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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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肉球

お店が始まり、とりあえず店内の注文分を全て出した。ホットココアが大半なので、想定内だ。

ユリは来客数を心配していたが、限定物が配られたり売られたりするイベント日は、来客が多い。


開始早々にユメが来て、驚くことを言った。


「ユリ、肉球マシュマロ足りないにゃ!」


来客予定数は作ったはずなのに、まだ開始15分も経っていない。


「えー!固まるのに時間がかかるから今から作っても、頑張って15時過ぎよ?」

「大丈夫にゃ! 外に並んでる人の分にゃ」


それなら頑張れば何とかなるかもしれないわね。と、ユリは追加を作ることにした。


「わかったわ。急いで作るわね」


シィスルとマシュマロを仕込んでいると、キボウがニコニコしながらやって来た。


「キボー、てつだうー?」

「キボウ君、とてもありがたいけど、効果ついちゃうわよね?」

「だいじょぶ、だいじょぶ」


あまりにも自信たっぷりに言うので、少量の肉球マシュマロに時送りして貰った。

ユリが仕上げをし、マーレイに一つ食べてみてもらうと、とくに効果を感じないらしい。


「早くならないようです」

「えー、どうしてなのかしら?」


ユリが疑問に思っていると、見ていたシィスルが意見を言った。


「あのー、キボウ様が最後まで仕上げると、効果が出るのではないでしょうか?」

「あたりー!」


良く考えれば、パウンドケーキの酒漬けフルーツも、効果がつかなかったのだ。どうやら、ユリが仕上げをすることによって、キボウの余剰魔法分は打ち消されるらしい。


「キボウ君、大変じゃない程度にお願いしても良いかしら?」

「いーよー!」

「では、お願いします」

「わかったー!」


作ったものをキボウが時送りしてくれるので、予定より大分早く仕上がり、たくさん作ることができる。


14時になると、リラとマリーゴールドが様子を見に来た。


「肉球マシュマロ増産って聞きましたー!」

「肉球マシュマロの作り方を見学に参りました」


リラは堂々と手伝い、マリーゴールドは、ユリが見ていないときに、シィスルを手伝っているみたいだった。


「あなたたち、お昼ご飯は食べたの?」


ユリは心配して聞いてみた。


「早めに食べましたー! 現物支給いただくので、心配ご無用でーす!」

「作るのを見たいと思っておりましたので、早めにいただきました」

「ん?作る予定はなかったのよ? 作り方は次回にでも教えるつもりではあったけど」


リラはともかく、マリーゴールドまで計画的に早く食べたなんてと、ユリは驚いた。


「13時過ぎに、シィスルから増産の以心伝心を受けましたので、来るつもりでしたー」

「そうなのね」


つまり、以心伝心を受けて、即、ご飯を食べ出して、14時と同時にこちらに来たらしい。


リラとマリーゴールドは、15時少し前まで手伝って、肉球マシュマロをいくつか持って帰っていった。お店の従業員の分らしい。


ひたすら番重の中の大量のコーンスターチに肉球型を押し付け、マシュマロ生地を絞った上にコーンスターチを振りかけてくれていたマーレイは、物凄く早く型を量産していた。


肉球マシュマロの手順は、コーンスターチに肉球型を押し付ける。

先にビーツ入りの薄ピンク色のマシュマロ生地を作り、細目の口金で凹んでいる肉球部分に絞り、コーンスターチをかけずに少し冷やし固める。

次に、ブラックココアと黒糖で作ったマシュマロ生地を絞り、上にコーンスターチをかけて、しっかり固まるまで冷す。

固まったら、刷毛で余分なコーンスターチを払い、出来上がり。


キボウのお陰でかなり時間短縮になり、予定よりも大分早く出来上がっていった。


「キボウ君、どうもありがとう。物凄く助かったわ」

「キボー、やくだつー。キボー、やくだつー」

「キボウ様、格好良いです!」

「キボー、かっこいいー、キボー、かっこいいー」


キボウが機嫌良く、ニコニコしていた。


「キボウ君、お手伝いの報酬に、何か要る?」

「キボーましゅまる、ほしー」

「キボウ君のマシュマロが欲しいの?」

「あたりー」


木の形を言ってるのかしら?味の好みかしら?イチゴ味が好きらしいけど、イチゴはあるから、違う味を希望ってことかしら? 聞いてから作った方が良さそうね。ユリは色々考えたが、本人に聞くことにした。


