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アルストロメリアのお菓子屋さん (本文完結済) ~ お菓子を作って、お菓子作りを教えて、楽しい異世界生活 ~  作者: 葉山麻代
6章

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提供

「最後に、私から食事と、おやつを提供します。少し食べてみて気に入ったものだけにしても良いですし、そのまま受け取って持って行くのでも良いですよ」

「食事はそのまま受け取り、目先の変わった楽しみとすることにしたいと思います。カンパニュラのために、デザート類を見せていただけますか?」

「では食事は、リュック型の魔道具に入ったまま渡します。デザート類やおやつは、私が持っているので、まずは温度が影響しないものから見せましょう」


リュック型の魔道具をそのまま渡した。メイドが受け取ろうとしたので、慌てて断り、ソウがメイプルのそばまで運んだ。

約50種類が、5食ずつ入っていて、器を合わせると結構な重さになる。1食を500gとして、単純計算でも魔力の少ない人には、125kgくらいにはなるのだ。持ち運べるわけがない。

(1万p以上の魔力があれば、125gにしか感じない)


「あ、料理には名前を書いた紙をつけてあります。あと、こちらは、リラちゃんと弟子たちに作ってもらいましたが、料理の絵と、名前と、入っている具材などの説明と、簡単な作り方です。こちらは、菓子の説明のノートです」


ユリは、ノートを2冊渡した。

受け取ったノートを開き、メイプルはアネモネと一緒に見た。


「これは凄い!」「素晴らしいわ!」


少し眺めていたメイプルが、ふと気がついたように尋ねてきた。


「そう言えば昨日、パープルから契約書の写しと、書状が来て、接近禁止と立ち入り禁止の訴えのようでしたが、ご存じですか?」

「そのノートを書いた一人が巻き込まれたというか、当事者で、あまりにも相手が、なんというか、不勉強で、えーと」


ユリが言葉に詰まると、ユメが答えた。


「貴族を名乗っているのに、メイプルが誰だかすら知らなかったにゃ!」

「は?」


意味がわからないメイプルに、ソウが説明する。


「俺と、ユリの事を知らないだけかと思ったんだが、メイプルの名前を出しても伝わらなくてな。そいつが理解できる一番偉いのが、侯爵位だったんで、パープルに一芝居(ひとしばい)打って貰って、契約書を書かせた」

「なんというか、学園出てないのか?」


メイプルは、独り言として呟いたみたいだった。


「マリーゴールドちゃんは、その相手の家のせいで、学園に通わせて貰えなかったと言っていたけど、当人のマホニア・ダークイエロー君が学園に行ったかは、聞かなかったわ」


ユリが名前を出したとき、意外な人物が反応した。


「あ」


それは、プラタナスに付いてきていたシッスルだった。


「シッスル、知っているのか?」

「は、はい。名前だけではございますが、優れた容姿でございましたが、えーと、あの、その、」

「構わない。知っていることを教えてくれ」

「かしこまりました。私が学園を辞めるよりもだいぶ前に、成績が振るわず、お辞めになりました」

「あー、クビになったのか」


成る程「バカすぎてクビ」を丁寧に言うと「成績が振るわずお辞めになる」になるのか。


「なんでも、ダークイエロー男爵家は、美人と評判の男爵令嬢が、魔力持ちの元平民の商人だった方を婿にして、商売で家を立て直したらしく、現在はとても羽振りが良いと、友人が話しておりました」

「シッスルありがとう」


「パープルからの書状は、希望通りに即時処理してくれ」


メイプルが近侍(きんじ)している者に声をかけていた。



仕切り直し、菓子類を出して見せる事になった。


「まず、黒猫クッキーのようなお菓子との要望は、色々な猫のクッキーを作ってみました。生チョコの希望は、週明けから売り出す全種類を持ってきました。チョコのお菓子の希望は、チョコチップクッキーと、チョコとナッツのソフトクッキーと、生菓子にあります。その他に、この一月(ひとつき)ほどに売り出した生菓子などを持ってきています。あと、これ、ソウが作ったステンドグラスクッキーです。あと、リラちゃんの弟子が作った『黒猫サンド』です」

「黒猫クッキーとはまた違うお菓子なんですね」

「はい。ほかに、黒猫のラスクもあります。ユメちゃんが作ったピザトーストを含め、黒猫シリーズを『シャノワール』といいます。意味は、外国語の『黒猫』です」


メイプルとアネモネは、早速クッキーを味見していた。

子供たちは描くのに夢中で、試食しに来ないらしい。ユメとキボウが、指導しているようだ。


「これもとても美味しいですね!」

「黒猫仕様ではない通常のものは、こちら『ラング・ド・シャ』です」

「これは、王国の形ですね!」


王国の形とは、ハート型のことだ。この国は、長めのハート型のような形なのだ。


「菓子類は6つ以上有ると思いますが、増産が必要なものは、声をかけてください」

「ハナノ様、どうもありがとうございます」


メイプルたちの出発準備の用意が一段落(いちだんらく)し、ユリは肩の荷が下りた気がした。

希望していた生活魔法も教えたし、変わった食事と豪華なおやつを提供し、あとは当日運ぶ手伝いをするだけになった。

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