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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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種蒔

翌日、日曜日のお昼前。


「畑に植えるんじゃないのにゃ?」


ユリとソウが、種を植えるための用意をしていると、ユメから質問された。


「ローゼルは発芽率が低いらしいから、ポットで発芽させてから、大きくなる前に植え替えるのがおすすめよ。バタフライピーは殻に少し傷をつけて、しっかり吸水させてから植えると良いわ。風船葛(ふうせんかずら)はそんなに気を使わなくて大丈夫みたいよ。この3つとも、あちらならゴールデンウィークの頃が適切らしいから、こちらなら、今がちょうど良いと思うわ」


冬に雪は全く降らないし、すでに20度以上の日が続いているのだ。


「ユリ、種蒔き用の自然に還るポット用意したけど、あとは何かいる?」

「キボウ君が帰ってくるのを待つだけよ」

「あーそうだな。専門家みたいなものだしな」

「まあ、それもない訳じゃないけど、みんなで植えた方が楽しいじゃない?」


キボウは、世界樹様に渡す琥珀糖と、昨日のお返しのお菓子の詰め合わせをいくつか持って、世界樹の森に行っている。王宮へのお使いや、手紙などを頼まれることもあるので、午前中は居ないことが多い。

ちなみに、昨日は早朝に行ってきたらしい。


「キボー、きたよー」


キボウが帰ってきたようだ。


「キボウ君、種を植えようと思うの。一緒に植えてください」

「わかったー!」


テーブルに有った種を見て、キボウが別け始めた。


「キボウ、何やってるにゃ?」

「げんきー、なーい、なーい、げんきー、げんきー」


別けたものを指差し、説明してくれた。

左から、ローゼル、ローゼル、バタフライピー、バタフライピー、風船葛だ。


「種の状態か?」

「あたりー」

「もしかして、発芽率100%なの?」


みんながキボウの方を見た。


「め、でるー!」

「キボウ、凄いにゃ!」


発芽率が低いらしいローゼルが、キボウが別けた種を使えば、確実に芽吹くらしい。


「発芽率100%なんて、楽しそうね!うふふ」


「ユリ、どうする? 直撒きする?」

「そうしようかしら。なら、バタフライピーの皮に少し傷をつけて、吸水しやすくしましょう」


ユリが言葉にしたら、キボウが処理してくれたらしい。

乾燥していたはずのバタフライピーの種は、プックリ膨らんで、すぐに植えられるようになっていた。


「キボウ君、凄いわね!どうもありがとう!」

「キボー、やくだつー」


ポット植えをせず、直撒きの為に種を持って畑に向かった。


以前使っていた支柱は、片付けられて外倉庫にしまわれていた。バタフライピーの花を全て収穫したあとに、リラとマーレイで、しまっておいてくれたらしい。


壁際に支柱を立てて、ネットを張り、バタフライピーと、風船葛の種を南側一面に植えた。


「バタフライピーの種は嫌光性(けんこうせい)だから、種が地表に出ないように土をかけてね」

「けんこうせいってなんにゃ?」

「光が嫌いって意味よ」


畑の端に、ローゼルの種を植えた。背が大きくなるらしいので、一粒ずつを大分離して、南西がわにたくさん植えた。


「楽しみにゃ!」

「芽が出るまでに、1週間から2週間かかるから、毎日水やりしましょうね」

「ユリ、畑なのに水やりするのにゃ?」

「本来『ポットで苗』くらいのサイズまでは弱いからね」

「成る程なのにゃ!」



「畑も何か植えたいわね」


他に何も植わっていない畑を見てユリが呟いた。

ここに来た年に植えていたものは、当然だが何も残っていない。あるのは、大きくなったレモンと月桂樹とクチナシだけだ。

リラによると、こぼれ種なのか、紫蘇は毎年畑に生えていたらしい。


「ユリの希望はある? ユメは何か植えたいものは? キボウ、おすすめ何かある?」


ソウがみんなに聞いていた。


「何かお花を植えたいにゃ」

「私は食べられるものが良いわ」

「キボー、これー!」


キボウは、何か持っていた。


「キボウ君、何持っているの?」


ユリが見せてもらうと、いつもユリが貰う木の実のようだった。


「ユリの魔力が回復する実にゃ?」

「あたりー!」

「キボウ、それここに植えて、育つのか?」

「だいじょぶ、だいじょぶ」

「どのくらい大きくなるの?」


ユリの質問に、キボウはキョロキョロし、月桂樹とレモンを見上げていた。


「月桂樹並みに大きくなるのか?」

「ちがーう」

「なら、レモンくらい?」

「ちいさいー」

「レモンよりは小さいのにゃ?」

「あたりー!」


「クチナシくらい?」


ユリの質問に、キボウは首をかしげた。


「クチナシよりは大きいのにゃ?」


ユメの質問に、キボウは首をかしげた。


「大きくなると、レモンより少し小さいくらいで、今のクチナシよりは大きくなるってところか?」

「あたりー!」


ユリとユメが、キボウとソウの説明がわからず悩んでいた。


「どういうことにゃ?」

「クチナシって、巨大化すると、3mくらいになるらしいよ。レモンと変わらない大きさだな」

「そうなの!? 大きいのは見たことがなかったわ」

「私もないと思うにゃ」


ソウは、ユリのために、クチナシを買ったときに調べたのだ。


「キボウ、どこに植えるのが良いんだ?」

「ここー!」


キボウが示したのは、レモンの木の真横、家の最西側だった。


「ここなら、ずっと日も当たるし、良いかもな」


南側に遮るものがないため、日当たりも良い。

ソウは大きなスコップを持ってきてキボウが示した場所を掘り始めた。


「こんなもんで良いか?」

「いーよー」


キボウが種を入れ、土を被せ、ユリを呼んだ。


「ユリー、まりょくー」

「私の魔力を種に注ぐの?」

「あたりー」


キボウはユメとソウをみて、ソウだけを呼んだ。


「ソウー、まりょくー」

「俺もか?」

「あたりー」


ソウが、魔力を注ぎに来た。


「私はしなくて良いのにゃ?」

「ユメー、キボー、たりなーい」


ユリとソウが魔力を注ぐと、土がボコッと膨らんだ。


「もういいよー」


キボウの言葉に、ユリとソウが手を離すと、芽が出てすぐに双葉になった。

にょきにょきと成長し、キボウの身長と変わらない大きさの木になった。つまり90cmくらいある。現在のクチナシよりは大きい。


「ユメー、おねがいするー!」

「私が願いを唱えるのにゃ?」

「あたりー!」


ユメは木のそばで、何か願いを唱えていた。なぜかユリとソウには聞こえなかった。

キボウも何か唱えていた。


「おみずー」

「これで良いか?」


ソウが水の入ったじょうろを持ってきた。


受け取ったキボウが水をかけると、木が元気になったように見えた。


「おわりー」

「それで良いのにゃ?」

「だいじょぶー」


キボウが言うのだから、このままで良いのだろうと作業を終え、ユリとユメの欲しい物を買いに行くことにした。

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