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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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葡萄

「誰か探しているの?」


ユリが声をかけてみた。


「ユリ・ハナノ様! お初にお目にかかります。私は、メリッサと申します。イリスの紹介で、参りました」


ソウが、イリスを呼びに行ったら、慌てた様子でイリスが駆けつけてきた。


「メリッサ! 帰ってくるのは一週間後じゃなかったの!?」

「なぜか、お貴族様の転移魔法の部屋を使わせていただけたの!」


イリスはユリのために、ユリの希望に沿った人材に声をかけてくれていたようだ。

あとからわかるのだが、イリスの手紙の内容を知ったパープル侯爵の(はか)らいだった。


この、メリッサという人物は、生まれてすぐの子供を親に預けて王都に働きに出ていた。高給であれば、仕事の内容や働き先にこだわりはなく、結婚してすぐに夫を亡くしており、その時に作った借金を返済するために、死に物狂いで働いていた。返済の目処はたったが、子供を預けていた親が体調を崩し、どうしたら良いかと悩んでいた時にイリスから、村に戻ってきて一緒に働かないかと誘われたのだ。


「ユリ様、リラより大分年上ですが、読み書き計算もできますし、通いでこちらまで来ることができます。人物は、私でも、マーレイでも、リラでも保証できます。如何でしょうか?」

「えーと、メリッサさん? やる気はありますか?」

「はい! 村から通える仕事だなんて、願ってもない幸運です!」

「いつから来られますか?」

「はい。何か大変そうに見えるのですが、よろしければ、今からでも、いつからでも可能です!」

「メリッサさん、お昼ご飯は食べたの?」

「いえ、今来たばかりで、領主様のお屋敷から直接ここまで来ました」

「イリスさん、何かご飯を出して、仕事を教えてくれる?」

「かしこまりました」


ソウがついていって、厨房に入れるようにしてくれた。

マーレイがお礼を言いに来た。

メリッサは、リラが小さい頃、良く面倒を見てもらったそうで、リラの姉のような存在らしい。ちなみに、メリッサは、25歳、子供は現在4歳だ。


「なんだっけ、メリッサ」

「レモンバームね。たしか」

「レモンバームか」


戻ってきたソウに聞かれ、ユリが答えた。

そばで聞いていたユメが、レモンバームが、わからなかったらしく、ユリに聞いていた。


「ユリ、レモンバームってなんにゃ?」

「レモンバームは、ハーブの一種よ。良く育つから、育てやすいけど、良く育ちすぎるから、畑に植えると広がりすぎて大変なことになるわ」

「そんなのもあるのにゃ」

「ミントの系統はみんなそんな感じよ」


説明が終わったらしいイリスとマーレイが来て、ユリとソウに交代を申し出てくれた。


「ユリ様、私がユメちゃんの補助をいたしますので、お休みを取られては如何でしょうか?」

「ありがとう。ソウと少し休ませてもらうわ」


イリスとマーレイがユメの補助をしてくれるというので、ユリとソウは少し休むことにした。

厨房に行くとメリッサが、料理を噛み締めながら唸っていた。


「美味しすぎるぅー!」

「あら、ありがとう」

「あ!ユリ・ハナノ様!」


イリスは、鶏丼を出してくれたらしい。

初心者には、ちらし寿司はハードルが高いと判断したのだろう。


「今日配っているお菓子は食べてみた?」

「いえ、いただいていません」


ユリは中身の説明をし、ふと思ったことを聞いてみた。


「メリッサさん、魔力あるわよね?」

「はい? えーと、私は平民なので、魔力はありませんが」


自分の名前の由来を知らないようだ。少し不安げな表情をしていた。


「あなたの名前は、有名な薬草(ハーブ)の1つなので、確実に魔力があると思うわよ?」

「そうなんですか!?」


驚きすぎたのか、持っていたスプーンを落としていた。


「では、推定150pなので、魔鉱石などに充填することから練習して300pになったら、魔法を教えましょう」

「え!? 私に魔法が使えるのですか!?」

「イリスさんもリラちゃんも使えるわよ」

「ええええええ!!!!!」


立ち上がり、驚いたまま固まっていた。


「まだ食べられるなら、唐揚げと、葛切りと、色々あるわよ」

「あ、はい。ユリ・ハナノ様」

「名前、ユリで良いわ」

「はい。ユリ様」


ユリは自分達の食事を用意しながら、メリッサに、唐揚げと葛切りとコーンスープを提供した。


「キボーきたー」

「キボウ君、ご飯食べるわよね?」


キボウはテーブルを見回して、メリッサの食べている鶏丼を見たらしい。


「キボー、とりごはん!」

「鶏丼のこと?」

「あたりー!」


ちらし寿司は、出せば食べるけれど、選べるなら選ばないらしい。ユリは、キボウは生の魚はあまり好まないのかなと考えたが、実は、キボウは鶏丼の甘めのタレが好きなだけである。


