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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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大分準備も終わり、そろそろお昼ご飯も出来上がる頃、ユメとキボウが戻ってきたようだ。

ユメはキボウに付き合って、カンパニュラの所に行っているとソウが話していた。キボウには今日のお菓子を持たせたので、振る舞ってきたのだと思う。


「ユリ、これ預かってきたにゃ」


ユメから手紙を渡された。裏の署名がハイドランジアだった。

早速、中を開けて読んでみると、カンパニュラにお菓子を教えてほしいという依頼だった。ローズマリーに話を通してあり、会場はパープル邸になるらしい。メンバーについては、王宮の侍女などを集めるか、ユリの指定する人を呼ぶかは任せると書かれていた。


カンパニュラちゃんがのびのびできるように、安心できる人を何人かは呼びたいわね。


ユリの考えるメンバーは、ローズマリー、ラベンダー、マーガレットと、ハイドランジア、カンパニュラ、シッスル(仮)だった。



「そろそろお昼ご飯にしましょう」

「ユリ様、のこり、仕上げても良いでしょうか?」

「切りの良いところまで仕上げて構わないわよ」

「ありがとうございます」


シィスルが途中の仕事を続けているので、食事の用意はユメとイリスとマーレイが手伝った。

ソウとキボウが何か話しながら来た。とても珍しい光景にユリがじっと見ていると、ソウが笑いながらキボウの肩を叩いていた。


「そんなに気にすんなって」


少しキボウが落ち込んで見える。


「なあに、どうしたの?」

「なんか午前中、焦がしたらしいよ」


焦がすような物とか、事件とか、事故とか、何かあったかしら? とユリは考えたが、思い当たらず、ユメに聞くことにした。


「ユメちゃん、午前中、何か焦げたの?」

「マシュマロを溶かしすぎて焦がしたにゃ」

「あら、焼きマシュマロ作ってみたの?」

「カンパニュラが楽しそうだったにゃ!」

「そうなのね。ユメちゃん、キボウ君、カンパニュラちゃんと遊んでくれて、どうもありがとう」


ユリがお礼を言うと、やっとキボウが笑顔になった。


「キボー、やくだつー! キボー、やくだつー!」

「とっても助かってるわ。さあ、みんな、ご飯を食べましょう」


お昼ご飯を食べていると、訪問者があった。入り口の扉に近かったシィスルが、手紙を受け取ってくれた。


「ユリ様、領主様からみたいです」

「ありがとう」


ユリは手紙を受け取り、中を読んでみた。


至急相談したいことがあるから、訪問しても良いかというお伺いの手紙だった。


「ソウ、なんだと思う?」

「とりあえず、俺が行って話を聞いてくるよ。で、無理そうなら連れてくる」

「わかったわ。お願いします」


既に食べ終わっていたソウは、パープル邸に転移して行った。

いずれ、ソウだけ帰ってくるだろうとユリは考えていたが、意外にもソウは、パープル侯爵を連れて早々に戻ってきた。

ソウは笑っていて、パープル侯爵は大分困っている様子だ。


「何か相談があると手紙にありましたが、どうかされましたか?」

「ハナノ様、エルムに人を募集する話をされましたか?」


エルムとは、領主補佐で、お店の会報誌を出している責任者だ。


「はい。先日お会いした時に、人員の募集はないのかと聞かれたので、配膳の女性を2人くらい欲しいなぁと、そんな話をしました」


ユリの言葉を聞いたパープル侯爵は、落ち込んだように軽くため息をついてから話し始めた。


「うちのメイドたちが、」


言葉に詰まっているのか、話が続かない。


「メイドさんがどうされました?」


「応募すると言って、かれこれ20人以上が 辞めると言い出して、正直、困っております」


それは至急の案件だし確かに大変だ。


「それは、困りますよね・・・」


しかし、ユリだって、2人の応募枠に20人来られても困るのだ。


「既に人が決まったということにして、全員お断りしましょうか?」

「しかし、それではこちらも困るのではないかと、数人は紹介状を書く用意をしております」


パープル侯爵は根が真面目なので、自分達が困る状況にも関わらず、紹介状を書こうと思っているらしい。少し気の毒になり、ユリは、根本的な疑問を聞いてみることにした。


「えーと、皆さん、何処に住んでいるのでしょうか? うちの募集は、住まいの提供はできない通い限定なのですが」

「全員、我が屋敷に住み込みです!」


パープル侯爵は、とたんに笑顔になった。

ほぼ問題が解決したので、心配事がなくなったようだ。


「アルストロメリア会をまたするので、そのお手伝いをお願いしますとお伝えください」

「ハナノ様、ありがとうございます!」


晴れやかな笑顔になったパープル侯爵に、ソウが近寄ってきた。


「問題はなくなったみたいだね。じゃ、侯爵、帰るよね?」

「ホシミ様ありがとうございます」


ソウがパープル侯爵を連れ、転移していった。

みんなが、離れた場所から心配そうにこちらを見ていたので、ユリは声をかけた。


「イリスさん」

「はい」

「イリスさんのおすすめの人がいたら、お店に紹介してくださいね」

「かしこまりました」


全員が、誰も不幸にならないまとめに安堵した。



「お昼休み休めなかったかもしれないけど、大丈夫ですか?」


全員心配して、店に残っていたのだ。みんな笑顔で、大丈夫らしい。


「今日の限定ものは、マシュマロ3種類と、今期最後の生チョコです。次回は、また寒くなってからの販売になります。今日以降、全ての冷蔵物が、冬箱か真冬箱必須になります」


みんなメモを取りながら真剣に聞いていた。


「特に注意するものはありますか?」

「分かりにくいものだと、ラング・ド・シャサンドが冷蔵です。卵のサンドイッチも冷蔵です」


大きく頷きながらメモを取っていた。


「次回予告イベントが、4月2日とありましたが、聞かれた場合、何と説明すればよろしいでしょうか?」

「4月2日ね。お店は定休日なんだけど、午前中だけ販売しようと思っています。イリスさんが出られそうならお願いしたいですが、無理そうなら私が売ります。イベントは、ユメちゃんの誕生日です」


「なら、その次のイベントは4月8日か」


ソウが笑いながら発言した。


「そうですね。『花祭り』です」


ユリは、花祭りの説明をソウに任せ、厨房に戻った。

今までは、ソウがケーキを買ってきたり、ささやかに祝ってはもらっていたが、今年はどうなるか想像もつかない。

ユリは「花祭り」と言って逃げたが、ユリの誕生日である。

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