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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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青紫

土曜日(だいちのひ)の定休日。


「そうだ、来週の木曜日の服、何とかしなくちゃ」

「あてはあるの?」

「以前ハイドランジアさんが、私が城で暮らせるくらい服は用意してあるって言っていたから、何着かは本当に有ると思うのよね」


ユリの気楽な意見に、ソウがおののいたあと、呟いた。


「暮らせるくらいって、100とか200とかだぞ?たぶん」

「えーー!」


ユリが驚いていると、ユメが来て話に加わってきた。


「普段使いの服も用意したから、離宮に行くときに使って欲しいって言ってたにゃ」

「あはは、こりゃ、200どころじゃないな」

「えー。なんで、そんな、着ない服を作る必要が?」

「そういうものにゃ」

「そういうもんだな」


ソウもユメも、ユリの疑問に答えてはくれなかった。


「なら、丁度良いのが有るか見に行きましょう」


開き直り、城に行くと言うと、もちろんキボウもついてきた。


ユリが城でハイドランジアを呼び出し、目的を告げたとたん、大喜びでハイドランジアは侍女やメイドに指示を出していた。


「先読みの巫女様の御慶事ですのね!ユリ様、禁則事項はございますか?」

「真っ黒ではない、白地ではない、足があまり出ない、肌があまり出ない、その辺でしょうか」

「問題はお色のみでございますね」


色々な色の、豪華な聖女の衣装が持ち込まれた。そもそも露出は少ないデザインだ。

白地が基本の聖女の衣装なのに、持ち込まれた物の中だけでも、白地ではない服がたくさんあった。


貸衣裳屋なのか? と思わせるほどの大量の衣装が並び、サイズは全てユリの物らしい。

ユメとソウが、やっぱりと言わんばかりに笑っていたが、ユリはかなりひきつっていた。


「私が着なかったら、どうするつもりだったのですか?」

「落ち着かれたらいずれ、国を回ることもあるかと思われますので、無駄にはならないと思われます」

「はあ」


ひな祭りの日に、ユメからソウが渡された紙束は、離宮の明細だった。そのどこへ出掛けても困らないように、地域に合わせた衣装があるらしい。正装と言っても、暑い地方と寒い地方で同じ服は着ないと説明され、やっとユリも理解した。それにしても多いのだが。


「ユリ様のお好きな色で良いのでしたら、こちらなどいかがでございますか?」


ハイドランジアが奨めてくれたのは、青みの濃い青紫色の聖女の衣装だった。表面の布はオーロラカラーなのか、うっすら虹色に輝いている。


「これ、ベールもあるの?」


ソウが、ハイドランジアに尋ねていた。


「はい。此方は共布(ともぬの)のベールがございます」

「ユリ、それが良いんじゃないか?」


ソウのお薦めらしい。


「ベールかぶった方が良いの?」

「まあ、ユリが何者か理解していないだろうからな。かぶったままが無難だと思うぞ?」


問題がありそうならと、ソウの言葉に従うことにした。


「そっか。当日どこで着替えたら良いかな」


ユリが呟くと、ハイドランジアが答えてくれた。


「こちらでも、ローズマリーのところでも、ラベンダーのところでも、ユリ様のお好きな場所で、承ります」

「なら、ラベンダーさんのところで着替えた方が良さそうかしら」


ハイドランジアは、笑いながら同意してくれた。


「恐らくではございますが、ラベンダーも、何かしらの御衣装を用意していると思われます」

「そうなの!?」

「そうだろうな。ユリに頼られたときに、何もないとは言わないと思うよ」

「えー。私の予定には全くなかったわよ」


ハイドランジアからは、衣装を2着渡された。もう一着は赤紫色で、予備らしい。


「ソウ、ユメちゃんとキボウ君はどこにいったの?」


「到着するなりキボウが走っていったのを、ユメは追いかけて行ったぞ?」

「私たち、ユメちゃんに頼ってばかりね」

「本当だな」


キボウの養育を任されたのは、ユリとソウとカエンである。こちらに住まいの無いカエンは仕方ないとしても、ユメは頼まれてもいないのに、面倒を見ているのだ。


「まあ、あいつ(キボウ)は不思議生物だから、色々予測できないよな」

「不思議生物・・・うふふ。そうね。不思議な存在よね」


ユリは、以心伝心で呼び掛けることにした。


『ユメちゃん、家に帰るわよー』

『キボウ君、家に帰るわよー』


「今、呼び掛けたから、すぐ来るでしょう」

王宮(ここ)に来てメイプルが居ないのって、なんか不思議だな」

「そうね。いつも何故か一番最初に出会うのよね」


女性や子供は一人ではうろうろしないし、国王もうろうろしないので、執務が多く、身軽に動く王子が確率的に高いのは仕方がない。しかも王族エリアなので、その他の貴族にも基本的には会わないのだ。


「ユリ、ソウ、お待たせしたにゃ」

「ユリー、おかしー、あるー?」

「ユメちゃんお帰りなさい。キボウ君、ひなあられが少しあるわ」


キボウにひなあられを渡すと、さっと転移で消えた。


「カンパニュラちゃんに渡すのかしら?」

「来たら新しいお菓子を渡す約束したのにゃ?」

「え?」

「キボウの言葉をシッスルが訳したら、ユリが言

ったって、キボウが言ってたにゃ」

「んー? 確かに、それに近いことを言ったかもしれないわ」


キボウはすぐに戻ってきた。


「カンパニュラー、おかしー、よろこぶー」

「キボウ君、カンパニュラちゃんにお菓子を渡してくれてありがとう」


キボウは役立ったことに満足したのか、ニコニコしておとなしくなった。


「とりあえず帰りましょう。私は帰ってから、ラベンダーさんの所に顔を出しに行くわ」

「このまま皆で行けば良いんじゃないか?」


ソウの提案に、ユリが確認してみた。


「ユメちゃんとキボウ君も、レッド公爵邸に一緒に来る?」

「一緒に行くにゃ!」

「いっしょ、いっしょ」


ユリは、ハイドランジアにお礼を言ってから、全員をつれて転移した。

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