キボウは、メリッサのそばに行って、何か話しているようだった。


「私はメリッサです。キボウ様、仲良くしてください!」

「わかったー」


メリッサの反応を聞き、あー、本当に、リラの姉的存在なんだなと、ユリは思った。


ユリとソウが食べ終わる頃、リラたちが花を持って倉庫がわから現れた。


「えーー!何で、メリ(ねえ)が居るのーー!?」


メリッサを見たリラが叫んでいた。


「リラ!私は今日からここで働くことになったよ。よろしくね!」

「え!いつ決まったの?」

「今日よ。ついさっきね」

「まさか、メリ姉に先を越されるとは・・・」


何となく気の毒そうに、リラの弟子はリラを見つめているようだった。


「リラちゃん、紹介しないの?」

「あ、そうだ。シィスル、マリーゴールド、この人はメリッサさん。幼馴染みの、近所のお姉さんです」

「メリ姉、この二人は、私の弟子で、シィスルとマリーゴールドです」


紹介したあと、仲良く挨拶をし、リラはしばらく話し込んでいた。

ふと気がついた。シィスルとマリーゴールドは、籠をいくつか持っていた。


「シィスルちゃん、マリーゴールドちゃん。何でまた籠を持っているの?」

「はい。列を見て、あきらめてベルフルールに来て、それでも悩んでいた人から、預かってきました」

「ユメちゃんには会えないけど、お返しのお菓子は持っていってもらえる?」

「はい!」「かしこまりました」


リラたちは、花束をユメに渡したあと、籠の数のお菓子をもって戻っていった。


ユリは店に行き、花束をほどき花瓶に()けた。


まだ家にすら戻っていないというメリッサは、夕方帰らせた。


結局、御祝いの列は、暗くなっても途切れることがなく、18時過ぎにお店の営業が終わったリラたち3人までもが手伝って、並んでいる列にお返しのお菓子を配り、籠を引き受けてきた。


「リラちゃん、シィスルちゃん、マリーゴールドちゃん、どうもありがとう。なんとかなったわね」

「ユメちゃんの人気はさすがですね」


「そうだ、リラちゃん、琥珀糖いつカットするの?」

「シィスルとマリーゴールドと三人でカットしようかと思っています。今からでも良いですか?」

「どうぞ。他の色も作ったから見本にしてね」

「他の色?」


あとから作ったはずなのに、すでに出来上がっている いろいろな色の琥珀糖を見て、やはりリラは疑問に思った。


「ユリ様、これ、1日じゃないですよね?」

「今朝作ったんだけどね」

「え? 今日の朝ですか?」

「キボウ君が乾かしたのよ」

「えー!そんなからくりが!」


するとキボウがニコニコと現れた。


「リラー、キボー、てつだう?」

「良いのですか!? お願いします!」


リラが固めた寒天は、ユリが作ったような、グラデーション系の色だった。1枚の板に、いろいろな色が入っている。


ユリの指導のもと、少し複雑なカットをし、総勢で並べ、キボウの呪文と交互にひっくり返して乾かした。ついでにと出してきたソウの丸い琥珀糖も、一緒に時送りして乾かした。

乾かす前は、濃い紫色だったけど、表面が糖化し、中身が暗く見える。


「ソウのはなんで丸くしたのにゃ?」


片付けが終わったらしいユメとイリスが厨房に来た。二人は、受け取った籠の手紙を整理していたのだ。


「食べてみればわかるよ」


ユメは受け取り、ソウが作った丸い琥珀糖を食べてみた。


「葡萄の味がするにゃ!」

「果汁100%で作ってみた!」


ソウは、全員に一粒ずつ配っていた。

ユリもついでと柚子の琥珀糖を配り、かじったリラが、「何か入ってる!?」と、騒いでいた。


黄緑色の琥珀糖をキボウに渡すと、キボウは、「キボーいろー」と言いながらみんなに配り、自分で作った琥珀糖は、全て世界樹様に持っていくらしく、手をつけなかった。

ユメが作ったルレーブ色の琥珀糖は、初代様教のハイドランジアやローズマリーに渡す予定らしい。

もうひとつソウが作ったルビーのような赤い琥珀糖は、星見家に持っていった。

そして、リラが作った琥珀糖は、ベルフルールでランチにつけたらしい。

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