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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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映像

ユメの誕生日の日の夜。


「ユメちゃん、今日は一緒にお昼食べられなくてごめんね」

「今一緒だから良いにゃ」

「もう一回ケーキの蝋燭吹き消すか?」

「良いのにゃ!?」


ユリは、さっとショートケーキを作り持ってきた。

苺は昼間も使った、向こうで用意してきたものだ。


「スポンジあったの?」

「シートスポンジは、常にあるのよ。何かあったときに使えるからね」

「蝋燭はある?」

「あるわよ」


ソウは、ユリが用意できなければ、買ってくるつもりだったらしい。

ユリとソウがお誕生日の歌を歌い、ユメが蝋燭を吹き消した。


「おめでとう」「おめでとう」「おめでとー」

「みんな、ありがとにゃ」


ユリがケーキを切り分けていると、ユメとソウが、キボウに誕生日を聞いていた。


「キボウ、キボウの誕生日はいつなのにゃ?」

「たんじょーび? わかんない」

「世界樹様に聞いてくると良いぞ」

「わかったー」


ユリがケーキの皿を取りに行き、戻ってきた。


「さあ、みんなでケーキを食べましょう」


「誕生日、祝ってもらって嬉しかったにゃ」

「昔って、誕生日は祝わなかったの?」

「そういう習慣がなかったと思うにゃ」

「聞いたことあるけど、この国で個人の誕生日を祝うようになったのは、割りと最近みたいだよ」

「そうなのね」


「そういえば、キボウから貰った葉っぱは、なんの映像だったんだ?」

「私が小さい頃の映像だったにゃ」

「え!ユメちゃんの小さい頃?」

「見ても良いにゃ」


ユメは、葉っぱをユリに渡してくれた。


「ソウ、魔鉱石無い?」

「この家にはないな。使わないし」

「ユリ、立体画像にするのにゃ?」

「今でも可愛いユメちゃんの小さい頃だなんて、絶対に可愛いに決まってるもの、立体画像で見たいじゃない!」


ユリが早口で捲し立てた。


「あ、うん」「にゃー!?」「かわいー、かわいー」


照れたらしいユメが、申し出た。


「にゃー。1000pの魔鉱石ならあるにゃ」


リラに預けていた、女王の結界の起動用魔鉱石だ。

ユメが部屋から持ってきて、ユリに渡し、ユリが充填して、部屋の広い場所に葉っぱと一緒においてきた。


映像が再生され、みんなが驚いた。


リスの映像を見たとき、現実よりも小さめで、透けたような、かすれたような立体画像だった。そんな感じをイメージしていたら、現実と同じサイズの、色のはっきりした、透けていない、まるでその場にそれがあるかのような立体映像だったのだ。


豪華な部屋が写り、天蓋(てんがい)のあるベッドが写し出された。人々が慌ただしく動き回り、緑が写ったあと、城が写り、一旦映像が終わった。


「うわー!凄い!」

「触れそうなクオリティーだな」

「魔力の大きさの差にゃ?」

「ユメちゃんは全部見たの?」

「まだ見てないにゃ」


生まれたばかりらしい赤ん坊が、おくるみにくるまれて登場した。寝ている赤ん坊をリスらしき女性が抱き上げたのが写り、画面が切り替わった。


小さいルレーブが、壁伝いにニコニコしながら立って歩いている。壁から手を離し、画面のこちらに歩いてきて、画面が切り替わった。


子供用のドレスを着て、おもちゃの中に座り、遊んでいる姿だった。近付いてくる男性がチラッと写ったところで画面が切り替わった。


少し大きくなったルレーブが、城の庭らしき場所で平和に遊んでいる姿だった。


「触ったときに、この辺の画像を見たにゃ」

「それで、中身が分かったのか」


ルレーブは、メイドのような女性からお菓子を渡され受け取っていた。

それを最後に、立体映像は終了した。


映像が終了し、ユメは何も思い出せないらしく、悩んでいるようだった。


「全く覚えてないにゃ」

「見たところ、生まれたとき、1歳、2歳、3歳といった感じね。覚えていなくても仕方がない年齢だわ」

「そうなのにゃ?」


「私の記憶にある、自分が一番小さかった思い出は、3歳半くらいの頃に、両親と三人でソファーに座っている記憶よ」

「俺は、5歳くらいからしか記憶にないな」


ソウがユリに初めて会ったのは、5歳の頃だ。当時ユリは3歳で、ユリにしてみれば、初めて会ったという記憶はなく、会えばいつも遊んでくれるお兄ちゃんだった。


ルレーブが3歳になる前に、リスは毒殺されている。母親の面影を何となくでも覚えているルレーブは、むしろ凄い記憶力だったのだ。


「やっぱり、最高に可愛かったわね」

「かわいー、かわいー」

「チラッと写ったのは、リスと、先王か?」

「わからないにゃ」

「おかあさまー。ルレーブー。うそつきー」

「あ、うん。先王なんだな」


キボウ独自の呼び方に、ソウが聞き流していた。


「そういえばユメちゃん、貰った種、そろそろ植えられるわよ」

「植えたいにゃ!どれが大丈夫にゃ?」

「ここは、向こうより少し暖かいみたいだから、風船葛(ふうせんかずら)も、バタフライピーも、ローゼルも、どれも大丈夫だと思うわ。でも、(とち)の実は畑には植えないでね」

「木は植えないにゃ。にゃはは」


「ユリが去年育てていたバタフライピーは、種無いの?」

「花のうちに収穫しちゃうから、種にならないのよねー。うふふ。今年は少し種にしましょうかね」


ユリは種を出してきた。


「にゃ? ローゼルは無いのにゃ?」

「この小さいのがローゼルよ」

「見たのは、小さい割れたドングリみたいだったにゃ」

「それの中に、この種が入っているのよ」


「なら、明日にでもみんなで植えよう」

「そうするにゃ」

「うえるー、うえるー」


明日の予定が決まり、もう寝る時間だ。


「今日は、おやすみなさい」

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