた。

リラが、玉葱を粗微塵(あらみじん)切りにし、マリーゴールドがその他の材料を素早く計量し、ジューサーミキサーに玉葱を入れ、細かくしたあと全てを混ぜ合わせていた。


「うわー!お手軽!」

「調味料の加減は、好みに調節してみてね」

「ありがとうございます!」「ありがとう存じます」


興奮し、帰ろうとする二人を、ユリは呼び止めた。


「ちょっと、あなたたち、マヨネーズ作りに来たんじゃないの?」

「あ!忘れてた!」


リラとマリーゴールドは、ばつが悪そうに笑いながら、マヨネーズを作り始めた。


「そういえば、聞こうと思っていたんだけど、ベーコンを作るとしたらいつが良いの?」

「いつというのは、曜日ですか?」

「そうね。下準備1~2時間、冷蔵庫に寝かせるのが最低でも1週間、塩抜きに一晩、薫製に3~4時間くらいかかると思うわ」

「でしたら、Eの日(だいちのひ)と、Sの日(おひさまのひ)に、下準備と薫製をしていただければ、全員が見に来ることができます」

「えーと、詳しいのは、私じゃないんだけど」

「ホシミ様ですか?」

「そうなの」

「どうぞ、よろしくお伝えください」

「じゃあ、ソウの予定も聞いておくわね」

「お願いします」


再び、帰ろうとした二人をユリは呼び止めた。


「お酢、足りないなら、それ一瓶持っていって良いわよ」

「ありがとうございます!!」


ユリも朝の仕込みが終わり、朝食のためにリビングに戻ることにした。


朝食を作るつもりでリビングに来て驚いた。なんと、ユメとキボウがソウを手伝って、何か作っていたのだ。


「おはよう、ソウ、ユメちゃん、キボウ君。今日は早いのね」

「ユリ、おはよう。ご飯できてるぞ」

「ユリ、おはようにゃ」

「おはよー、おはよー」


みんなでいただきますをして食べはじめた。


「みんな、朝ご飯ありがとう」

「花屋が来るのを待ってるのにゃ!」

「まってる、まってるー」

「なんか、そうらしいよ。俺より早くから起きてたみたい」


チューリップが届くのが楽しみなのね。何色が届くのかしら?などと、ユリは考えていた。


そして気がついた。ユメ以上に、キボウが上機嫌なことを。


「キボウ君、何か良いことでもあったの?」

「キボー、おはなー! キボー、なまえー!」


ユリとソウは、意味がわからず首をかしげ、ユメはニコニコするだけで、知っているらしいのに解説してくれなかった。


「花屋が来ればわかるにゃ」

「そうなのね」


説明する気がないらしいので、ユリも花屋の到着を待つことにした。


「俺、午後から枝豆の種か苗を買いに行ってくるよ」

「はい。お願いします」


「あと、ユリ、転移組を、そろそろ買い物ツアーにつれていく予定なんだけど、いつなら良い?」

「日程は?」

「3泊4日。日月火水か、水木金土か」

「土曜日じゃなくて、えーと『つちのひ』に、かからない方が良いわ。アルストロメリア会を再開する予定だから」

「了解」


そんな話をしていると、下から呼ばれる声が聞こえた。


「ユリ様ー!ユリ様ー! 植木屋さんが見えてますー!」


急いで階段を下りると、早めに来たらしいシィスルが、外にいた花屋に気がついて、声をかけてくれたらしい。


「シィスルちゃん、どうもありがとう」

「何か、パーティーでもあるんですか?」

「え?なんで?」

「いえ、花がたくさん有るので」

「そうなの?」


ユリが話している横を、ユメとキボウが走って通りすぎて行った。

二人を追ってきたソウも、下りてきた。


「ユリ、なんかヤバイかも」

「え?」


ソウが慌てているので、ユリも急いで外に出た。


そこにあったのは、リアカーのような屋根の無い荷馬車4台に満載された、鉢植えのチューリップだった。


「うわー!これ全部なの!?」

「ユリ、もう一台来た」


今度の荷馬車は、各種アルストロメリアを積んでいた。


総勢5台の荷馬車満載の鉢植えのチューリップと、アルストロメリア。


「ユメちゃん、これ、どこに置くの?」

「お店の回りに並べるのにゃ!」


ユメと話していると、キボウが見慣れない花を持ってきた。


「キボー!」

「え?」


ニコニコしてそれだけ言ったキボウに、アルストロメリアそっくりの青い花を渡された。


「そのアルストロメリアは『希望』という名前にゃ」

「そうなの!? こんなネモフィラのような、夏の空のような綺麗な青いアルストロメリアは、初めて見たわ!」

「新種らしいにゃ。私が名付けさせてもらったにゃ」


赤みがほとんど無い、綺麗な青いアルストロメリアだった。


「ユメちゃんが名付けてくれたのね。これ、みんなの花なのね」


これは「希望」という名の「夢百合草ゆめゆりそう

私たち家族の花だ。


「キボウ君、これ、地植え出来そう?」

「どこー?」

「お店の入り口か、南の畑か」

「いりぐちー!」


キボウによると、南の畑より、東の入り口付近の方が適しているらしい。入り口の横に有る、以前はネモフィラなどを植えていた花壇に植えることにした。

花壇にあった、ネモフィラと矢車菊とノースポールなどは枯れてしまったらしく、残っていなかったけれど、逃げた種が芽吹いて、花壇の外の地面には、小さなノースポールが野生化している。


ユリは、根を崩さないように、そっと花壇に一鉢植えてみた。

ソウが植えられるように掘ってくれたのだ。

この花壇は、水捌けが良いのに、(ひさし)の下に入るため、水をやらないと植えたものが枯れてしまう。

持ってきた花屋は、根腐れしやすいから、水捌けが良い場所が好ましいと言っていた。

もうひとつ、青いアルストロメリアはあるようだが、キボウが抱えているので、キボウの分なのだろう。おそらく、世界樹様の元に持っていくと思われる。


「キボウ君、どうもありがとう」

「ぴんくーアルストロメリアー、あかーアルストロメリアー、しろーアルストロメリアー、きいろーアルストロメリアー、むらさきーアルストロメリアー、オレンジーアルストロメリアー」

「ん?他の色のアルストロメリアをどうするかってこと?」

「あたりー!」

「どうしようかしら? どうすれば良い?」

「このままー、おくー」


キボウは、外倉庫の入り口がある北側を指していた。


「北側に並べるの?」

「あたりー」

「移動しておくから、細かい場所はキボウ君が直してね」

「わかったー!」


ソウと二人で、30鉢ほど有る、アルストロメリアを移動させた。

ユメは、チューリップの場所を、楽しそうに決めている。このチューリップは、なんと120鉢ほど有るそうだ。赤、白、黄色、紫、ピンク、オレンジが、各20鉢ずつあるらしい。



ユリは、はっと気づいた。

シィスルが居ない。


慌てて厨房に行くと、朝の準備が大分終わっていた。


「シィスルちゃん、ありがとう!」

「いえ、何か、お花大変そうでしたので、先に準備を始めました」


花がいっぱいで、一日中、大騒ぎになるのだった。

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