表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

399/690

梣型

すぐにチーズをのせ、細かい紫蘇(しそ)をのせ、オーブンで焼いて仕上げた。海苔パンチで切り抜いてある黒猫をのせ出来上がりだ。


「ユメスペシャル、できましたー!」


出来上がるとほぼ同時くらいに、リラが来た。まだ14:10くらいだ。


「お昼もう食べたの?」

「片付けしながら食べちゃいました!」

「あまり無理したらダメよ?」

「はーい。それで、どれを使って良いですか?」

「休憩室にある、シート状の、シリコンマットを切って良いわよ。厚紙も使う?」

「あ!ありがとうございます!」


先に渡した厚紙を、フリーハンドで世界樹様のクッキーを小さくした形に切り抜いていた。


「あなた本当に凄いわね」

「え?」

「カッターマットが一緒にあると思うから、使ってね」

「はーい」


リラが休憩室に行ってしまうと、シィスルがそわそわしていた。


「シィスルちゃん、少し見てきたら良いわ。15分くらい一人で店番したんだから、15分くらい見てくると良いわよ」

「ありがとうございます!!」


シィスルは急いで休憩室に入っていった。

すると、マリーゴールドが顔をだし、リラもシィスルも居ないことに静かに驚いていた。


「2人なら、休憩室に居るわよ」

「ありがとう存じます」


ユリはマリーゴールドを見送ると、自分の試作を作りながら、お店の注文に対応した。


持ち帰りのみの場合でも、おまけが付くと知った客は、並ぶのを諦め、買って帰る方に変えた人も多く、外の行列は少しだけ短くなったらしい。


シィスルが戻ってきて、リラが作った世界樹様のクッキーと同じ形の、サイズの小さいラング・ド・シャ用を見せてくれた。

リラとマリーゴールドはそのまま残り、15時ギリギリまで抹茶味のラング・ド・シャを試作するらしい。


「リラちゃん、シィスルちゃん、マリーゴールドちゃん、そのラング・ド・シャの名前は、私がつけて良いかしら?」

「はい。何という名前ですか?」

「大きいクッキーは『世界樹様のクッキー』だけど、『世界樹様サンド』だと、ちょっと違うかなって思ってね。キボウ君の名前にしようと思うのよ」

「何サンドですか?」

「3つの中から選んでもらって『トネリコサンド』よ。キボウ君のセカンドネームよ。キボウ君に聞いたら、これが良いって言っていたわ」

「セカンドネーム!?」

「キボウ君に『キボウ』と名付けたのは、私だけど、フルネームは、長いのよ」


ユリは説明していて気がついた。キボウの名前の「トネリコ」は、日本語じゃないのかと。

いったい誰が名付けたんだろう?


リラとマリーゴールドが帰り、そろそろ外おやつの追加を持っていこうと、洗い物をしていたマーレイに声をかけると、外おやつを持っていってくれるというので、頼んだ。


「お茶も残っているか確認してください」

「かしこまりました」


こちらの昼ご飯前から外おやつを出したし、お茶は誰でも飲んで良いとソウが伝えたので、今日はすでに足りないかもしれない。


すぐに戻ってきたマーレイは、そのまま、お茶を持っていってしまった。やはり足りなかったらしい。

ユリは店内用のお茶を夏板で沸かし、追加した。


「ハナノ様、おやつの方はまだ少し残っていました。お茶は残り少なく、飲むのを躊躇していたようでしたので、急ぎ持っていきました」

「ありがとうございます。助かりました」


明日用のデザートを仕込み、パン生地を作っていると、イリスが聞きに来た。


「ユリ様、生チョコの持ち帰り最大数はございますか?」

「何個ほしいって言われたの?」

「有るだけ欲しいとおっしゃっています」

「現在の在庫は?」

「大体、120~140ずつくらいかと思われます」

「その半分売って良いわ。その人、500個前後も、持って帰れそう?」

「確認して参ります」


少しして、ユメが来た。


「ユリ、あれは、500個は想定してなかったみたいにゃ。でも言った手前、無理してでも買うつもりみたいにゃ」

「必要な数にしてくださいと助言してきてくれる?」

「わかったにゃ」


それでもこの客は、200個ほど買っていったらしい。

どうやって持っていったんだろう?