「イチゴマシュマロみたいな四角いのとか、肉球マシュマロみたいな形とか、味や形の希望はある?」

「かみさまクッキーあじー」


入っているナッツの事ではなく、アイシングの抹茶味の事だろうと思う。


「抹茶味ね。作っておくわね」

「ありがとー」


キボウは気が済んだのか、階段を上がっていった。


ユリはプラスチック製のおままごと用のおもちゃを持ってきた。

コーンスターチが入った番重を持ってきて、ブロッコリーのおもちゃで跡をつけた。


「ユリ様、それはどうなるんですか?」

「立体的なキボウ君マシュマロを作ろうと思って」


籠に入った他のプラスチックの野菜を見て、シィスルが不思議に感じたらしい。


「これらは、本来、何に使うものなんですか?」

「子供用の、おままごとのおもちゃよ。子供が舐めても大丈夫な衛生基準で作られているから、洗剤で良く洗って型として使えないかと思って持ってきたのよ」


子供用のおもちゃと聞いて、できの良さに感心したようだ。


「このイチゴ、特に良くできていますね」

「あ、それなら、それも作ってみましょ」

「え?」


ユリはイチゴのおもちゃでもコーンスターチに跡をつけた。

三角錐を刺す方向に跡をつけたら、横向きじゃないのかと、シィスルに聞かれた。


「まあ、まあ、まあ。先にイチゴを作りましょうか」


マシュマロのイチゴ生地を作り、三角錐に生地を流し込んだ。そのままコーンスターチを振りかけずに冷やし、次にマシュマロの抹茶生地を作った。ブロッコリーのおもちゃの型の穴に流し込み、少し生地が固まりかけてから、星口金でうっすら固まってきたイチゴの上にほんの少し回転させるように軽く絞り、イチゴの葉を作った。


「凄ーい!」

「はい、コーンスターチをかけてください」

「私もなにか考えて良いですか?」

「良いわよー。何か作りたいものがあるの?」

「お花に見える物を作りたいです!」

「あまり細かいものは向かないから、その辺を考慮してみてね」

「はい」


ユメが質問に来た。


「ユリ、肉球マシュマロは、今日だけにゃ?」

「評判がよければ、しばらく売っても良いわよ」

「わかったにゃ。評判良いにゃ」


夕飯はステーキの予定なので、ユリは手の空いた時間に、スープと付け合わせの準備をした。


「ユリ様、イチゴマシュマロの、フルーツ違いは作れるのでしょうか?」

「たぶん作れるわよ? 注文された?」

「違う味も食べたいと、何人かから頼まれました」

「なら、そのうち出すわね。味の濃いフルーツなら、作れると思うわ」


イリスは、ホッとしたのか、そのまま戻っていった。


ユリは本格的に食事の用意を始めた。

ベルフルールのメンバーを招待しているので、普段より作る数が多い。


お店の営業も無事終了し、イリスが残りを報告に来た。


「ユリ様、マシュマロは、3種類とも残りありません。生チョコは、3つ残りました。ラング・ド・シャサンド、黒猫サンド、トネリコサンド、三種とも残りありません。クッキーのラング・ド・シャは少し残っています。飲み物はホットココアばかりだったので、お茶が残っています」

「イリスさん、ありがとう。あ、一つ頼みたいんだけど」

「はい。なんでしょうか?」

「リラちゃん達がこちらに来たら、昼もろくに休んでいないようなので、食事が始まるまで休むように言ってください」

「かしこまりました。必ずや、実行いたします」


不適な笑みを浮かべ、約束してくれた。ユリが言うより強制力がありそうだ。

シィスルがおののいていた。


「ユリ、ただいまー!」

「ソウ、おかえりなさい」

「ユリ、いちごのギモーヴは?」

「お店では、一律マシュマロと呼んでるわ。冷蔵庫にあるわよ」


ソウは、従業員用のお茶やお菓子をしまうエリアを見に行き、イチゴマシュマロを持ってきた。


「ユリ様、ホシミ様がおっしゃられたのは何ですか?」

「細かく言うと、卵白を使って作るしっかりしたのが、マシュマロで、フルーツと糖分とゼラチンで柔らか目に作るのは、ギモーヴって呼ぶのよ。でも厳密には分かりにくいし、一律マシュマロと呼んでるわ」


シィスルは片手にメモを取りながら、感心して聞いているようだった。


「ソウ、生チョコ3つ残ったそうだからどうぞ。次回は厨房に冷房を入れない限り、寒くなるまで作らないから、今期はこれが最後よ」


ソウは、あからさまにショックを受けた顔をしていた。


「ユリ様ー!手伝いに来ましたー!」


リラがマリーゴールドと一緒に、一足早く来たらしい。


「うふふ。では、仕事を与えます。テーブルを死守していてください。イリスさん、監督お願いします」

「かしこまりました」


リラとマリーゴールドは、イリスによって、テーブルに連行されていった。


あとから来たレギュムとクララとグランが、あれは何をしてるのかとマーレイに尋ねていたが、ユリの言葉を伝えたらしく、イリスに代わり、テーブルを見てくれるらしい。


「ユリ様、配膳のお手伝いをいたします。私よりも父やクララさんの方が、リラが言うことを聞きますので、交代致しました」


そう言われてみれば、リラがイリスに怒られても、いつもヘラヘラしていたのを思い出した。


「シィスルちゃん、お肉焼くの見る?」

「はい!」


ユリはシィスルに教えながら、ステーキ肉12枚を3箇所のフライパンで焼いた。


「音ですか。聞き分けるのは、かなり難しそうですね」

「んー、まあ、好みもあるから、これと言う決まりはないんだけどね。あと、私は、ステーキは専門外なので、そんなに上手くはないです。美味しい理由は、素材の良さです」


「お皿に、付け合わせの野菜を盛っておきますね」


シィスルが温野菜を皿に飾り付けていると、ユメとイリスが手伝いに来た。


「スープ配っておくにゃ」

「サラダを運んでおきます」


「じゃあ俺は、ご飯でも配るかな」


みんなで手伝ったステーキディナーは、全員に大好評だった。

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