表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/687

選抜

ホームページからセンターに問い合わせると、既にFブーゲンビリア は募集を締め切っていて、残っているのは、Gアルストロメリア だけだった。


簡単な書類に、氏名、年齢、性別、職業を書き送信すると直ぐに指定の場所まで来るようにと呼び出された。


方向音痴を自覚しているので、地図をソウに読んでもらい、車で来ていたソウに送ってもらうことになり、車が付けられる一番近いオフィスビルの前に下ろしてもらった。

ビルの前では早咲きの桜が風に揺れていた。


真っ白な大きなビルの三段の石段を上がり、自動ドアを通り、エレベーターホールで案内板を探すと最上階に名前があった。


[転移システム研究所]


エレベーターで最上階まで行き、誰も居ない廊下を歩き、ドアをノックする。

ただそれだけの事に緊張した。

真っ白な、まったく窓の無い廊下は電灯もないのに壁自体がほんのり光っていた。


真夜中に一面の雪の中を歩いているみたいだわ。


部屋につくと愛想の無い背の高い係員が出迎えてくれた。ニコリともしないその顔が少し怖い。


「測定します」


それだけ言うと順番が書いてある紙を無言で渡され、そのまま行ってしまった。


とりあえず指示書の通り進み、各部屋で身長、体重、視力、聴力をはかり、最後に良くわからない機械の中に立たされて写真のようなものを撮った。


カシャンカシャン。

カメラのシャッター音のような音がする。

全方向から写るカメラがついているのかしら?

それとも何か測定されたのかしら?

経験の無い不思議な測定に不安を覚えた。


測定後は案内盤にしたがって、隣にある待合室で待つことになった。



不安なまま待っていると、数分後、少し反響するようなアナウンスが聞こえた。


「お呼び出しします。ユリ・ハナノ様、受付までお越しください」


「アナウンスは割りと丁寧なのね」


扱いがぞんざいだったので、アナウンスの丁寧さが滑稽に思えた。


淡く光る真っ白い廊下を通って受け付けに行くと、料理人枠のラストに滑り込めたようで、無表情の係りの人から書類を沢山渡された。


決定されているメンバーの一覧には名前と職業のみが書いてあり、料理人は複数いることがわかる。


ユリは気づかなかったが、女性はユリだけだった。


◇ーーーーー◇


料理人枠一覧(決定順)

イチロウ・モリ (日本料理)

ケンジ・スズキ (フランス料理)

マコト・コバヤシ (ラーメン店)

ダイゴ・サカキバラ (イタリア料理)

ヒサシ・ハナダ (焼き鳥・串焼き)

ススム・タケシタ (お好み焼き・鉄板焼)

ジン・ハヤシ (焼き肉・しゃぶしゃぶ)

ユウ・サエキ (中華料理)

ハルト・ムトウ (和食・小料理)

ユリ・ハナノ (洋食一般)


医療従事者(決定順)

カイト・サトウ (精神科)

リツ・イトウ (心療内科)

タイキ・マツモト (漢方薬師)

ユウト・キムラ (看護師)


その他

コウ・サイトウ (案内人)

カナデ・サエキ (案内人)

アラタ・カトウ (案内人)


◇ーーーーー◇


報告しようと急いで家に戻ると、流石にソウはいなかった。

方向音痴でも帰ることはできる。



調理師免許は持っているけれど、学校へ行った訳じゃないから実家の定食屋で作っていた家庭料理のようなメニューしか作れないのよね。

その実家も、親が事故で亡くなったあとも大分頑張ったけど権利関係で騙されたし、再建できなくて結局お店できないし、これは良い機会よね。


それにしても、ソウは、本当に一緒に来るのかしら?

あの郵便屋さんの話が本当なら、後からでも来られるってことよね?


色々不安を感じていた。

ソウが本当に来るのかわからなかった。

それまで、ソウに特殊能力が有ることなど聞いたことも無かったからだ。



わざわざあんな冗談は言わないわよね。

私はこの国に未練とか無いけど、ソウは、ご両親ともに健在で、残していけるのかしら?

あ、戻れるから大丈夫ってことなのかしらね。

とてもソウが心配だった。



ソウにしてみれば、この国に居る理由はなく、むしろ居たくない理由ばかりがある。

ここに居続けた最大の理由がユリであり、ユリが居なくなるこの場所に一切の未練はなかった。

養父母との関係は良好だが、むしろ残った方が迷惑をかけるだろう。

二人からは快く送り出されたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