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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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多猫

今日は猫の日。


黒猫クッキーは勿論の事、今日までに作り溜めた猫型食パンでのトーストやピザトースト。小型猫型食パンでの黒猫ラスク。ラング・ド・シャの黒猫サンド。王宮にも納品した、イリス考案の猫クッキー各種。猫模様のティラミス。猫模様のヨーグルトゼリー。猫型のショートケーキ、猫型のチョコレートケーキ。そしてサービスで配るのは、猫型製氷皿で作った猫ラムネ。



スタッフ全員猫耳をつけようかと思ったけど、ユメは自前だし、他に人前に出るのがイリスだけだと思いだし、取り止めた。


「ユリ様、これなんですか?」

「猫耳カチューシャよ。使おうかと思ったけど、止めたのよ」


リラは不思議そうに眺めた後、ニヤッと笑った。


「使ってみても良いですか?」

「構わないけど、どこで使うの?」


リラは、厨房にいるときは、ユリにならって三角巾を頭に被っているのだ。猫耳カチューシャを使いようがない。


「今日は予告イベントですよね。シィスルとマリーゴールドもどうせ来るはずなので、私、午後から飲み物作りながらお店で配膳します!」


確かに来るだろう二人は、ベルフルールの定休日に仕事をさせても良いのだろうか? まあ、望まない人に猫耳を強要する訳じゃないから、良いのかな? ユリは、リラの対応について考えるのをやめた。


「あ、うん。好きにして良いわ。・・・あ、そうだ、イーゼルにのせる今日のおすすめ書いてくれる?」

「はーい! 『猫の日』という文字と、猫の絵を描いておきますね!」

「頼んだわよ」


ユリは、大きいメニューをリラに任せ、コーティング用の洋生チョコを溶かし、緩い生クリームを用意した。


猫型に焼いたスポンジで作ったショートケーキに、緩めの生クリームをかけ、コーティングしていった。

プラチョコで作った目をのせ出来上がりだ。

リラにも教えながら作った。


次に、同じ型で焼いたチョコスポンジに、洋生チョコでコーティングをしていった。こちらは、バタークリームをサンドしたケーキだ。同じく目をのせた。


「ユリ様、クリームを塗るよりもきれいに仕上がりますね!」

「ナッペ、慣れないと難しいからね。円形ですらないし」


ナッペとは、ケーキにクリームを塗って仕上げることをいう。

慣れない人がすると、時間ばかりかかってきれいに仕上がらない。


「使った後の洋生チョコ、あ、コーティングチョコは、一番目の細かい裏ごし網を通しておいてね」

「はい! このチョコって、冷えてもカチカチにならないんですね」

「そうね。カチカチになると、食べるときフォークで切れなくなっちゃうからね」


昨日シィスルとは、猫型で、スポンジを大量に焼いた。猫型の大きさは、女性の片手より小さい、ケーキとしては2~3人前サイズだ。人によっては、ペロッと一人で食べてしまえる大きさである。


50個くらいずつ、サンドまでして冷蔵しておいたものを、朝から仕上げている。


「リラちゃん、猫スポンジスライスして」

「白いのが半分で、チョコのが3枚切りですね」

「はい。お願いね」


厚み定規を使い、リラはスポンジをスライスしていった。残り150個ずつの猫型スポンジをスライスし、白猫スポンジに生クリームと、スライス苺を挟んでいく。スポンジが毛羽立たない程度にナッペし、一旦冷蔵する。


「ユリー! ステンレスなのに、鉄臭いにゃー!」


朝から苺を黙々とスライスしていたユメが、叫んだ。

苺の酸で、ステンレス製のペティナイフが、酸化して鉄の臭いがするようだ。


「ユメちゃん、セラミックのペティナイフに変えると良いわ」

「どれにゃ?」

「刃が、白いのと、黒いのは、セラミック製よ」


ユメは探しに行き、刃物置き場から白いセラミック製のペティナイフを持ってきた。


「この、刃が折れやすいナイフにも使いどころがあったのにゃ」


先日、包丁サイズのセラミック製のナイフで、うっかり南瓜を切って、大胆に刃こぼれを起こし「ナイフが負けたのにゃ!」と、驚愕の表情でユメが驚いていたことを思い出した。


「酸味の強いものを切る用に、用意したからね」


ユメが子供の頃にはなかったのかなぁ? とユリは思ったが、ルレーブの時は勿論無かったが、川井翼だった頃は、料理をする環境ではなく、そもそもセラミック包丁自体が出始めで、どの家庭にもあるというものではなかった。


「頼まれた苺、切り終わったにゃ」

「ユメちゃんありがとう! 」

「他にすることあるにゃ?」

「生クリーム塗ってみる?」

「やってみたいにゃ!」


苺のサンドと生クリームの下塗りをユメとリラに任せ、ユリはチョコスポンジに、アンズジャムとバタークリームを塗り、サンドし、バタークリームの下塗りまでして仕上げていった。できたものから冷蔵し、全てサンドを終わらせた。

再び洋生チョコを溶かし、先に冷蔵したものから取りだし、コーティングし、持ち帰り用の箱に詰めていった。


出来上がった箱を積んでいると、リラから聞かれた。


「ユリ様、チョコケーキの方は冷やしておかなくて良いのですか?」

「今冬だから、常温で大丈夫よ。生クリームの方は、こまめに冷蔵してね」


「ただいまー! 納品終わったから手伝うよー!」


ソウが、割りと早く帰ってきた。


「あ!俺もケーキ塗るのやってみたい!」


リラが場所を譲り、ソウはユメと一緒に、スライス苺をサンドし、生クリームを塗り、下塗りまでをしていった。


多少の手直しをユリがして、リラは緩い生クリームをコーティングしていった。


「リラちゃん、こっち側かかってないわ」

「うわ、ほんとだ!」


回り込むように覗き込んだリラが慌てて、クリームをかけ直していた。


「多分少し固いのよ。お砂糖入れて混ぜてある、泡立てていない生クリームを足して、固さ調整してみて」


かけ直したものは、他の物よりクリームが厚くなってしまっていた。


「これどうしましょう」

「おやつに食べたら良いわ。少し休憩しましょう」


ユリは4つに切り、お茶を添えてリラ、ユメ、ソウに出し、キボウを呼んだ。


『キボウ君、ケーキ食べるわよー』

『わかったー』

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