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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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氷水

「油を温めます」

「はい!準備できてます」


業務用の揚げ物鍋の油は、今、温度を上げている。


「氷水と薄力粉と卵を用意します」

「はい!氷水持ってきました!」


氷水以外は全て用意済みだ。


「卵を割って良く混ぜ、氷水を加えます」

「はい!加えました!」

「そこに振るった薄力粉を入れ、軽く混ぜます。混ざりきらない程度で良いです」

「全部混ざらなくて良いんですか?」

「はい。少し粉が残ってるくらいで良いです」

「きれいに混ぜてしまうとダメなんですか?」

「今の状態の衣で揚げると、軽くサクッと出来上がります。混ぜすぎると、重たいどっしりとした衣になります」


均一に混ざっていないのは何となく納得できないけど、ユリが言ったからそうなんだろうと、リラは考えていた。でも、思った。


「後で両方作ってみて良いですか?」

「うふふ。良いわよ」


ユリはどんどん揚げていき、リラにも教えながら全種類を7人前揚げ、南瓜(かぼちゃ)を数個リラに渡した。


「衣を良く混ぜてから、最後に南瓜を少し揚げてみると良いわ」

「はい!」


良く混ぜ、南瓜に衣をつけると、粘度(ねんど)の高い衣が分厚くついた。


「うわ、なんか食べる前から、重そう」


「ソウ、天ぷら揚がったわよー」

『ユメちゃん、天ぷらできたわよー』

『キボウ君、お昼ご飯ですよー。戻って来てくださーい』


ユリは階段の下からソウを呼び、ユメとキボウには、以心伝心を送った。


「リラちゃん、マーレイさんとイリスさんは、いつ来るの?」

「もう来ると思いますが、呼んでみます」


リラも以心伝心を送っているようだった。

ユリはその間に、天汁(てんつゆ)を作った。


「おー!天ぷら盛り合わせ!」

「ただいまにゃー!」

「キボー、きたよー」


ソウが、2階から下りてくると、ユメとキボウは、外から戻ってきた。

そのすぐ後に、マーレイとイリスもやって来た。


「お招きくださいましてありがとうございます」


「さ、さ、座って、みんな、食べましょう。天汁(てんつゆ)有るわよ。塩で食べても良いわよ。塩、抹茶塩、ドライ柚子胡椒が有るわ」


魚が無い分、鶏天(とりてん)があるので、味付けは各自の好みだ。


リラが、マーレイとイリスに、中身が何であるか説明しながら、最後に揚げた良く混ぜた衣の南瓜まで食べさせていた。


「うわ!ほんとに食べ口が段違い!!」

「リラ、何が違うの? 違う南瓜なの?」


イリスが、不思議そうに尋ねていた。


「衣を軽く混ぜるか、しっかり混ぜるかの実験したの!」

「衣だけの違いなのか。最初の方が、旨いな」


マーレイが独り言のように呟いていた。


「ユリの天ぷらは美味しいのにゃ!」

「おいしー、おいしー」

(ふき)(とう)、旨いな! 旬の味だな!」


ソウが蕗の薹を食べて喜んでいた。


「ん? 本当だ!なんか大人の味で美味しい!」


リラが騒ぐと、マーレイとイリスも食べてみたらしい。


「あら、本当! これ、ピーターさんが、物凄く不味かったって言っていた草よね?」

「私が自分で収穫してきたから、本当だよ!」


イリスが驚いてリラと話していた。


「イリス、何をしたら不味かったんだ?」

「はい、ホシミ様。サラダと、煮物を試したそうです」

「それは、合わなそうね。ふふ」

「良く、サラダで食ってみようと思ったな」


蕗の薹の調理がどうのより、そもそも、この国に蕗を食べる習慣はあるのだろうか?


「ユリ、(ふき)味噌は?」

「持ってきてあるわ」


ソウが自分のご飯の上に、器に添えられた匙で、少し取り分けたあと、ユメとキボウにも取り分けていた。その後マーレイに渡し、マーレイとイリスも少し皿に取り分けていた。


「お母さん、ユリ様からこの『ふきみそ』を教えていただくために、蕗を収穫したんだよ。お父さんとお母さんも気に入るなら作るよ!」

「前にお店にあった『大葉味噌』とは少し違うのね」

「リラは作れるのか。これも旨い」


マーレイがニコニコとしながら、蕗味噌をご飯にのせて食べていた。



食べ終わる頃リラに、すぐに食べない天ぷらの話をした。


「温かい蕎麦に入れる天ぷらのときは、衣が大きい方が好まれるから、これよりは混ぜて、薄力粉に少しベーキングパウダーを加えると、良いわよ」

「どうなるのですか?」

「少し時間がたっても、しなり難くなるわ」

「そんな技が!?」


この後リラは、自分の店の分の天ぷらを揚げる予定なので、ユリに色々聞いていた。


「変わり種的なものや、衣の変化などはないのですか? フライのときは、衣にパセリを混ぜていましたが」

「他には、青海苔を加えた衣で揚げると『磯辺揚げ(いそべあげ)』になるわ。竹輪(ちくわ)を揚げると美味しいんだけど、竹輪ってわかる?」

「ちくわ? 多分わかりません」

「今度用意しておくわ」

「期待してます!」


少し食休みをした後、リラは7人分の天ぷらをユリに手伝って貰いながら揚げ、天汁を受け取り、ベルフルールに帰っていった。

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