2~3個買う客と全種類買う客がいて、紙袋の在庫がなくなったらしく、ユメが取りに来た。


「ユリ、紙袋は、内倉庫に有るだけにゃ?」

「ビニールのパッケージを破っていないのが、外倉庫にあるはずよ」

「ユメ様、いくつか運んでおきます」

「お願いするにゃー」


話を聞いていたマーレイが、内倉庫に運んでくれた。ちゃんとビニールは、空き缶などと一緒にまとめてくれたらしい。これはソウが運んでカエンに処分を依頼している。


キボウが来て、世界樹様のクッキーの仕上げも終わり、仕込みの予定が片付いた。

お店の注文は、シィスルが引き受けるというので、ユリは試作の続きを始め、オレンジピール入りの生チョコを作り、ハート型にサンドした。


次に四角い型でラング・ド・シャを作り、ココア生地で模様を描いた。丸く絞って竹串で真ん中に線を引くように引っ張り、連なったハート型を作ったり、簡単な花模様を書いたりした。


乾燥卵白をビーツの煮汁で戻し、濃いピンク色のラング・ド・シャ生地を作り、花形にした。


焼き上がり、四角いラング・ド・シャはそのまま。花形は熱いうちに茶碗くらいの大きさの器に入れ、丸みをつけた。


小さい方のアイス箱でバニラアイスクリームを作る用意だけし、ご飯を作り始めた。


シィスルにも、試作の続きをして構わないと言うと、イチゴ生チョコを仕込み始めた。表面につける粉に使わないので、砕いたフリーズドライイチゴはそのまま加えていた。


お店が終わる間際に、大口の客が来たらしく、ユメとイリスが慌てていた。


ソウが戻り、ちらし寿司と、高級チョコレートを2種類持って帰ってきた。


「ただいまー。ちらし寿司はお袋から。チョコレートはカエンと、母親(月見エリカ)から」


ソウは(ゆび)()し、チョコレートを誰から貰ったか説明していた。

身内だけなのね。とユリは少し安心した。


ソウは、ユリの前以外では愛想良くしないので、最近ではあまり渡してくる人は居ないが、それでもチャレンジャーはいて、その場合、大体受け取りを拒否していた。

過去に色々あり、手作りは特に怖いらしい。ソウが素人の手作りを食べるのは、養母とユリの作ったものくらいなのだ。(ユリの場合、仕事にする前の話)

ユメのピザトーストを食べたのは、作るのを見ていたことや、秋波(しゅうは)を送ってくる相手ではなく、家族だと思っているからである。


ちなみにカエンと月見エリカは、ソウの養母(星見 (はるか))から、手作りの菓子は受け取らないと思うわ。と聞かされ、高級チョコレートを用意した。


「みんな手が空いたら、ご飯を食べましょう」


あとにできる仕事はとりあえず残し、揃って夕食を食べた。


「私から皆さんへ、バレンタインのお菓子です」


そう言ってユリが持ってきたのは、オレンジピール入りの生チョコをサンドしたハート型のラング・ド・シャと、模様を描いたラング・ド・シャと、桃色で花形のラング・ド・シャにアイスクリームがのったものだった。


「うわー! ユリ様凄いです!」

「アイスが乗ったお花にゃ!」

「へぇ、模様つきにできるんだ」


「リラちゃんのところって、何人いるの?」

「今日は、8人くらいで、夕食を食べるのは、5人かと思います」

「シィスルちゃん、向こうへ帰るとき、5人分持っていってくれる?」

「はい!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